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【銘柄紹介】AbbVieってどんな企業?

出典:Getty Images

AbbVie(アッヴィ)という米国の製薬会社をご存知でしょうか?

主に医療現場で使用される医薬品を製造しているので、日常生活にはあまり馴染みがないかもしれませんが、日本医療でも存在感が非常に大きい製薬会社です。

とくに2018年ではC型肝炎治療薬「MAVYRET」が大ヒットし、日本市場で初めて医薬品売上高トップ20にランクインしました。

ヘルスケア銘柄は、長い目で見れば、2008年の金融危機時のような買いのチャンスとなるかもしれません。

本記事では、ヘルスケア企業の1つであるAbbVieの銘柄紹介をしていきます。

基本情報

まずは、AbbVieの基本情報をご紹介します。

  • 本社…デラウェア州
  • 創業…Abbott Lboratoriesの分社化により誕生
  • 創業年…2013年
  • CEO…リチャード・A・ゴンザレス氏
  • 上場市場… ニューヨーク証券取引所(NYSE:ABBV)
  • 時価総額…1,653億9,700万億ドル(2020年6月8日現在。Yahoo!ファイナンスより)
  • 決算日…12月31日
  • 発行済株式数…17億6,200万株(2020年6月8日現在。Bloombergより)

AbbVieは、米国の大手製薬会社Abbott Lboratoriesの研究開発部門が分社化して誕生した企業で、バイオ医薬品の開発・製造をおこなっています。

AbbVie自体は2013年と新しい企業ですが、Abbott Lboratoriesの元をたどっていくと創業100年を超える伝統的な製薬会社です。

(図1)

図1は、AnswersNewsが集計した、2019年通期決算における製薬会社売上高世界トップ10の結果を示したグラフです。

売上高は世界8位で、米国でいうとPfizer、Johnson&Johnsonに続く3位となっています。

医薬品の製造においては慢性自己免疫疾患の治療に焦点を当てており、なかでも関節リウマチ治療薬の「ヒュミラ」はAbbVieの主力商品です。

その売上高は、医薬品市場で売上高トップを記録するほど。圧倒的な収益源を誇っています。

AbbVieを支える「ヒュミラ」ですが、2021年から2023年にかけて各国において特許が切れてしまうという懸念点があります。

特許が切れると競合の競合他社は「ヒュミラ」のバイオシミラーを製造できるようになり、すでにPfizerや協和キリン富士バイオの製品がバイオシミラーとして承認されています。

企業として「ヒュミラ」への依存を脱していかないと、価格競争にさらされて大幅に売上高が減少することも懸念されるので、今後いかにポートフォリオを改善していくのかに注目です。

AbbVieの製品ポートフォリオ

AbbVieの製品ポートフォリオは、医薬品の治療分野に応じて以下の5つに分けることができます。

  • 免疫学
  • 腫瘍学
  • ウイルス学
  • 代謝・ホルモン製品
  • その他

以下で、詳しくご説明していきます。

免疫学

1つめは、主力商品「ヒュミラ」を含む免疫学製品です。

リウマチや皮膚科、消化器科などを治療分野としています。

とくに、北米やEU地域で需要が高いです。代表的な医薬品は、以下のとおりです。

  • ヒュミラ:関節リウマチ治療薬。皮下注射として投与する。日本では腸管ベーチェット病の治療薬としても使用される
  • SKYRIZI:重度尋常性乾癬治療薬。日本では膿疱性乾癬の治療薬としても使用される
  • ウパダシチニブ:関節リウマチ治療薬。成人患者の中等~重度の活動性関節リウマチの治療薬として使用されることが多い

腫瘍学

2つめは腫瘍学製品で、がんを治療分野としています。代表的な医薬品は、以下のとおりです。

  • イブルチニブ:抗がん剤。慢性移植片対宿主病の治療として、FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を始めて受けた治療薬でもある
  • ベネクレクスタ:血液悪性腫瘍治療薬。2019年11月22日に発売されたばかりの新製品で、自社製品が腫瘍学分野に参入したのは初めて

イブルチニブは、2015年に製薬会社のPharmacyclicsを買収したことによって手に入れた医薬品です。

そのため上記でも示したように自社製品が腫瘍学分野に参入したのは、1年以内の出来事となります。

ウイルス学

3つめはウイルス学製品で、HCV(C型肝炎ウイルス)やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を治療分野としています。代表的な医薬品は、以下のとおりです。

  • MAVYRET:HCV治療薬。軽度の慢性HCV成人患者や中度~重度の胃疾患患者、透析患者に投与できる
  • VIEKIRA:HCV治療薬。ダサブビルと併用することがあり、そのセットは「VIEKIRA PAK」と呼ばれる
  • パリビズマブ:REV(RSウイルス)感染予防薬。日本では早産児と気管支肺異形成症を対象に使用される
  • カルトラ:HIV治療薬。かつて、新型コロナウイルス感染症の治療に有効ではないかといわれていたが、治療効果は証明されなかった

