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減配や無配化、自社株買い停止をどう考えるか

COVID-19による業績悪化や不透明性、さらにそこから波及した原油価格の急落などにより、一部の企業で無配化や減配、あるいは自社株買いの停止など、表面的に見れば株主還元の悪化が見られます。

投資家はこれをどう捉えるべきなのでしょうか。

以前「その銘柄選定、「Why」の答えは?」と言う記事を書きましたが、銘柄選定理由に合わせて「ポジティブに捉える」か「ネガティブに捉える」かが変わってくると思います。

ポジティブに捉える例

今回のような世界的な危機に伴って減配や無配化、自社株買いの停止があったとしても、企業のビジネスそのものや、長期的な企業(業績)の成長に期待して銘柄選定をしている場合、そしてその期待を継続して抱いていける場合は必ずしもネガティブ捉える必要はないでしょう。

一言で言えば「業績の回復」や「ビジネスの加速」のために必要となる(あるいはその可能性が高い)ので、一時的にキャッシュを潤沢にしておきたい、と言う場合です。

これは適切な経営判断だと捉えています。

反対に不透明性が伴う中で、安易に自社株買いや増配を維持、強化し、キャッシュ不足に陥ることは愚策だと考えています。肝心のビジネスへの投資が疎かになるからです。

例えば私のポートフォリオの中ではAT&T(NYSE:T)が自社株買いの停止を発表し、ネガティブな意見も多く見かけましたが、私はこれに対してはポジティブでした。

コンテンツビジネスや5Gビジネスなど、企業の成長を加速させようと考えているときに、COVID-19と言う不透明な要因により業績悪化の懸念が浮上した状態です。

キャッシュを確保し事業への投資を継続するという判断は英断だと感じました。

ネガティブに捉える例

反対に配当利回りの高さや自社株買いによる短期的な株価の値上がりだけで選んでいて、企業のビジネス自体にはそもそも期待していない場合や、恒久的と思われる業績悪化の(今後の回復や成長に期待ができそうもなくなってしまった)第一歩として減配、無配化、自社株買い停止がある場合はネガティブに捉えざるを得ないでしょう。

業績悪化からの回復や、さらなる成長が期待できない時点で保有の価値が大きく失われますが、手放そうにもこれらの発表の時点で株価は下落するため損失を被ります。

かと言って保有していても株主還元されづらいため、結果として泣く泣く損切りか、回復を祈りつつ塩漬けか…と言う二択を迫られることになります。

更に悪化すれば、最悪の結果にもなりかねません。

2019年まで強気相場が続きましたから、今から振り返れば成長や業績維持を前提として借金をし、極端に守りを捨てた経営をしていた企業もあったのではないでしょうか。

ある意味では無謀ともいえる株主還元の結果そうなってしまったのであれば、今後の経営も信頼しづらくなります。

目先よりも結果を想定する

ここで少し例を挙げてみます。皆様ならどちらを選びたいでしょうか。

  1. やや業績不振ながら果敢に増配、自社株買いを行う企業
  2. やや業績不振となった結果、元々高配当ながら無配化する企業

多くの方は1を選ぶでしょう。私も2019年の強気相場の中であれば、迷わず1を選んでいたと思います。

目先だけ見れば株主還元に積極的な銘柄の方が魅力的に映るからです。

結果に触れなければ「1は株主を大切にしている」「2は株主を軽視している」と言う印象になりそうです。

しかし「1つの可能性」として続きを書いてみましょう。

やや極端でズルいかもしれませんが、以下の結果も踏まえるとどうでしょうか。

  1. 果敢な増配、自社株買いにより株主還元を演出するも、キャッシュ捻出のため有望事業の売却や更なる社債発行の結果、事業が立ち行かなくなり政府に支援要請。あわや倒産の危機に陥り、COVID-19終息後もキャッシュに余裕がなく立て直しが難航。業績も芳しくない状態が続く
  2. 元々高配当ながら無配化。不透明な状況の長期化に備え、一時的に株主還元を停止したり、リモートワーク拡大に伴いオフィスを縮小したり、働き方の見直しで人件費圧縮などコストカットを行うことで捻出したキャッシュで成長分野への投資を継続。COVID-19終息後は投資を行った成長分野でより多くのキャッシュを稼ぎ、株主還元も再開しながらも成長分野への更なる投資でビジネスを加速

かなり極端に差を付けましたが、こういうケースもあるわけです。

目先がネガティブに思えても、後者のようなシナリオならば一概にネガティブに捉える必要はない、と言うことですね。

むしろ「2019年までの上昇相場では攻めの経営をしていたが、危機に瀕した場合の守りの経営もでき、攻守ともに適切な判断が出来る企業」として再評価すべきなのではないでしょうか。

「危機の乗り切り方」に注目する

COVID-19のような予測困難で突発的な危機に瀕した時、投資手法と同じく企業の「危機の乗り切り方」に注目することも貴重な情報となります。

COVID-19は急速に広まったため、事前に予測困難であり、「特殊な状況」つまり例外としてデータから除外することも出来てしまうでしょう。

しかしそもそも、市場はいつも予測通りに動くわけではないですし、世界経済が変化する速度は誰にも正確に予測はできません。

現在「攻めすぎによる反動」で痛手を負っている場合それは反省すべき点でしょうし、企業も投資家も「今後も市場は予測困難である」ことを念頭に置くべきです。

今回は減配、無配、自社株買い停止にフォーカスを当てましたが、実はこの話は逆の観点でも役に立ちます。

つまり保有銘柄が増配や自社株買い継続を決定したとして、そのキャッシュはどこから来ているか、と言うことです。

どれだけ稼ぎ、どれだけ借り、それらを事業への投資に使い、株主に還元し、危機に備え貯えるか。企業(経営者)のキャッシュの使い方の巧拙を知る良い機会になります。

無理をしていて前述の「極端な例1」のようなパターンにならないか、成長が期待出来る事業を切り売りし、成長性を犠牲に強引にキャッシュを作っているだけではないのか。

もしそれが綿密な計画の上で行われており、成長性も株主還元も犠牲にならないのならさておき、単なる「見栄」だとしたら持続可能性には疑問符が付くでしょう。

まとめ

COVID-19による消費の低迷と言う突発的な事柄は世界経済に対し、急速に影響を及ぼしました。

この変化に対応するために「攻めの経営」から「攻守バランスの取れた経営」へ方向転換することは英断となることでしょう。

もちろん攻め所を見逃せば次の世の中についていけなくなる可能性もありますし、攻めすぎた結果、それすら叶わず破滅の道を歩んでしまう可能性もあるわけです。

危機に瀕して攻めと守りのバランスが重要になり、経営手腕が問われる中で「目先の株主還元」に囚われず、事業そのものの成長性や、持続可能性の高い経営を行っているかに注目していきたいですね。

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