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アメリカとイランの対立悪化による世界経済への影響を解説

2019年はアメリカと中国の貿易戦争やイギリスのEU離脱など、世界経済に大きな影響を与えかねない対立やトラブルが続きました。

2020年になっても火種は治まるどころか、別の場所で起こりつつあります。

新年に入り、それまで対立関係にあったアメリカとイランの関係性が悪化し、世界中が注視する状況となりました。

どちらも日本から遠く離れた国ですが、経済で繋がっており、関係がさらに悪化すれば日本にも大きな影響が予想されます。

今回はアメリカとイランの対立が深刻化することで、世界経済にどのような悪影響を生む恐れがあるのか解説します。

また、イランという国がどんな国で、他の国に対してどれだけの影響力があるのかも併せて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

イランという国

アメリカとイランの対立がどのような悪影響を与えるのか解説する前に、イランという国がどのような国なのか、経済と地理の両方から解説します。

イランの経済

イランは正式にはイラン・イスラム共和国と呼びます。

人口は2017年時点で8千万人もおり、中東では2番目に大きな国となっています。

主な産業は石油で、2018年には約2.2億トンの石油を生産し各国に輸出しており、主要石油輸出国の一つです。

しかしながら、経済は石油関連の産業に依存している面が大きく、慢性的な財政赤字により年率20%以上のインフレーションが起きるなど、国内の経済は安定しているとは言えません。

