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バイオビジネスの時代が到来か。米国バイオ企業の最新動向

新型コロナウイルスが世界中で広まり、その中でもニューヨーク州は特に感染が拡大し、一時ロックダウンとなりましたが、5月15日から感染抑制の基準を満たした区から外出禁止令が解除となり、少しづつお店が開き始めています。

それに伴いワクチン開発の需要が高まったことで、米国株式市場も大幅続伸しました。

とはいえ現段階でワクチン開発に成功した訳ではないことを念頭に置いておく必要があります。

実際、ワクチン開発はとても難しい分野であり、エイズの原因となるヒト免疫不全ウィルス(HIV)のワクチンも未だに成功していません。

つまり人々の不安が払拭された訳ではないのです。

またFRBのパウエル議長は「経済が完全に回復するには人々の自信を取り戻す必要があり、そこにはワクチンの登場を待たなくてはならない」と発言しています。

そこで今回は、米バイオ企業が開発を目指すワクチンと治療薬の動向を解説していきます。

バイオ王者ギリアド・サイエンシズのビジネスモデル

現段階で抗ウイルス薬「レムデシビル」が臨床試験の結果、100%完璧とは言えないものの、良い効果が出ている報告がシカゴ大学病院から出ています。

元々はエボラ出血熱の治療目的で作られ、ウィルスの複製機能を持つRNAポリメラーゼを阻害することでウィルスの増殖を抑え、症状を回復させる治療薬として、FDA(米国食品医薬品局)の緊急承認を得ている薬です。

今回、ギリアド(NASDAQ:GILD)は10月までに50万人、年末までに100万人分の「レムデシビル」を無料で供給しようとしていますが、なぜ無料なのかというと、その理由こそ「ギリアドが考えるビジネスモデル」なので下記の内容を抑えておきましょう。

1つ目の理由として、コロナウイルスだけに限らず、新型ウイルスはインフルエンザのように毎年少しづつ変化しながら、再び流行する可能性が高い事が挙げられます。

例えば今年の夏にある程度の抑制が出来たとしても、秋以降に第2波が来る可能性も否定できません。

まずは無料で世界中に「レムデシビル」を配布し、今後、再びコロナウィルスが流行した場合はレムデシビルをベースに改良し、そのときに今度は有料で販売すればいいのです。

今は世界中に取引先を増やしておくことで、後から新薬を投入した際に充分に資金回収が出来るからこその「無料配布」なのです。

2つ目の理由として、以前ギリアド・サイエンシズはC型慢性肝炎治療薬「ソバルディ」と「ハーボニー」の開発に成功した際に、薬価を事前予想よりも高く設定しました。

これが患者や保険会社の反感を買う事となり、利益を上げていたものの株価が長らく低迷しました。

こうした事情があることを考慮して現在のギリアドを見ていくと、現在と今後の事業戦略の見通しがある程度見えてくるのではないでしょうか。

コロナ治療薬「レムデシビル」で注目を集めたギリアド・サイエンシズに注目すべき理由

ワクチン開発は順調?注意すべきモデルナの動向

人々が本当の意味で「安心」を手に入れるためにはワクチンは必要不可欠です。

米国のトランプ大統領はワクチン開発の迅速化を目指した「ワープ・スピード作戦」を実行すると表明しましたが、これは有力候補のワクチンを承認前に、米国政府がワクチンを大量に買い取る事を約束したことを意味します。

