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逆オイルショックと言える今こそ知りたい原油投資

コロナウィルスにより世界経済が不安に揺れ動く最中にありますが、もう1つ懸念事項があります。

それが止まらない原油価格の下落です。

4月20日にはWTI原油先物(5月限)が1バレル当たり55.9ドルも下がる大暴落によって、先物価格(マイナス37.6ドル)が歴史上初めてマイナス圏へと突入しました。

引き金となった要因は、世界経済が停滞して経済的な交流が最小限に抑えられた世界において、原油は供給過剰となったからです。

その結果、保管場所がなくなったことで原油が投げ売りされる事態へと繋がりました。

本来、原油の下落は資源の輸入国である日本・米国・欧州の景気や企業業績にはプラス材料のはずですが、急激な下落は事情が異なり、こうした国々にも悪影響が及ぶ「逆オイルショック」と呼ばれる現象が起こります。

なぜなら、以下のような理由が挙げられるからです。

  • 総合商社など資源権益を持つ企業の巨額損失が発生すること。
  • 石油精製業は70日分の原油備蓄義務がある為、急激な下落により在庫評価損が発生すること。
  • 原油収入が減少した中東産油国が補填のために保有株式の売却が増加すること。

こうした要因が懸念材料となり、原油が世界経済の火種になることが懸念されています。

今回は「原油相場」にはどのような種類があるのか、そもそも原油とは何かについて、詳しく解説していきます。

そもそも原油って何?

そもそも原油は算出される地域によって品質が大きく異なります。

特に重要視されるのが「油の重さ」です。

API(米国石油協会)は水と同じ単位を「10度」と定めて、数値が高いものを「軽質」、数値が低いものを「重質」と分類し、これを「API度数」と呼んでいます。

ちなみに一番質が高いものが米国で算出されるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)です。

その他の分類方法としては「硫黄」が原油に含まれている量で分類されます。

石油を精製する過程で脱硫黄処理は欠かせず、含有量が少ないほど質が高くなります。

硫黄濃度の基準0.5%よりも高いものを「サワー原油」、低いものを「スイート原油」と呼んで(実際、ほのかに甘い匂いがする)分類しています。

原油先物3つの種類(WTI、ブレンド原油、中東原油)

  • WTI…語源は「West Texas Intermediate」の略称で、西テキサスのミッドランドで産出されます。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場している、世界の原油価格のベンチマーク的な存在です。
  • ブレンド原油…欧州を代表する原油先物としてインターコンチネンタル取引所( ICE)に上場しています。湯質としてはWTI原油と中東原油の間に位置し、値段も中間を推移しています。
  • 中東原油…アジアの原油先物のベンチマーク的存在が東京商品取引所(TOCOM)に上場している「中東産原油」です。この価格がドバイとオマーンの原油平均価格を指標としています。

なぜ米国の原油先物が世界指標なのか

実はWTI原油の産出量は1日に約40万バレル程度に過ぎません。

米国は石油を毎日約2500万バレル消費すると言われており、産出量から見ればほんの僅かな量に過ぎません。

ではなぜWTI原油が世界的な原油価格指標として市場に意識されているのかというと、いくつか要因があります。

まず第一に米国が世界最大の石油消費国である一方、世界最大の輸入国であるということです。

実際、米国のエネルギー消費量は世界全体の約4分の1相当であり、米国内の需要と供給のベースが強固であることから大きな市場を形成しています。

またアジアや欧州よりも原油市場の歴史が古く、マーケットが成熟していることに加えて、他の産地でとれる原油よりも良質なので、安定して高価格で取引されていることも大きな要因です。

原油に投資できる国内外ETF

実際に原油への投資をする方法としては、商品先物、石油関連株、CFD(差金決済取引)など様々な方法がありますが、ETFは自由に売買できることに加えて、少額かつ低コストで投資ができるので、原油投資のなかで原油ETFは投資を始めやすいはずです。

今回は国内外の原油ETFについてみていきましょう。

国内ETFの種類

WTI原油価格連動型上場投信(1671)

