The Motley Fool

A Special Report

不況入りする中で米国株式市場が好調な3つの理由

株式市場は経済の現状をそのまま反映しているわけではありません。

アメリカ経済は、大恐慌以来の危機に巻き込まれ、この10年間で増加してきたジョブマーケットが一挙に消滅しました。

これをしり目に、株式市場は急上昇してきました。S&P 500は、コロナウイルスの流行がヨーロッパとアメリカに広がった約1か月の間急落した後、3月23日に底を打ち、その後突然上昇に転じました。それ以来、株式市場全般で急上昇しました。(執筆時点)

コロナウイルスの感染拡大の最悪な時期が過ぎた可能性があることや極端な金融緩和、そしてワクチン開発のニュース等が好材料となっています。

感染症の第2波や、店舗やレストランが再び営業したときの消費者の行動など、不確定要素は満載です。

米国が経験している経済ショックを考えると、株価が急上昇するのは納得いかない方も多いでしょう。

株式市場と米国経済の現状が一致しない3つの理由があります。

1. 株式市場と経済全体の間にある断層

株価は、経済に関して最も容易に入手できる指標であり、ダウは毎日ニュースで報道されています。

長期的には、株式市場のパフォーマンスは経済と相関する傾向があります。

しかし、株式市場は、米国経済全体の現状を必ずしも反映するものではありません。

というのは、より厳密には、株価は上場企業の利益に対する期待値を示す指標だからです。

上場企業の利益が経済全体を示唆するものではありません。

たとえば、上場企業がレイオフを発表したとき、ウォール街はそれがコスト削減とみなして好意的に評価します。

同様に、ウォールストリートは一般に自社株買いも評価します。

しかし、自社株買いをした企業は、新規の雇用や設備投資を犠牲にしているのかもしれません。

そうであれば、株主にプラスなことが、経済全体にとってはマイナスであると言えます。

また、比較的少数の従業員しかいない傾向にあるIT関連企業の株価が急騰している一方で、何百万人ものアメリカ人が働く小売業、外食、レストラン、旅行業界などの企業の業績が厳しいということも、米国経済の現状と株式市場にずれが生じている背景といえるでしょう。

たとえば、ネットフリックス(NASDAQ:NFLX)の株価は急騰してきましたが、その従業員は1万人にもならないため、労働市場への影響は小さいといえます。

一方、大赤字を出しているメイシーズ(NYSE:M)には約123,000人の従業員がいますが、そのほとんどは現在、一時休暇を与えられています。

そして、メイシーズはネットフリックスが株式市場全体へ与える影響のわずか1%にすぎません。

しかし、労働市場や不動産市場に関していうと、メイシーズはおそらくネットフリックスよりもはるかに米国経済に大きな影響を与えます。

2. 政府の刺激策による底上げ

政府の支援がなければ、経済は再び大恐慌の危機に瀕する可能性があります。

多くのアメリカ人の生活は給与所得に依存しており、中小企業はパンデミックが引き起こした突然の休業を乗り切るために数ヶ月のキャッシュフローしか持っていません。

政府の助けがなければ、多くの人はすぐに貧困に陥り、零細企業は倒産します。

そこで、議会と連邦準備理事会は、経済の回復をできるだけ円滑にするための対策を行ってきました。

そして、マーケットは、政府が支援策を発表するたびに、その取組みを評価してきました。

たとえば、CARES法が議会を通過すると、3月23日に底を打った直後に株価は急騰しました。

推定2.2兆ドルの救済パッケージには、個人への現金給付、失業給付の強化、中小企業の救済、航空会社向けの救済およびその他の影響を受ける大企業向けの融資が含まれています。

議会は、中小企業のためにより多くのローンを提供するための別の法案を通過させました。

危機が経済を揺さぶり始めた直後に、連邦準備理事会は、FFレートを0%~0.25%に引き下げ、緩和策を徹底。

金融機関が貸し続けることを奨励し、金融システムへの信頼を維持するために債券を購入する実質的な量的緩和プログラムを展開しました。

4月9日、連邦準備制度は、信用市場での流動性を高めるために、最大2.3兆ドルのローンおよびジャンク債を購入することを発表。

これにより、フォードや小売業者、レストランなどの苦戦している企業の株価が上昇しました。

現時点では、投資家は政府が経済を安定させ、早期回復させるために必要なことを行うものとみているようです。

こういった政策の有効性には議論の余地がありますが、政府の対策は倒産リスクのある多くの株式を上昇させるのを助け、中小型株にいたる広範な回復を後押ししました。

3. 株式市場は経済の急回復を織り込む

株式市場は経済の先行指標です。

投資家は経済の現状ではなく、どこに向かっているかについて賭けています。最近の数週間の企業決算の多くは赤字発表となっていますが、反応は強弱ばらついています。

たとえば、最後の不況では、2009年3月に失業率がピークを迎える数か月前、または2009年の第3四半期にGDPが成長に戻る前に、市場は底打ちしました。

言い換えると、弱気市場または不況の間に回復が目に見えるようになると、株式市場は実際に回復が始まる前に、織り込んで上昇し始めます。

割安な株価は投資家を引き戻すのに役立ち、経済危機の最中に株式を購入するリスクをとる動機づけとなります。

今回については、前述の刺激策の導入や欧米でのコロナウイルスの新たな感染が頭打ちになりつつあるため、最悪の事態は回避されたと投資家は考えているようです。

S&P 500は、米国経済が記録的な経済拡大を享受していた2019年8月の時点の水準には当然ながら戻っていません。

その当時、失業率は過去最低に近く、COVID-19はまだ存在していませんでした。

今日、失業率は二桁であり、ロックダウン命令が解除されたとしても、ウイルスはワクチンが開発されるまで、幅広い業界の障害となり続けるでしょう。

S&P 500は2007年の第2四半期にピークに達し、2011年の第2四半期の4年間を経てそのピークを超えてきました。

今回については、投資家は企業の利益が来年早々にも2019年のレベルを上回ると考えているようです。

ただし、リーマンショック後と今回の状況の間には、多くの差異があります。

企業利益がどれだけ早く回復できるかどうかは、ウイルスを抑制し、現在の急増する失業期間が短期間にとどまるかにかかっています。

たとえウイルスを抑制することができたとしても、パンデミックの影が付きまとう限り消費者の信頼感は取り戻せそうにありません。

記録的な失業申請件数、数百万人を悩ませる世界的大流行、そして企業収益への影響について、投資家は未知の領域に入っています。

今後の方向について、過去の事例を参考にすることができなくなっています。

したがって、経済の先行指標としての株式市場の機能が壊れているリスクも考慮しておくべきでしょう。