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【銘柄紹介】Adobe Systemsってどんな企業?

出典:Getty Images

Web関係の仕事をしている方は御用達の「Adobe Systems」のサービス。

画像や動画を編集するソフト、デザインを描画できるソフトなどがあり、クリエイターには欠かせないツールです。

実はAdobe Systemsは、ソフトウェア企業であるとはいっても、クリエイティブ分野では敵なしのトップ企業なのです。

本記事ではAdobe Systemsについて知りたい方に向けて、セグメント情報や業績、企業動向を解説していきます。

基本情報

まずは、Adobe Systems(NASDAQ:ADBE)の基本情報をご紹介します。

  • 本社…カリフォルニア州サンノゼ市
  • 創業者…ジョン・ワーノック氏とチャールズ・ゲシキ氏
  • 創業年…1982年
  • 現在のCEO…シャンタヌ・ナラヤン氏
  • 上場市場… NASDAQ(シンボル:ADBE)
  • 時価総額…1,862億6,400万ドル(2020年5月30日現在。Yahoo!ファイナンスより)
  • 決算日…11月末日
  • 発行済株式数…4億8,180万株(2020年5月30日現在。Bloombergより)

Adobeは、1982年創業の老舗ソフトウェア企業です。

創業当初は、デジタル文書や画像を鮮明に印刷するソフトウェアを開発して、AppleなどのIT企業に提供しライセンス料を得るというビジネスを展開していました。

その後、画像編集ソフトのPhotoshopやIllustrator、ビデオ編集ソフトのPremiere Proなど、オンラインのデジタル編集プラットフォームを数々開発して、知名度を上げていきました。

当初はパッケージを購入してデバイスにインストールする製品型が主流でしたが、時代背景とともに、現在はサブスクリプションモデルのクラウド型がメインとなっています。

ビジネスモデルをクラウドサービスに展開することに成功させた企業としても有名です。

Adobeのセグメント

Adobeは、以下3つのセグメントからなります。

  • デジタルメディア
  • デジタルエクスペリエンス
  • パブリッシング

デジタルメディア

1つめは、デジタルメディア部門です。

先ほどご紹介した編集ソフトのPhotoshopやIllustrator、Premiere Proを開発・提供しており、Adobeの売上高の7割を生み出しています。

部門としての主力サービスはAdobe Creative Cloudというサブスクリプションサービスです。

会員になるとPhotoshopやIllustrator、Premiere Proはもちろん、画像処理ソフトLightroomやDTPソフトInDesign、デザインソフトAdobe XDなど20以上のサービスの最新バージョンをダウンロード・アクセスすることが可能です。

デスクトップやWebサイト、モバイルデバイスなどさまざまな環境でも対応できる、クラウド配信プラットフォームとなっているので、利便性が抜群となっています。

さらにAdobe Creative Cloudは、複数デバイス間でファイルの同期・保存・共有が可能となっており、画像ストックサービスAdobe Stockやクリエイター用SNSのBehanceなどへのアクセスもスムーズです。

料金プランは、ユーザー種別や利用したいアプリ数などに応じて自身に合ったものを選ぶことができます。

アプリやWebサイトを手軽に作成できるサブスクリプションサービスとして大人気です。

デジタルエクスペリエンス

2つめは、デジタルエクスペリエンス部門です。

企業マーケティングをサポートするソフトウェアAdobe Experience Cloudを提供しています。

デジタルマーケティングを対象としていて、効率的に顧客を惹きつけて獲得し、維持するための戦略を立てていきます。

サポート内容は、ビジネスコンテンツの管理や電子メールでのキャンペーン展開、広告枠の買い付けや効果測定の自動化などをおこない、顧客体験管理(CXM)をスムーズにしていくことです。

近年、デジタルエクスペリエンス部門のような企業マーケティングをサポートする市場は現在急成長していて、GoogleやOracle、Salesforceなども競合にあたります。

今後いかに競争が進んでいくのかに注目が集まっているセグメントです。

パブリッシング

3つめは、パブリッシング部門です。

eラーニングサービスやプログラミング言語PostScript、PDFの印刷テクノロジー、Web会議製品などを提供しています。

こちらもMicrosoftやGoogleなど競合が多いため、価格や使いやすさ、サポートの手厚さなどでの差別化をおこない、顧客を囲い込む必要があります。

業績

では、Adobeの業績を見ていきましょう。

出典は「投資家向け広報活動」ページです。

(図1)

図1は、売上高と当期純利益のグラフです。

2015年以降、順調に売上高と当期純利益が増加していることがわかります。

今でこそAdobeというとサブスクリプションサービスを多く提供しているイメージがあるかと思いますが、実は2012年以前までは、PCにインストールするソフトウェア製品としての販売が主流となっていました。

2012年にサブスクリプションモデルに切り替えるという大きな出来事があり、売上高減少といった苦悩もあったのですが、その後サブスクリプションモデルが安定して成長性を見せているのです。

また、同時期にデジタルメディア部門の中核サービスであるAdobe Creative Cloudを本格的に提供し始めたのも、売上高増加に大きく寄与しています。

(図2)

図2は、売上高内訳のグラフです。

折れ線グラフで示しているのが、その年の売上高におけるサブスクリプション売上の比率です。

2015年通期で67.2%だったのが2019年通期では90%近くにまで伸び、サブスクリプションモデルへの転換は大成功であることが読み取れます。

(図3)