WTI原油先物をベンチマークしており、執筆時点の純資産約886億円と国内では最大の原油ETFです。

信託報酬0.85%(税抜)と原油ETFの中では高い為、あくまでも短期売買向きETFといえるでしょう。最低購入単位は1口から購入可能です。

NOMURA原油インデックス連動型上場投資(1699)

野村證券金融工学センターが算出しているNOMURA原油インデックスをベンチマークしたETFですが、商品の中身はWTIと変わりません。

執筆時点での純資産約639億円、信託報酬0.5%(税抜)と原油ETFのなかでは低コストであり、中期的な保有にも向いています。最低購入単位は10口から購入可能です。

ETFS原油上場投資信託(1690)

DJ-UBSCI原油商品指数といって、商品市場のなかでも原油セクターに連動するように設計されています。

その中身は他のETFと異なり、イギリス領ジャージーの会社法に基づいて外国投資法人が発行している為、欧州などにも上場されているETFです。

信託報酬は0.49%(税抜)と低く設定されていますが、出来高が低いため投資には注意が必要です。最低購入単位は10口から購入可能です。

レバレッジ・インバース型

NEXT NOTES日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN(2038)

原油価格の2倍の値動きをするように設計されたレバレッジ商品です。

原油が1%上昇すれば2%上昇し、原油が1%下落すれば2%下落します。最低購入単位は1口です。

NEXT NOTES日経・TOCOM原油ベアETN(2039)

原油価格の反対の値動きをするように設計されたインバース商品です。

原油が1%上昇すれば1%下落し、原油が1%下落したら1%上昇するように設計されています。

主に値下がり局面で空売りを仕掛けるトレーダー向きの銘柄といえるでしょう。最低購入単位は1口です。

海外ETFの種類

ユナイテッド・ステーツ・オイル・ファンドWTI原油連動ETF(USO)

ニューヨーク証券取引所に上場されており、原油ETFとしては世界最大級です。

WTI原油先物価格に連動するように設計されています。執筆時点での価格は21.47ドルです。

エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE)

S&Pエネルギー・セレクト・セクター指数と連動するように設計されています。

銘柄数は28社で構成されており、石油メジャーのエクソン・モービルとシェプロンの2社で全体の40%を占めています。

執筆時点での価格は38.78ドルです。配当利回り6.19%と高利回りであることも大きな特徴です。

原油ETFの注意点

原油投資は現物投資であることを忘れてはなりません。

例えば株式投資の場合、右肩上がりで成長を続ける優良企業を初期の段階から保有していたとすると、将来的に何十倍、何百倍のリターンを得ることも不可能ではありません。

しかし原油はあくまでもコモディティであり、株式ほどのリターンは期待できない投資セクターです。

その為、長期間の保有ではなく、あくまでも短期から中期の投資であることを意識しておきましょう。

レバレッジを上手に活用できれば大きな利益を得られることも魅力ですが、常にリスクがあることも忘れてはなりません。

CFD取引

CFD取引とは差金決済取引のことです。

例えば取引を開始して終了した時点での差額分を決済する取引ですが、投資金を外貨に交換する必要がなく、レバレッジ取引(最大5倍)が可能です。

つまり利益も損失も通常取引の何倍にも大きくなる可能性があります。あくまでリスクコントロールできるプロ向きの取引と捉えたほうが賢明でしょう。

まとめ 逆オイルショックは世界経済の新たな火種になるのか?

原油の下落が世界経済にどこまで影響するのか判断するのは難しいものの、短期で見た場合の金融市場への影響力はとてつもなく大きいはずです。

また今のような原油安が長引くと、産油国が多数存在する中東諸国の政情が不安定になる可能性も否定できないでしょう。

国際通貨基金(IMF)の発表では、国の財政収支が均衡するにはサウジアラビアが1バレル83ドル台、ロシアが43ドル台とのことで、現状の原油安は主要産油国の財政では支えきれなくなります。

この現状が長引けば世界経済が悪化する材料が大きくなるため、サウジアラビア、ロシア、米国の3カ国で何らかの妥協点を見出す方向になるのか、その動向にしばらく注視することになりそうです。

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免責事項と開示事項 記事の作者、鈴木林太郎は、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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