代謝/ホルモン

4つめは代謝/ホルモン製品で、テストステロン欠乏症や甲状腺機能低下症などを治療分野としています。

代表的な医薬品は以下のとおりで、すべて米国のみの販売です。

  • CREON:膵外分泌不全や慢性膵炎の治療薬
  • レボチロキシン:膵外分泌不全や慢性膵炎の治療薬
  • AndroGel:テストステロン欠乏症治療薬

その他

5つめはその他の製品です。

①~④に分類されなかった治療分野を対象とする医薬品が含まれます。

代表的な医薬品は、以下のとおりです。

  • ORILISSA:子宮内膜症治療薬
  • デュオドーパ:パーキンソン病治療薬。米国外では「デュオドーパ」、米国では「デュオーパ」と呼ばれることがある
  • セボフルラン:吸入麻酔薬。世界中で販売されている

業績

では、AbbVieの業績を見ていきましょう。

出典は「投資家」ページです。

(図1)

図1は、売上高と当期純利益のグラフです。

売上高は右肩上がりで、売上高当期純利益率もプラスになっています。

以下でご紹介する複数のグラフで、売上高増加の要因を見ていきましょう。

(図2)

図2は、腫瘍学製品売上高のグラフです。

まず売上高増加の要因として、腫瘍学製品の「イブルチニブ」の売上高が、米国外で30%も増加したことがあげられます。

CLL(慢性リンパ性白血病)患者からの需要が高まったことや、価格設定の有利さがはたらきました。

また、同じく腫瘍学製品の「ベネクレクスタ」の売上高が、2017年通期以降毎年2倍以上も増加していることもあげられます。

AbbVieが初めて腫瘍学分野に参入した医薬品となりましたが、参入は成功のようです。

(図3)

図3は、その他製品売上高のグラフです。

その他の治療分野の製品でも「Creon」や「デュオドーパ」の売上高が12%増加し、市場での影響力を広げていきました。

2019年通期の売上高は、以上のような要因で増加しました。

ここで気になるのが、AbbVieの主力商品である「ヒュミラ」の状況です。

実は2019年通期は、売上高が大きく減少してしまいました。以下で見ていきましょう。

(図4)

図4は、「ヒュミラ」が含まれる免疫学製品の売上高を示したグラフです。各製品の売上高に占める割合も示しています。

「ヒュミラ」は主力商品として長年売上高の60%以上を占めていたのですが、2018年以降徐々に減少し始めています。

2019年通期には大きく下落し、45%を切るほどまでに。実はこれは、2018年にヨーロッパでの特許が切れたことが原因です。

ちなみに前述の通り、2023年には米国で2021年にはその他主要国で特許が切れます。

以前は売上高の60%を確保していて市場を独占していた「ヒュミラ」ですが、各地域で特許が切れるとそういうわけにもいきません。

現に、特許が切れたヨーロッパではバイオシミラーとの競争に陥っています。

今後、さらに収益基盤が不安定になってしまう可能性があるので、「ヒュミラ」に代わった新しい大型新薬を開発するか、製薬会社を買収するなどして製品ポートフォリオを多様化していく必要があります。

(図5)

図5は、売上高と売上原価、粗利益率のグラフです。

競合他社Pfizerの粗利益率も図示しています。

粗利率は2018年に入って80%を確保し、2019年通期もそれを維持する形となりました。

高い水準をキープできており、競合他社のPfizerもほぼ同じです。

(図6)

図6は、キャッシュフローのグラフです。

非常にキャッシュフロー総出力が高いことが読み取れます。

2019年通期に関しては、営業CFが法人所得税の支払いで減少し、投資CFが有価証券の満期償還によってプラスになりました。

2020年5月13日までに、しわ取り薬「ボトックス」で有名なヘルスケア企業Allerganの買収が完了しているため、2020年決算にはAllerganの膨大なフリーCFが組み込まれることになります。

2020年5月、Allergan買収完了

上記で触れた、Allergan(アラガン)の買収についてもう少し掘り下げていきたいと思います。

Allerganはアイルランドのヘルスケア企業で、美容医療やアイケア、婦人科や乳腺外科など、どちらかというと女性のヘルスケアにコミットした形で医薬品の開発をおこなっています。

買収によって、AbbVieはこれまで治療領域になかった美容医療などがポートフォリオに加わることになるので、「ヒュミラ」の特許切れにおいて求められていた製品ポートフォリオの多様化が叶うことになります。

また、絶大なブランド力を誇る「ボトックス」を手に入れることになるので、流入顧客はかなり多いと見込まれます。

さらに、Allerganは現在臨床開発の後期段階に近い資産を保有しているため、これらの製品化を成功させることができれば、今後一定の収益として舞い込んでくることが期待されています。

Allerganの買収が業績にどう表れるかが、株価を変動させるカギとなるので注目しておきましょう。

まとめ

本記事では、AbbVieについてご説明してきました。

主力商品「ヒュミラ」の特許切れによる売上高減少の懸念がありますが、ほかの医薬品がFDAによって承認されたり、市場でのシェアを伸ばして人気を高めたりしていることがわかりました。

徐々に売上高に対する依存度合いも減っており、Allerganの巨額買収に踏み込んだのも特許切れに対する大きな対策とAbbVieの成長に繋がるでしょう。

また、医薬品は病気の治療に使用されるものなので(美容医療等を除く)、景気が悪化したからといって需要が落ち込むというものでもありません。

そういった意味では、経済に対して耐性があるので安心です。

2020年の決算はAllerganの買収の影響がどう出るかに期待して、今後を見守りましょう。

免責事項と開示事項 記事の作者、タナカチアキは、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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