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【日本経済分析①】マクロ経済の仕組みを完全理解

投資家のみなさんは日本経済についてどのような見方をしていますか?

人によって見方は変わりますが、概ね悲観論が散見されるように思います。

日本経済は2013年から始まる量的・質的金融緩和(以下、QQE)の過程で、金融市場の歪みや銀行の収益低下などの副作用が深刻になり、早期の政策正常化を求める識者も多く表れており、今日の日本経済における現状になっていることは周知の事実です。

そこで今回は、日本株の投資戦略に繋がるように、2013年から始まる金融政策の軌跡と結果をまとめていきます。

そして、最後に統計的な手法を用いて日本経済の本質的な課題を考えていきます。

他にも、最近になって各経済メディアで取り上げられている「日本人の給料は上がらない」などの私たちの生活に深くかかわる問題や、日本株を分析する上で非常に重要なマクロ経済環境の構造的な問題を指摘してみます。

金融政策の変化

バブル崩壊後の1993年から2012年までの10年間、日本経済はデフレに陥りました(表1)。

(表1:総務省統計局より執筆者作成)

通常、金融政策における誘導目標の政策金利は短期金利(コールレート)になります。

バブル崩壊後の日本はコールレートを大幅に引き下げ金融緩和を図りましたが、それでも景気は回復しませんでした。

そこで当時の日銀総裁であった速水優氏は1999年2月の定例記者会見で政策金利を0%まで引き下げることを表明しました。

また、2001年3月には量的緩和も導入し、非伝統的金融政策は景気回復のためにより一層拡大され、金融政策の誘導目標はコールレートからマネタリーベースへと移り変わりました。

そのこと(金融政策の変化)を以下の表2で確認してみましょう。

(表2:短期金利・日銀当座預金は日本銀行より、実質GDPは内閣府より執筆者作成)

表2から金融政策が「短期金利の操作」から「マネタリーベース(日銀当座預金)の操作」へと移り変わっていく様子がうかがえます。

また、その時の経済成長(実質GDP)も同時に確認できます。

一般に「短期金利の操作」を伝統的金融政策と呼び、「マネタリーベースの操作」を非伝統的金融政策と呼ぶのですが、なぜ「伝統的な」政策から「伝統的ではない」政策に移り変わったのでしょうか?

金融政策のメカニズム

以下では、金融政策の根拠を理論的に分かりやすく説明します。

伝統的金融政策とは?

伝統的金融政策とは日銀が短期金利を操作し、長期金利を上下させることで実体経済(GDPや物価)にその効果を波及させようという政策を指します。

具体的には、長期金利は銀行の貸出金利や株価等の資産価格に波及し、それらは企業の設備投資や家計・個人の消費行動を促進させ、GDPやインフレ率に影響を与えるのです。

つまり、伝統的金融政策は以下のようなメカニズムを想定しています。

非伝統的金融政策とは?

しかし、2000年前後の日本ではアジア通貨危機やITバブル崩壊によるさらなる景気後退に対処するためゼロ金利政策や量的緩和といった非伝統的金融政策を導入しました。

非伝統的金融政策は具体的に「政策金利のフォワードガイダンス」、「資産買い入れ」、「資産買い入れのフォワードガイダンス」の3つがあります。

ちなみに上述した「マネタリーベースの拡大」は「資産買い入れ」にあたります。

①政策金利のフォワードガイダンス

日銀が将来(フォワード)の政策金利(短期金利)について発言(ガイダンス)することで、投資家や消費者が将来の金利を予測し行動するので長期金利に上下圧力がかかる(期待理論)というものです。

長期金利は以下の期待理論で決定されます。

そのうえで、日銀は以下のようなメカニズムを想定します。

このようにして非伝統的金融政策は長期金利に波及していきます。

②資産買い入れ

日銀が長期国債を購入することで国債価格が上昇しリスクプレミアム(国債の危険性)が低下することで長期金利が低下するというメカニズムになっています。

上の期待理論から分かるように、長期金利はリスクプレミアムでも決定されます。

つまり、(長期金利とは10年国債利回りのことなので)国債を政府が購入することで、デフォルトするリスク(リスクプレミアム)は低下し、その結果、長期金利が低下するのです。

③資産買い入れのフォワードガイダンス

①と②が合わさった考え方なのですが、長期金利のリスクプレミアムを上下させる効果を持っています。

このように伝統的金融政策は「短期金利」、非伝統的金融政策は「長期金利」を直接操作するものなのです。

つまり、短期金利を操作して間接的に長期金利を操作したいけど、短期金利が0%まで下がって、これ以上下げられないので、直接的に長期金利を操作すればいいのではないかという発想になっています。

まとめ:今の金融政策は「長期金利の操作」

このように、現在行われている日本の金融政策は非伝統的金融政策と呼ばれるもので、従来の「短期金利を操作する」政策とは違い、「長期金利を操作する」政策になっています。

この点が、“非伝統的“なのです。

では、実際の日本経済はどのように変わったのでしょうか?

次の第2弾では、2013年から始まる黒田日銀の政策と結果を概観するとともに、金融政策の背後にある理論や「なぜ私たちの給料は上がらないのか」を取り上げていきます。

【日本経済分析②】日本人の給料が上がらないワケ ~逆ケインズ問題~


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