The Motley Fool

フェラーリの財務を車検。現在の株価は割安か

出典:Getty Images

フェラーリ(NYSE:RACE)は言わずと知れた世界的スーパーカーメーカーです。

2015年に60ドルの初値を付けてニューヨーク証券取引所に新規上場(IPO)して以来、高いブランド力を背景にした収益力で投資家の人気を集め、コロナショック直前に上場来高値180.95ドルを付けました。

現在は150ドル前後で推移しています。

果たしてフェラーリは「割安」と言えるのでしょうか。財務面から解説したいと思います。

ROEは49%と驚異的水準

手始めに株主資本利益率(ROE)を見てみましょう。

ROEは、株主に帰属する財産(純資産+株主還元)を1年間の事業活動でどれだけ増やしたかを表します。

この値が高いほど、株主の財産が増えるスピードが速いということです。

日本の代表的な自動車会社トヨタ自動車のROEは12.5%(直近決算ベース)。

世界の自動車メーカーの平均は10%強のため、トヨタが株主の財産を増やすスピードは速い方と言えますが、フェラーリはなんと49.2%。

1年間で、株主の財産を5割近く増やす驚異的な収益力です。

ROEを高める王道は、売上高純利益率を高めることです。

純利益率は、フェラーリが18.5%、トヨタ自動車は8.1%です。

利益率は、競争力の代理変数です。利益率が高いということは、高い値段を顧客に出させる何らかの競争力があるということであり、それは技術力であったり、希少性であったり、ブランド力であったりします。

ブランド力はどこからやってくるのか

言うまでもなくフェラーリには圧倒的なブランド力があります。

フェラーリ1台の原価率はおよそ50%です。

すなわち、部品コストや工場労働者の人件費などを差し引いて50%の利益が残る価格でフェラーリを売っています。

トヨタの原価率は約80%であり、残る利益は20%です。

言い換えると、フェラーリの粗利率は50%、トヨタの粗利率は20%ということです。

フェラーリの高いブランド力はどこから来るのでしょうか。

もちろん一言では言えませんが、決算書から読み取れるブランド力発生のシステムを探ってみます。

トヨタ自動車の研究開発(R&D)費用は売上高の3.7%です。

一方で、フェラーリは18.6%と、ずいぶん高い比率をR&Dに投じています。

大きな要因は、売り上げ規模が小さいのにF1に参戦しているからです。F1はエンジン開発などに莫大なお金がかかります。

R&Dコストは、販管費に入るため営業利益の変動要因です。

フェラーリの営業利益率は24.4%、トヨタは8.5%なので、粗利率よりは差が縮まります。

それだけフェラーリがR&Dにコストをかけているということです。

これこそが「スーパーカーと言えばフェラーリ」というブランド力を生んでいると言えます。

言い換えると、R&Dにコストをかけることで粗利率を高めていると言えます。

やや乱暴な言い方をすれば、フェラーリはR&Dに金をかけブランドを売り、トヨタは部品に金をかけて質を売っているとも言えます。

2020年発売のRoma

参考:フェラーリ公式ページ メディア向けギャラリーより

安定した販売台数

もちろん、フェラーリの戦略にはリスクも伴います。

R&Dは部品と異なり、自動車販売が減ったからと言って自動的にコストが下がるわけではありません。つまり固定費です。

R&Dを無理やり減らすこともできますが、技術者が離れ蓄積が断絶する恐れは十分あります。

ブランド力向上が粗利率を高めるというサイクルが回らなくなってしまいます。

事実、フェラーリは巨額のR&D費用で1960年代に経営が傾き、2015年のIPOまでは現在のフィアット・クライスラー・オートモービルズの子会社でした。

フェラーリが高い収益力を維持するには、販売台数を持続する必要があります。

フェラーリはアニュアルリポートで面白いグラフを示しています。

このグラフでは、2008年~2010年の米金融危機をきっかけとしたリセッション時を含め、フェラーリが安定した販売を維持していることが分かります。

フェラーリの販売台数(赤色、左軸)と高級車全体の販売台数(黒色、右軸)