これは猛スピードで有力ワクチンを絞る意図があり、その分、多くの失敗も生むはずです。

モデルナ(NASDAQ:MRNA)はワクチンの試作品を1番早く作り、今後7月に大規模な治験へと移行しますが、成功するのかどうかは現段階ではまだ分かりません。

とはいえ株価は高騰しており、5月18日には87ドルを記録しました。

しかしワクチン開発の成功は極めて難易度が高く、成功すれば株価はさらに高騰するのは間違いありませんが、失敗に終われば暴落の可能性もあります。

実際、第1相臨床実験では「初期の治験、有望」との報告が出ましたが、この発表は多くの専門家が詳細なデータに乏しいと指摘しており、株価は下落しています。

そのため投資家は様々なシナリオに備えたリスクコントロールを念頭に置いて、バイオセクターへの投資と向き合うべきでしょう。

ジョンソン&ジョンソンの動向

米国のヘルスケア大手ジョンソン&ジョンソン(NYSE:JNJ)は、新型コロナウィルスに対するワクチン開発計画を発表しました。

今後ワクチン候補を絞ったあと、9月には臨床実験を開始して2021年の運用を目指す事を宣言しました。

今回のワクチン開発競争ではモデルナが先行していますが、ワクチン開発がいかに難しいのかを熟知しているジョンソン&ジョンソンは、他社の動向に焦っているわけではありません。

こうした手法を「非複製ウィルス型」と呼び、他社とは別のアプローチを進めています。

また株価への影響を考えた場合、企業全体から占めるワクチン開発の影響は少なく、例えワクチン開発が失敗したとしても大きく株価は変化しないでしょう。

つまり、あくまでも長期保有のバリュー株としての性格が強い企業ともいえるのです。

注目する2つのバイオ企業

仮にワクチン開発が完成したとしても、実はここでもうひとつ乗り越えなければならない課題があります。

それは正確にワクチンを大量生産するのは簡単ではないということです。

またワクチンが完成したとしても、現段階ではどこの企業が成功するのか分かりません。

こうした状況でも確実に需要があるのが、ワクチン製造や検査に特化した企業です。

ワクチン製造に定評があるエマージェント・バイオソリューションズ(NYSE:EBS)とクワイデル(NASDAQ:QDEL)が開発した、PCR検査よりも簡単に検査ができる「ソフィア抗原生物検定」をFDA(米国食品医薬品局)が承認したことで、今後、長期的な需要が見込まれます。

エマージェント・バイオソリューションズ

ワクチンの製造会社として、バイオ企業が開発したワクチンを大量に安全に製造することに長けた会社です。ジョンソン&ジョンソンの製造も担当しています。

会社の始まりは2001年に米国で起きた炭疽菌のバイオテロです。

現在は炭疽菌と天然痘ワクチンの唯一の納品業者であるため、米国政府との繋がりが強い企業であることも特徴です。

つまりワクチンの成功・失敗に関わらず需要があることに加えて、仮にワクチンが成功した場合は大量に生産することになるので、どのような局面でも一定の需要があることが強みとなるはずです。

クワイデル

クワイデル社はもともとインフルエンザ用の診断装置を作っている会社です。

そのクワイデルが開発した「ソフィア2」というソフィア抗原生物検定装置は、町の小さな病院でも使用出来ることに加えて、最長でも検査時間15分で結果が判明する優れものです。

PCR検査よりも精度は劣るものの、会社や学校など病院以外でも使用することができるメリットがあります。

ワクチンのテストという分野は今後もニーズが高いので、仮に競合会社が台頭した場合でも需要がなくなる心配は少ないはずです。

終わりに 新型コロナと米国経済の行方

米国が実施する「ワープ・スピード作戦」が成功するかどうかは現段階では分かりませんが、政府がスピード感を持って対応している大きな理由は、今秋に新型コロナウィルスが再流行することを防ぎたいからです。

ワクチンは注文してから納品までに時間がかかるので、急ピッチで検査を進めているはずです。

米国も段階的に外出禁止令が緩和されていますが、「ワクチン」が出来上がるまで経済の活気が元に戻るとは考えにくく、今後もしばらくの間、株式市場は不安定な状態が続くはずです。

ワクチン開発動向が株価を左右しているのは明らかで、例えばモデルナは現在まで市場で販売されている薬品がないことを忘れてはなりません。

仮に次々とワクチン開発が失敗に終わった場合、治療薬である「レムデシビル」の存在感が強まるシナリオも投資家は考えておくべきでしょう。

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免責事項と開示事項 記事の作者、鈴木林太郎は、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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