図3は、セグメント別売上高のグラフです。

デジタルメディア部門では、主力サービスであるAdobe Creative Cloudのサブスクリプション収益が大きく増加しました。

PDFの作成や編集をおこなうソフトAcrobatや電子署名ソフトAdobe Signも、近年のペーパーレス化推進によって需要が高まり、売上高増加に貢献しています。

また、2019年に3D編集ソフトを提供するAllegorithmic SASの持分を約10億6,200万ドルで獲得したことにより、デジタルメディア部門に統合されたことも大きいでしょう。

デジタルエクスペリエンス部門については、企業マーケティングを支援するAdobe Experience Cloudのサブクス収益が増加しました。

とくに、キャンペーン管理のプラットフォームが多く利用されているようです。

(図4)

図4は、セグメント別サブスクリプション収益のグラフです。

図3と見並べていただくとわかりやすいのですが、デジタルメディア部門は9割程度、デジタルエクスペリエンス部門は8割程度がサブスクリプションによる収益となっています。

ソフトウェア型の販売だと、1度購入すれば永続的に使用できるものの、次のバージョンが出ても買い替えない限り、旧バージョンを使い続けなければならないという欠点がありました。

しかし、サブスクリプションモデルに移行したことで、課金を継続する限りは常に最新バージョンを利用することができるので、利用者もサブスクリプションモデルに大きなメリットを感じていると考えられます。

(図5)

図5は、売上高と売上原価、そして粗利益率を示したグラフです。

常に粗利益率は85%以上と高水準な優良企業なのですが、2019年通期に少し落ち込んでいるところが気になります。

そこで、同時期の粗利益を減らす要因となった売上原価の内訳を見てみましょう。

(図6)

図6は、売上原価内訳のグラフなのですが、サブスクリプションにおける売上原価が大きく増加していることがわかります。

増加要因は、技術サポート担当者やクラウドサービスのインフラ運用におけるコンピューター機器にかかるコスト増加などです。

どちらも悪い要因ではなく、サブスクリプションサービスを安定して提供するために必要なコストなので、心配する必要はないでしょう。

ちなみに製品における売上原価はかなり減少傾向にあり、いかにサブスクリプションモデルへの移行が進んでいるのかが見て取れます。

(図7)

図7は、キャッシュフローのグラフです。

2019年通期の投資活動は、主に不動産の購入やAllegorithmicの株主持分取得によるものでした。

サブスクリプションモデルが安定してきたことにより、営業CFと同水準のフリーCFを確保できているため、今後多少景気が悪くなったとしても大きなダメージはないかもしれません。

また、2018年通期の投資CFが気になりますが、こちらはECプラットフォームを提供するMagentoとマーケティングテクノロジーを提供するMarketoを買収したことによるものです。

とくにMarketoは5,000社近い顧客がいるため、統合することでAdobeは幅広い顧客にサービスを提供できる基盤が整ったことになります。

Adobeはテンバガー銘柄

(図8)

図8は、2011/1/3の株価を100としたときのAdobeの株価とS&P500の比較を示したグラフです。

Adobeがサブスクリプショモデルに移行し始めたのは2012年なのですが、それを機に株価がS&P500を大きく上回り、その後も大きく値を上げています。

株価は10年弱での10倍以上となっており、Adobeはテンバガー(株価が10倍以上に上昇した株式)であることがわかります。

ビジネスモデルの転換に大成功して業績を安定させた点を見れば、これだけ株価が上昇するのも納得です。

クリエイティブ分野では敵なし

“クリエイターが使用するソフトといえばAdobe”というくらいクリエイティブ分野ではメジャーなAdobeのサービス。

しかも初心者からプロレベルの方までをカバーしていて、劣るところを知りません。

一般的にソフトウェア業界というのは競争が激しいものなのですが、Adobeはクリエイティブという分野でしっかりとした地位を確立しているため、敵なしという状況を作ることができた点で非常に貴重な企業なのです。

なので、画像編集ソフトやビデオ編集ソフト、描画ソフトなどに関しては今後もAdobeが独占して需要を獲得していくでしょう。

もちろんAdobe以外のソフトウェア企業も、今後どんどんクラウドサービスやサブスクリプションサービスを充実させていくとは思いますが、クリエイティブ分野はそれらに飲み込まれにくいと考えられます。

こういった理由から、クリエイティブ分野のサービスを提供するデジタルメディア部門の業績に関しては、今後も安泰でしょう。

しかもサブスクリプショモデルで成功しているので、会員が利用期間を延長するにはサブスクリプション料金を支払うことになり、継続的に収益を得ることが可能になります。

これは、従来のソフトウェア型では得ることのできなかった恩恵です。

しかし注意点として、デジタルエクスペリエンス部門やパブリッシング部門に関しては、大手競合他社が存在します。

クリエイティブ分野(デジタルメディア部門)のように敵なしというわけにはいかないので、Adobeならではの他社との差別化が必要です。

まとめ

本記事ではAdobeについてご説明してきました。

2012年にソフトウェア型からサブスクリプション型に転換し、一時期売上高の減少に苦しめられたものの、その結果が売上高や利益率に表れていたのが非常に魅力的だったかと思います。

サブスクリプションサービスの利用は継続課金によって成り立つので、安定した顧客基盤が確保できれば、安定した収益が長期的に得られることになる画期的なビジネスモデルです。

今後もクリエイティブ分野でのトップ地位を守ることができるか、競合が多いデジタルエクスペリエンス部門やパブリッシング部門ではいかに競合と差別化をして顧客を増やしていくかが、Adobeの将来を握る鍵となりそうです。

免責事項と開示事項 記事の作者、タナカチアキは、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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