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中国企業のM&A攻勢を契機にドイツ経済は保護主義に傾き始めた

日本のバブル景気の時期、日本企業は多くの欧米の企業を買収しました。

現在、これと同じようなことが起こっています。

つまり、バブル期にある中国の企業は、海外の多数の企業を買収しています。

ヨーロッパでも、中国の一帯一路政策との関連で、中国企業による多数の企業買収(M&A)が行われています。

特に注目するべきはEUにおける最も重要な経済圏を有するドイツです。

今回の多数の買収と日本のバブル期のそれと異なる点は、日本やドイツは民主主義国でかつ自由経済である一方で、中国は共産主義で企業は政府により保護されているという点です。

つまり、ドイツ企業が中国企業を買収できないので不公平な状況になっています。

さらに、国のインフラや主要産業を担っている企業が買収される事態になりました。

そこで、ドイツ政府は技術流出などを防ぐため、自国の企業を保護する方向へ動き始めました。

この記事では、中国企業による多数のドイツ企業の買収やドイツ政府の対応について解説します。

中国企業による多数のドイツ企業買収の概況

中国企業は世界中に進出して多くの企業を買収しています。

ヨーロッパでも同様に、多くの企業が中国企業に買収されています。

ドイツにおいては、例えば生活家電の製造および販売を行っている中国のMidea(ミデア)グループが、工場用ロボットを主に提供しているKUKA(KU2)を2017年に買収しました。

産業用ロボットのシェア世界2位の企業であるKUKAは、ドイツ経済を支える重要な企業です。

そのような大企業が買収されたため、ドイツ国内では大ニュースとなりました。

これをきっかけに何か対策をしないとKUKAだけでなくドイツのインフラを支える企業も買収されてしまうのではないか懸念されました。

その予感は的中し、その後ドイツの送電企業や飛行機などに使われる金属部品を提供している企業が、中国企業により買収されかけました。

 MideaグループによるKUKAの企業買収

ここでは、中国企業によるドイツ企業の買収の代表的な例として、MideaグループによるKUKAの買収について詳しく解説していきます。

KUKAとは

1898年に創業。

1970年代から本格的に産業用ロボットの分野へ進出しました。

1973年、KUKAは世界初の産業用ロボットであるFAMULUSの販売を開始しました。

その後、産業用ロボットの世界でのシェアを拡大し、ABB、ファナック、安川電気と並ぶ世界4大産業用ロボットメーカーの一つになるまで成長しました。

ロボットは、主に自動車産業へ販売されており、自動車の組み立てに使われています。

また、近年、KUKAは独自のIoTシステムを構築し提供しています。

MideaがKUKAを買収

2016年6月、KUKAへの出資金を少しずつ増やしていったMideaグループが、KUKAに対して企業買収の提案を持ちかけました。

Mideaグループは冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの様々な生活家電製品の製造と販売を行っており、その分野では中国の中で最も大きい企業です。

200以上の国で生活家電製品の製造と販売を行っています。

KUKAの買収以前に、Mideaグループは東芝の家電部門、イタリアのエアコンメーカーClivet社、掃除機の製造・販売を行っている北米のEureka社などを買収しました。

Mideaグループからの買収提案の中には、2023年までにKUKAの取締役会や経営権の独立性の保証、KUKAブランドの保護などが含まれていました。

結局、2017年にKUKAはMideaグループの傘下に入ってしまいました。

当時のロイターCEOは、巨大なマーケットである中国での販売路拡大などのメリットがあり、それらはKUKAの成長につながるwwoと考えていました。

実際に、MideaグループとKUKAのジョイントベンチャーを中国で立ち上げましが、その後KUKAの業績は悪化し、ロイターCEOは辞任しました。

Mideaグループは産業用ロボットについては素人でしたので、企業同士の相性があまり良くなかったのかもしれません。

中国企業による大量のドイツ企業買収に対するドイツ政府の対応

KUKA以前にも中国企業によるドイツ企業の買収事例がありました。

しかし、今回の企業買収については、ドイツ国内を騒がす事態となりました。

大規模な買収額(45億ユーロ(約5400億円))だけでなく、企業買収により重要な技術が国外へ流出するかもしれないと懸念されたのが理由です。

KUKAはドイツの主要産業である自動車メーカーに産業用ロボットを提供しているため、ドイツ経済の最も重要なセクターであるドイツの自動車メーカーにも影響が及ぶのではないかとも懸念されました。

2023年までKUKAの経営権の独立性は保たれますが、それ以降はどのようになるのか不透明です。

そこで、ドイツ政府も動きました。

中国企業は中国政府から守られているため、海外の企業が中国企業を買収することは実質的にはできません。

ところが、ドイツは自由経済でかつ民主主義国なので企業はプライベートであればドイツ政府から守られていません。

これでは公平とは言えないでしょう。

そこで、ドイツ政府は2017年に、EU圏外の外国企業によるドイツ企業の株式保有は全体の25%までとする法案を通しました。

必要があればドイツ政府は20%あるいは15%に引き下げることができます。

対象の企業は公的秩序に関わるもので、電気あるいは通信を制御するソフトウェアを作製している企業、銀行、病院、空港、鉄道駅、水道、発電所が含まれます。

その後、中国企業の企業買収攻勢は止むことなく、ドイツの送電事業者である50Hertzが中国の国有送電企業により買収されかけました。

しかし、ドイツの国有開発銀行であるKfWが50Hertzの20%の株を取得することによりその買収は阻止されました。

世界は保護主義へ傾いているのか

フランス、イギリス、イタリアなどでも、自国の重要な企業を中国企業による企業買収から保護する方向に動いています。

グローバリゼーションから保護主義へと逆戻りしているように見えますが、国家を守るという点で一定の合理性があります。

今回の事態は、自国の企業を手厚く保護している巨大な共産国家が、自由主義経済を有する民主主義国家へ進出するという今までにない現象で、各国はその新しい事態に適応している段階です。

経済を成長させていくにはグローバリゼーションは必須なので、各々の民主主義国が今後どのように国家の保護とグローバリゼーションの折り合いをつけていくかがポイントです。

今後の経済や株式市場への影響

中国企業による多数のヨーロッパ企業の買収とは、つまり資本が中国からヨーロッパに注入されているということです。

2008年のリーマンショックからまだ立ち直れていないEUにとっては、決して悪いことではないでしょう。

例えば、いくらかのヨーロッパ企業は中国企業による買収により、中国市場へ進出しやすくなるので急成長する可能性があります。

また、それによりヨーロッパの株式市場にもいい影響を与える可能性があります。

しかし、インフラに関わる大手企業の買収や技術流出の可能性が出てくるとなると話は別です。

その場合、国を守るためには政府が何らかの対処をする必要があります。

ヨーロッパの株などに投資を検討される際は、それらの点に気をつけることをおすすめします。


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