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ROICと売上成長で解く企業価値とは

もし、あなたが銀行家だとして、企業経営者から融資を受けたいと申し出があった場合、企業のどこに着目するでしょうか。

企業のPBR(株価純資産倍率)でしょうか。

PER(株価収益率)でしょうか。

はたまたROE(自己資本利益率)でしょうか。

企業の価値を見定めるのはどんなところに注目すべきかという問題が存在します。

今回はそのような指標にこだわらず、簡単に企業の価値はどんなときに創出されて、また増大されていくかをROIC(投下資本利益率)と売上成長から紐解いてみようと思います。

なぜROICなのか

まずはROICと昨今注目されているROEを簡単に比べてみましょう。

  • ROIC=成長率÷投資比率

※厳密には、ROIC={営業利益 ×(1-税率)}÷(純資産+有利子負債)

  • ROE=一株あたりの利益÷一株あたりの自己資本

※等式的にROE=当期純利益÷自己資本とも言える

ここでいう成長率とは翌年にどれだけ利益が伸びたということであり、投資比率とは投資に対してどれだけ利益が発生したかということです。

次の企業A社を例に考えてみましょう。

企業A社の投資比率と成長率

1年目 2年目
利益 100 105
投資 25 26

※単位:百万ドル

利益は1年目から2年目まで利益は500万ドル成長し、すなわち成長率は5%であり、そのときに行われた投資額は2,500万ドルとなり、ROICは500万÷2,500万×100=20(%)です。

投資比率は投資に対する利益となり、投資額を利益で除した2,500万÷10,000万×100=25(%)となります。

簡単ではありますが、このようなイメージだと難解なROICも投下資本での利益率という概念が掴めるかと思います。

ROICの中央値としては業界セクターによってバラつきはあるものの、ハイテク企業では15~20%、ガス電気では5~10%となります。

一概にROICが高いからということで注目せずに、セクター同士で比較してみることが重要になります。

さて、それではROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)では何が違うのでしょうか。

ROEとROICは似てこそはいますがその内容はまったく異なります。

計算式の詳細からも分かるように、投下資本には自己資本だけではなく、借り入れした借入金も含まれるということです。

借り入れしてきたすべての金額か自己資本だけか、さらには税引き後かそうでないかということです。

ROEでは実質、当期純利益を自己資本で除したものに過ぎず、会計上ではあまりにも操作しやすく、ノイズが多すぎるように懸念されます。

一例では、当期純利益が一定の場合では自己資本を減少させることで、ROEが改善しているように見せることも可能となります。

企業価値の4つの原則

マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントによれば、企業価値が創出または増加するとき以下のような4つの法則が成り立つということを紹介しています。

  • 資本コストを上回るリターンが出るようにキャッシュフローを生むこと。
  • 株主にとって価値が創出されるのは企業がより多くのキャッシュフローを生み出す場合である。
  • 株価は企業の業績だけではなく市場の期待の変化にも左右される。
  • 誰が経営をし、どのような戦略を採るか。

これら4つのことを考慮すれば、企業の価値とは業績だけではなく、売上の成長重視であり、投資家の期待や経営者の采配など決算報告書には見えにくいところもあることが言えるかもしれません。

実は近年ではMicrosoftやAmazon.com、またはかつては市場を騒がせたeBayなどIT企業やサービス業をはじめとした少ない自己資本で稼ぐ企業が増えたため、ROICは2020年の現在ではもはや古い企業価値の考え方ではないのかという意見が度々聞かれることも事実です。

しかし、自己資本なくして経営はできないセクターは未だに多く、ROICが特に有効なセクターとしては製造業や小売業はROICが挙げられるでしょう。

企業価値は売上成長率に期待されつつある

ROICが企業価値を測るものさしとして、かつてほどの万能性を失いつつも依然として機能し続ける目安として売上成長率が挙げられます。

売上成長率は上記でも取り上げましたが、企業がキャッシュフローを稼ぎ出す能力を示す最もシンプルな指標です。

売上成長率の中央値は5%程度であり、8%もあれば上々な企業と言えるでしょう。

企業体系が資本を必要としなくなったことで、ROICやROEが機能しなくなってきましたが、一方で稼ぐ能力はセクターを超えて注目されています。

ITやロボット・AIを駆使して効率化が求められる昨今ではいかにコストダウンをするか、すなわち、独自の仕入れルートを構築するあるいは独自のオペレーションを実施するかではなく、競争力を必要とするようになったのです。

売上の成長は自社のシェア拡大、価格の引き上げ、市場そのものの拡大、M&Aなどの買収による拡大の下で行われます。

これらは売上の成長事態が維持するのが難しく、自前で成長し続けることに限界を迎えるとM&Aを繰り返し実施するようになり、その際には誰が経営をしているかという問題に差し当たります。

かつてAmazonは小さなオンライン上の本屋でしたが、次第に小売業として成長としていき、今やクラウド事業がメイン事業として発展しました。

Amazonが巨大化してきたのは自前による成長ではなく、小売業、物流網、クラウド事業、AI事業など様々な事業を買収したと同時に市場そのものが発展してきました。

そして、その買収の判断をしたのがCEOであるジェフ・ベゾス氏だというのは、売上成長を学ぶ上では好例と言えるのではないでしょうか。

よく見かけるPBRかPERか、それともROEかという議論は実は企業価値そのものを見ていないことに気付きます。

それらは、投資家や経営者が慣用句的に使っているのに過ぎず、経営の本質とは関係がないと本人たちは分かっていながらもPBRやPERで語るほうが意思疎通できるからなのです。

人の本質や能力が出身校に関係ないと分かっていながらも人事担当員は「どこの出なのですか?」と聞いているようなものです。

企業の価値とは何かと議論した場合、指標ではなく、常にビジネスと財務諸表から議論は始まっていると考えられるべきで、それらは企業の本質を知る上では理解しておかなければならない項目のように思えることではないでしょうか。

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