The Motley Fool

資金調達方法に透けるリーマンショックとコロナショックの違い

借り入れや社債発行等による資金調達のニュースが相次いでいます。

日本経済新聞のwebsiteで「資金調達」で検索してみたところ、少なくとも以下に挙げる企業に関して、借り入れ等による資金調達報道がヒットしました(2020/5/14現在、順不同)。

  • ANAHD(9202)
  • 日本航空(9201)
  • 三菱自動車(7211)
  • 三越伊勢丹HD(3099)
  • ラウンドワン(4680)
  • マツダ(7261)
  • JUKI(6440)
  • ブリヂストン(5108)
  • 三菱UFJFG(8306)
  • コニカミノルタ(4902)
  • ダイキン工業(6367)
  • 資生堂(4911)
  • スバル(7270)

規模が小さな借り入れ等はニュースにならないことも少なくないので、きちんと調べればまだまだほかにも同様の事例があると思われます。

筆者はこれらの報道を耳にするたびに「あの時とは違うなぁ」という印象を持ちました。

「あの時」はリーマンショック後です。

筆者のぼんやりとした記憶では、リーマンショック後に公募増資を実施した企業が多かったのです。

気になって現在のTOPIX100採用銘柄に関して調べてみました。

現TOPIX100採用銘柄にはリーマンショック前後には未上場であった銘柄もあります。10年ぐらい経過すると指数採用銘柄の顔ぶれが変わるんだなと思わされます。

結果、リーマンショック後に公募増資を行っていたのは以下の8社でした。

なお、リーマンショックが企業業績に顕著なダメージを与えていたことが明らかになったのは2009年3月期であったことを踏まえ、2009年4月~2011年3月の2年間に公募増資を行った企業を対象としました。

  • 国際石油開発帝石(1605)(2010年8月)
  • 東レ(3402)(2010年6月)
  • 三菱UFJFG(8306)(2009年12月)
  • りそなHD(8308)(2011年2月)
  • みずほFG(8411)(2010年7月)
  • オリックス(8591)(2009年7月)
  • 大和証券G本社(8601)(2009年8月)
  • 野村HD(8604)(2009年10月)

リーマンショックは、その名の通り当時アメリカの投資銀行であったリーマン・ブラザーズが破綻したことにより、金融収縮が起きたことによる景気低迷です。

そのきっかけとなったサブプライムローンは世界中の多くの金融機関が保有しており、結果として資本増強に動いたのは金融セクターの企業が多くなったのでしょう。

一方、今回の資金調達報道では今のところ目立った「公募増資」という声は聞こえてきません。

前述したように、借り入れや社債発行で手元資金を増やそうとしている企業が多いように見受けられます。

この違いは、リーマンショックとコロナショックのバックグラウンドの違いを反映していると思います。

リーマンショック時に一番最初に困ったのは前述したとおり金融機関でした。

だからこそ、金融セクターの増資が多かったのです。

一方コロナショックで困っているのは事業をサスペンド状態に追い込まれた事業法人で、金融機関はむしろ資金の出し手あるいは返済を猶予する主体になっています。

つまり、現時点で金融機関に「お金」はあるのです。

また、事業法人が借り入れ等で調達できるということは、貸す側が「この会社はきちんとお金を返してくれる」と事業法人に対して判断しているからでしょう。

資金調達方法の違いを別の側面から考察しましょう。

増資で株主資本を増やすのと、借り入れ等で負債を増やすのとではバランスシートへ与える影響が違います。

負債を増やすということは(資本+負債)/(資本)で計算される財務レバレッジが上がることになります。

ROE(株主資本利益率)を3つの要素に分解するデュポンシステムではROEが以下の式で示されます。

ROE=財務レバレッジ × 資産回転率 × 売上高利益率

3つの要素のかけ合わせですから、ほかの2つの要素が変わらないのであれば、財務レバレッジの上昇はROEの上昇につながります。

増資は財務レバレッジを低下させるだけでなく、1株利益の希薄化につながることが多いので、結果として少なくとも短期的には株価の下落要因になりがちですが、借り入れは、財務レバレッジが好転することでROEの向上が見込まれるようであれば、株価にとってはポジティブな場合もあると考えられます。

概して、日本の上場企業はバランスシートの資本の部に相当する部分の「内部留保」が多いと言われていました。

それは時に、資本を有効活用していないとネガティブにとらえられるのですが、マーケットが不安定な状況に置かれると、その「内部留保」はポジティブな評価を得ます。

十分な内部留保があるからこそ、負債での資金調達が可能であるとも言えそうです。

しかしながら、借りたお金は返済しなければならず、返済するためにはお金を稼がなければいけません。

そのためにはすでに保有している設備等を有効活用することが求められるのに、フルオペレーションの状態に至るまでには時間がかかる、あるいは古オペレーションにならないこともありそうです。

リーマンショックから日本経済が立ち直るために要した時間は、途中東日本大震災があったこともあり4年ぐらいかかりました。

今回のコロナショックは全世界規模で影響があり、日本企業といえどもサプライチェーン網が世界中に張り巡らされている今日では、経済活動の復旧には時間がかかることも予想されます。

負債による資金調達を行った企業については今後の業績推移を見守ることが必要そうです。

業績を見る時のポイントは「現金を稼げているか」でしょうか。

借り換えでもしない限り、借りたお金を返すためには現金が必要です。

営業キャッシュフローには注目してください。

フリーレポート配信

このレポートでは、パンデミック時に生じる需要増の恩恵を受けるだけでなく、長期的な成長性のある優良株に注目してみます。

コロナウイルス関連銘柄10選」はこちらからご覧ください。(メールアドレスの登録が必要です)

また、ツイッターやフェイスブックで最新情報を配信しております。

公式ツイッターアカウント公式フェイスブックアカウントをフォローする。

免責事項と開示事項 記事の作者、おせちーずは、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

最新記事