参考:Ferrari annualreport2019

フェラーリのブランド力は、あえて需要よりも生産を抑えて希少性を保つことで維持されている側面があります。

これは同時に、そもそも生産台数が少ないため、販売台数が景気に左右されにくいことにもつながっています。

フェラーリの生産台数は2019年でわずか1万台。欲しい富豪が世界にはたくさんいて、新車はほぼ予約で完売するのがフェラーリです。

「研究開発によるブランド力の発生→生産抑制によるブランド力の維持→高い収益性による研究開発原資の拡大」というビジネスモデルが駆動しているわけです。

コロナで工場は停止

コロナで問題になっているのは、マーケットというよりもむしろ生産の方です。

イタリアでは新型コロナの感染者が広がり、フェラーリは同国2工場で3月14日から生産を一時停止しています。

再開は4月14日の予定ですが、実現するかは分かりません。

フェラーリの損益分岐点売上高は年間ベースで2200億円程度とみられます。これは2019年の売上高のほぼ半分です。

売上高が半減しなければフェラーリは営業赤字に陥らないという強固な収益基盤を持っています。

経営陣は生産再開に関する発表の中で「当社のブランド資産、強固なバランスシートとビジネスモデルは一次的な不確実性を乗り越え、すべてのステークホルダーに価値をもたらし続けると確信する」と述べています。

コロナウイルスによりフェラーリのブランド価値が落ちるわけではないため、経営陣の自信にあふれた見通しもあながち大げさではないと思います。

現在、フェラーリに横たわっているのは生産上(供給)の問題であり、マーケット(需要)の問題ではないと思われます。

生産が再開すれば、フェラーリのビジネスモデルは再び回り始める可能性は高いでしょう。

ビジネスモデル上、広くあまねく年間1000万台を売るトヨタと異なり、失業の増加など景気の影響は受けにくく、販売回復は早い可能性が高いと思われます。

今後1年~2年程度のうちに短期的なリバウンドは期待できると思います。

NASDAQウェブサイトによると、4人のアナリストの目標株価は163ドル~205ドル。平均は179ドルです。

むしろ10年単位の長期的保有に伴うリスクの方が心配です。

フェラーリはもともと年間生産を7000台にとどめる経営方針でした。

しかし、2018年に中期経営計画を公表。事実上、生産台数を引き上げる方針を示し、実際に2019年には1万台を超えました。

2022年にはSUVも投入する予定です。数を追う理由はR&D費の増加。環境対応やIT化など自動車を取り巻く構造転換への対応です。

生産台数増加という難題

もちろん、フェラーリに自動運転が導入されるとは思いません。

フェラーリに求められている付加価値はそこではないでしょう。

しかし環境対応は必要で、フェラーリも販売台数の6割をハイブリッド車にする予定です。R&Dの負担が増すことは確かです。

これを台数の増加でカバーする計画です。

ブランドを守りながら生産台数を増やしてR&D費をねん出しつつも増益を維持するという難しい期間がしばらく続きます。

生産台数の上乗せが数千台レベルとしても、高級車の市場が年4万台ほどであることを考えると、影響は小さくないかもしれません。

R&D費用が想定以上にかさむ可能性もあります。

フェラーリの株価純資産倍率(PBR)は15.2倍。

自動車業界の平均は1.5倍なので、非常に高いバリュエーションと言えます。

フェラーリの株価のうち、純資産で説明できない「見えない資産」が93%含まれているということです。

これがブランド価値ということでしょう。ブランドは、高い利益率というパスを通って将来の収益になります。

株主の財産になる純資産+株主還元を1年後に5割増やしてくれるという高い収益力が期待となって株価に表れています。

環境対応という構造変化の中で、たくさんの将来収益を株価に含んでいるという点では、リスクもそれなりに含んでいるということです。

フリーレポート配信

優良企業30社で構成されるダウ平均株価は、1世紀以上にわたり世界中でフォローされています。ダウ構成銘柄の長年の良好なパフォーマンスを考えると、市場参加者が注目するのはごく自然なことで、最近はこれから紹介するダウ4銘柄が注目されています。

著名投資家も注目の優良大型株4銘柄」はこちらからご覧ください。(メールアドレスの登録が必要です)

また、ツイッターやフェイスブックで最新情報を配信しております。

公式ツイッターアカウント公式フェイスブックアカウントをフォローする。

また、公式LINEアカウントの方では、投資初心者向けの情報を発信しています。
友だち追加

免責事項と開示事項 記事の作者、大竹典は記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

最新記事