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配当金と株主優待、どちらを優先するのか企業側の視点で考察する

5/21にすかいらーくHD(3197)は、前年同期比で9割以上純利益が減少し、中間配当を無配とする第1四半期の決算を公表しました。

この決算発表は特に「優待投資家」が注目していたようです。

ご存じの方も多いと思いますが、すかいらーくHDの株主優待はお得度が高く、1,000株保有ともなれば、年間69,000円ものお食事券をいただける内容です。

しかしながら、4月以降に相次いで緊急事態宣言が出された後はステイホームが推奨されたため、すかいらーくHDをはじめとした外食産業は営業時間短縮、休業等で客足が明らかに落ちていることが明白でした。

業績がよくないこと自体は想像ができていたものの、株主優待制度の変更もあるのではないかと想定していた「優待投資家」が少なからずいらっしゃったようです。

結果、中間配当は無配、期末配当は未定と配当金には変化があったものの、株主優待制度については何も発表されず、制度は維持されています。

配当金と株主優待。個人投資家の視点で考察すると、どちらも「株主還元」と捉えられないこともなく、実際優待銘柄のバリュエーションをするときは、配当金と優待換算額をあわせて利回りを計算する方もいらっしゃるようです。

しかし、株を発行する企業の立場に立つと、配当金と株主優待は全く性格が違うものになります。

配当金は確実に現金の支出を伴いますが、株主優待は株主に付与する費用は発生するものの直接現金を支出するものではありません。

仮にすかいらーくHDが中間配当を前年同期と同じ額である1株=9円払うと仮定した場合、すかいらーくHDの発行済株式数は、5/21に公表した決算短信によると197,502,200株ですから、約17億8千万円の現金が必要になります。

出所:すかいらーくHD 2020年12月期第1四半期決算短信より

この金額は、すかいらーくHDの「現金及び現金同等物」の1割強にあたります。

現在は、当面100%のオペレーションに戻ることを想定しづらいとすると、手元に現金を積んでおきたい局面でしょう。

出所:すかいらーくHD 2020年12月期第1四半期決算短信より

一方、株主優待券は作成・配付にこそ費用は発生するものの、発行した優待券は誘客効果があると想定され、緊急事態宣言が解除されて徐々にオペレーションが元の水準へ向かって戻る過程において、優待券を保有する株主による売り上げの下支え効果があると考えられます。

配当を犠牲にしても優待を残すことにした理由は「現金の支出の有無」が結論を左右したように思えます。

株主優待制度に関して言えば、かねてから否定的な意見も少なくありません。

  • 外国居住者には恩恵が無い
  • 株主優待の付与等に発生する費用は決して小さくなく、結果的に利益の押し下げ要因になっている。

等がその理由でしょう。

それでも、株主優待制度を重視する上場企業が少なくないのは、個人株主の買い支え効果を無視できないからです。

例えば、すかいらーくHDの場合、発行済株式数の2/3以上を個人と思われる株主に保有されており、その株主数は全体の9割以上を占めます。

そのほとんどが株主優待券を付与されていることでしょう。

仮に株主優待による株主への優遇を縮小すると発表した時に想定されるのは当該株の「売り」ですが、すかいらーくHDの場合その売りの規模が相対的に大きいことが予想されます。

株主優待の恩恵を事実上得られない外国人投資家の保有も全体の約1割ですから、株主から見て不公平だという意見も相対的には小さいものでしょう。

この株主分布状況もまた、すかいらーくHDの経営陣が株主優待制度を犠牲にしなかった理由と考えられます。

出所:日本経済新聞website すかいらーくHD 2019年12月期有価証券報告書による株主分布状況

一方、やや定性的ではありますが、

  • その他(個人)の保有が少なく
  • 株主の数もそれほど多くなく
  • 小型株

の優待は、株主への影響がすかいらーくHDに比べて小さいと言え、言葉を選ばず言えば株主優待制度を変更しやすいとも言えそうです。

これから前年比で減収や減益という企業業績の発表が相次ぐと思います。

その都度、減配や株主優待制度への影響を考える投資家が少なくないと思います。

そのような際、配当金や株主制度が企業から見た時にどのようなものなのかを考えると、シナリオの想定をしやすくなると思います。この記事がそのヒントになれば幸いです。

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