そのため、石油産業依存からの脱却を目指し、自動車製造や航空宇宙産業、家電、核技術など様々な分野への投資を行っています。

まだ、これらの投資に対するリターンは望めませんが、首都であるテヘランは近代化が進み、人口が1300万人を超える大都市へと成長しました。

イランの地理

イランは地政学的に見ると、非常に厄介な場所にある国となります。

西はトルコとイラクに、東はアフガニスタンとパキスタンに隣接しており、南北は海に囲まれておりユーラシアと西アジアの中心に位置しています。

イランの南にあるホルムズ海峡は、周辺国で産出される石油の重要な出入り口です。

毎日1700万バレルの石油を無数のタンカーが運び出している重要な海路ですが、非常に狭い海峡なのがネックです。

地図上だと入り口が大陸で塞がっているかのように見えるほど狭い海峡なため、船舶の衝突を避けるために航行出入りレーンが設定されているほどです。

アメリカとイランの対立が激化すると、世界経済に大きな影響を与える理由は、このホルムズ海峡が原因の一つとされています。

イランが世界に与える影響力

経済の面で見ると、イランが世界に与える影響力で最も大きいのが、ホルムズ海峡に最も近い場所にある国であるということです。

ホルムズ海峡を経由して運ばれる石油は膨大で、主に中国やインド、韓国などのアジア諸国に運ばれます。

その中には当然日本も含まれており、日本の場合年間で輸入する石油の8割近くが、このホルムズ海峡を経由しています。

つまり、イランがホルムズ海峡を封鎖してしまえば、日本へ石油を安定して運び出すルートが途絶えてしまう恐れがあります。

アメリカとイランの対立

アメリカもホルムズ海峡を経由して石油を購入している国のため、イランに対するけん制としてアメリカ海軍をホルムズ海峡に派遣しています。

自国近海に軍船があるのをイラン側は快く思っておらず、イランも定期的に海峡で軍事演習を行い対抗しています。

もし、アメリカとイランの対立が激化して戦争となれば、真っ先に戦場となるのはこのホルムズ海峡が上げられます。

狭い海峡で戦争が起これば、民間のタンカーは近づくことができなくなり、結果としてホルムズ海峡が封鎖される事態となり世界経済に影響を与えます。

過去にあった事例

実際に、2019年6月に起きたホルムズ海峡タンカー攻撃事件によって、ホルムズ海峡が一時的に封鎖に近い状態となり、タンカーの往航が停滞しました。

この事件が起きる直前、石油の価格は65ドル以上あったのが、1カ月で50ドルを切るかもしれないほど下がっていました。

2019年6月は石油輸出機構が原油価格を安定させる為に協調減産を実施しており、その期限が6月末となっていました。

ですが、各国の話し合いがまとまらず、市場には不安定感が漂っており、価格が下落したのです。

ところが、ホルムズ海峡タンカー攻撃事件によって石油が安定して輸出できない可能性が出てくると、石油の枯渇を懸念した市場心理によって再び60ドルまで上昇しました。

過去には第4次中東戦争がきっかけとなり、オイルショックが発生し価格が70%も上がった事例は教科書に載るほどの衝撃でした。

当時の日本はニクソン・ショックと呼ばれる不景気から立ち直りつつあったのですが、このオイルショックによってインフレが過熱してしまい、経済が健全化するのに更に必要になりました。

日本は中東の政治情勢に今よりも介入していなかった時期でしたが、アメリカと強固な軍事関係を結んでいたことから、オイルショックの影響を受けてしまったのです。

このように、遠く離れた中東の出来事であっても、日本の経済に大きな影響を与える可能性は十分にあり得ます。

アメリカの狙い

アメリカがこうもイランと対立するのは、宗教的な問題や政治の思惑などが複雑に絡み合っており、単純に理由を付けるのは難しいです。

ですが、経済の面で言えば、アメリカがイランと対立するのは、自国の原油価格を吊り上げる狙いが含まれています。

実は、1日あたりの原油の生産量が多い国はアメリカ合衆国になります。

イランが1日約500万バレル生産するのに対して、アメリカは約1300万バレルも生産しており、資源大国であるサウジアラビアやロシアをも超えた資源大国となっています。

これほどまでにアメリカがリードしている理由として、シェールガス・シェールオイルの採掘技術が進化したのが上げられます。

1990年頃から採掘技術が発達し、低コストで採掘が出来る様になり、アメリカ国内にシェールガス・シェールオイルを含んだ頁岩層が広く分布していることから一気に採掘が始まったのです。

一部の専門家によれば、アメリカが近い将来自国のエネルギーを全て自国で賄えるほどの資源国家になるとさえ予想されています。

トランプ政権になってから中東に対する外交姿勢が変わり、経済制裁が厳しくなった背景には、中東に頼らなくても自国でエネルギーを確保できるようになったのが大きいです。

そうなると、アメリカは自国の原油を輸出して外貨を獲得しようと考えます。海を渡った先にある日本や中国を相手に輸出するには、ライバルとなるのが中東の石油になります。

アメリカが所有する原油を一度に放出すれば、需要と供給の関係から原油の価格が下がってしまいます。

そのため、イランがホルムズ海峡を封鎖して石油の輸出をストップすれば、原油の価格が上昇し、市場をアメリカが独占するということも不可能ではありません。

アメリカとイランが戦争をした場合の影響

アメリカとイランが戦争を始めた場合、日本経済が影響を受けるとしたらまずは株価です。

実際、イランのミサイル攻撃によって戦争が勃発するという危機感から、市場は全面的に売り注文となり、日経平均株価が午前中だけで600円も値下がりしました。

日本のみならずアジア圏の株式市場は軒並み下がったのも特徴的です。

現時点でホルムズ海峡を経由する原油がアジア諸国の経済活動を支えているのは疑う余地もなく、イランが戦争となれば最初に影響を受けるのがアジア諸国の可能性は高いです。

また、ヨーロッパの主な株式市場でもリスクを避けようとする動きが目立ちました。

時差の関係もあり、アジアの株式市場が値下がりした流れを受けて、主要国の市場が0.5%~0.7%下落したのです。

一方で原油価格は2000円以上の値上がりをし、2019年5月以来の高い水準を記録しました。

やはり、アメリカとイランが戦争をした場合は、原油の価格が急上昇するのは間違いありません。

まとめ

以上が、アメリカとイランの対立悪化による経済への影響の解説になります。

アメリカとイラン双方が発表を出し、即時開戦という状況は回避されましたが、予断を許さない状況は続いています。

2020年は大統領選挙を控えているため、トランプ政権の外交方針や経済戦略が大きく変わり、世界経済が混乱する可能性は十分にあります。

投資をする時は、余剰資金を使ってリスクを減らすように心がけましょう。


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