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アメリカの失業保険申請件数が重要視される理由は?日本との違いも解説

アメリカの経済ニュースを見ていると、失業保険申請件数が毎週のように取り上げられます。

失業保険申請件数が経済の指標とされる意味を正確に理解するのは、投資を始めたばかりの方だと難しいかもしれません。

そこで今回は、アメリカの失業保険申請件数がどうして経済指標になるのか、アメリカと日本の働き方に関する違いと一緒に解説します。

失業保険とは

日本国内において、失業保険とは会社都合・自己都合で職を失った際に、次の仕事が見つかるまでの生活費としてお金が給付される制度です。失業手当や失業給付とも呼びます。

日本の社会保険制度において、雇用保険は条件に合う事業所に勤めている労働者なら誰でも被保険者となり、パートタイマーや派遣労働者も含まれています。

最大の特徴は国が保険者となり給付するため、東京の人が申し込んでも、北海道の人が申し込んでも、給付条件や内容が全て一緒になる点です。

失業保険の目的は、失業すると次の仕事が見つかるまでの期間が無収入となり、生活が苦しくなるのを防ぎ、次の仕事を安定して見つけられる環境を整えることです。

ところが、アメリカの失業保険は日本と異なる部分があります。

アメリカの失業保険とは

アメリカの失業保険は対象となる事業主に雇われている者で、被保険者期間を満たし、なおかつ懲戒解雇や自己都合以外の理由で離職するのが条件となります。

つまり、会社の都合でクビにならないと、アメリカの失業保険は発生しません。

そして国では無く各州が独自のプログラムで運営しているのが大きな特徴となっています。

連邦政府のガイドラインはあるため、最低水準は定められていますが、給付期間などが州によって異なります。

アメリカの失業保険も、日本の失業保険と同様に次の仕事が見つかるまでの期間が無収入となるのを防ぎ、次の仕事を安定して見つけられる環境を整えることが目的です。

しかし、日本とアメリカでは働き方に関する認識が異なっており、それが失業保険にも表れています。

日本とアメリカの働き方に関する違い

日本は正社員の雇用に対して終身雇用の考え方が根強くあり、新卒の会社で定年退職を迎えるのが美徳とされてきました。

そして、勤めている会社が苦境に立たされ、リストラされてしまうと、涙をのんで会社を去ります。

一方でアメリカは終身雇用制度を廃止し、企業と個人が対等であるというアメリカ式の雇用が主流となりました。

そのため、企業側は経営状態が苦しい時に無理をして労働者を雇い続ける義務は無いと考えるようになったのです。

そこで、企業は労働者を一時的に解雇(レイオフ)して、経営状態が回復したら解雇した労働者を呼び戻すという手法が一般化されました。

その期間の給料を失業保険で補うのです。

この考え方は企業だけでなく労働者側もきちんと理解しているため、雇用者と労働者は共に毎月少額の税金を納めて、レイオフに備えて準備しています。

日本では労働者の労働環境が手厚く保護されていることもあり、企業側の都合で簡単に解雇・再雇用という手法が取れません。

そのため、日本でレイオフは一般的ではありません。

アメリカの失業保険は、アメリカが日本よりも個人主義を重視しているため、日本と違った使われ方をしますが、ほかにも日本との違いはあります。

たとえば、日本では普段から使用している通勤路の途中で怪我をした場合は労災扱いとなります。

しかし、アメリカでは通勤の最中に怪我をしても労災は下りないのです。

また、アメリカでは独身や既婚、子供の有無や人数は個人の問題であって、雇用者が面倒を見る義務は無いと考えます。

そのため、扶養手当や子供の出産に対する手当なども会社から支給されません。

アメリカの失業保険申請件数が経済指標に使われる理由

アメリカの失業保険申請件数は、失業者が初めて失業保険給付を申請した件数になります。

最大の特徴は、経済指標としては珍しく、毎週木曜日に発表されるという速報性の高さです。

その内容は、毎週木曜日のニューヨーク時間午前8時30分に、前週の失業保険申請件数が発表されます。

アメリカでは、会社の経営状態が改善するまで労働者をレイオフするために失業保険を使う場合があります。

そのため、失業保険申請件数は失業率を予測するための数値(先行指標)としても、景気の動向を探るためにも使われる指標となっています。

各金融機関では今週の失業保険申請件数に対して来週の予測が発表されます。

その予測や前週の申請件数を上回ると、雇用情勢が悪化して失業者が増えていると分析が可能になります。

株式市場や為替市場では、失業保険申請件数が予想の範囲内だと買い、予想を超えた場合は売り圧力が強くなりやすいです。

ただし、失業保険申請件数は失業率と一致するとは限りません。

アメリカでは失業保険の加入条件が日本よりも厳しく、失業保険に加入できない労働者が多いのです。

また、失業保険申請件数はイベントや災害などの影響を受けるため、一週間ごとの増減を見るよりも、まとまった期間の平均を分析するのが一般的となっています。

新型コロナによる失業保険申請件数の増加の影響

アメリカでは新型コロナの拡大を防ぐために非常事態宣言が3月中旬ごろに出されました。

記事執筆時点では、宣言が出されてから7週間が経過し、その間に3300万件以上の失業保険の申請件数がありました。

リーマン・ショックのピーク時と比べても約7倍の申請件数で、アメリカの労働人口から計算すると5人に1人の割合で職を失ったことになります。

非農業雇用者数変化は2,050万人の減少と発表がありました。

ですが、上記でも触れたようにアメリカの失業保険は一時解雇中の給料の代わりという意味も強く、職場さえあれば復職できる可能性が高いです。

そのため、記事執筆時点ではNYダウもナスダックも、暴落前の平均株価の半値以上をキープしています。

失業保険申請件数が増えていても、短期的に見ればアメリカ株はバブル状態となり、楽観的なムードが流れています。

トランプ大統領も経済活動の再開を促しており、レイオフされた労働者が元の職場に戻ってきたと雇用統計に現れれば、経済は安定します。

しかし、それまでに企業の体力が持つのかどうか不安視もされています。

毎年4月~5月は四半期に一度の決算報告のシーズンですが、新型コロナによる経済の自粛の影響は少なからず出ております。

既にいくつもの大手企業が破産法を申請しており、どこまで倒産ドミノが続くのか予想も付きません。

ほかにも、世界的な原油安によるシェールオイル関連企業の倒産など、不安視されるリスクは幾つもあり、アメリカでは失業保険が給付される期間が一律で延長され、4月頃に申請した方でも年内までは失業保険が受け取れます。

つまり、失業保険を受け取る状況が年内まで続くという見方も可能なのです。

まとめ

以上が、アメリカの失業保険申請件数が重要視される理由です。

アメリカは幾つもの経済指標が互いに影響与えており、全てを把握して投資をするのは難しいです。

しかし、どの経済指標がどういった意味なのかきちんと理解していけば、投資を通して世界の経済を深く知ることもできます。

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