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なぜ「リブラ」が注目されるのか。2020年はデジタル通貨元年になるか

2019年6月に米国IT企業フェイスブックからデジタル通貨である「リブラ」が発表されました。

発表当初は2020年前半にローンチする予定でしたが、2019年10月23日にローンチの延期が決まりました。

米国政府だけでなく欧州、日本等の先進国中銀からリブラに対する多くの懸念が叫ばれ、ローンチが難航している間に中国政府はデジタル人民元の「設計、標準策定、機能研究は終えた」との通達がありました(2019年12初旬現在)。

2020年を目途にいくつかの中銀がデジタル通貨のテスト運用を始める可能性が高まっていますが、そもそもデジタル通貨が市場に流通することでどのようなイノベーションが起きるのでしょうか。

結論から説明すると、デジタル通貨は主に国際送金システムにイノベーションを起こすもので、その他にも利用可能性は広がっていきます。

つまり、デジタル通貨の普及は特に銀行株への影響が大きく、その他にもIT関連株やフィンテック株などに直接的な影響があると見込まれるのです。

そこで今回は、「そもそもなぜリブラをはじめとしたデジタル通貨が発行されるのか」ということや「各国中銀や民間銀行からの懸念」を解説していき、金融銘柄やIT銘柄などへの影響を考えていきます。

なぜリブラが作られたのか

  • 国際的な送金の高速化
  • 国際的な送金の低コスト化
  • 国際的な送金の簡素化

以上の3つがリブラが作られた直接的な理由です。

以下ではリブラが作られた理由を具体的に解説していきます。

国際的な送金の高速化

現状の国際送金は、お金を送金して相手に振り込まれるまでに約1週間程度のタイムラグがあります。

また、世界銀行のデータによると2017年の個人での国際送金利用額は年間約5733億ドルにのぼり世界中で国際送金の利用が高まっているのです。

テクノロジーの進歩によってあらゆる面でグローバル化が進んでいるため、今後はより国際送金のニーズが高まってくるでしょう。

そこで、リブラはデジタル通貨を使って国際的な送金を瞬時に行うことを実現しているのです。

国際的な送金の低コスト化

国際送金はユーザーにとってかなりコスト(銀行からの手数料)がかかるのです。

例えば、国際送金でなくても日本国内では他者への送金において(3大メガバンクにおいて)1回220円(送金金額3万円未満)の手数料がかかります。

これは、銀行が送金に使っている全銀システム(全国銀行資金決済ネットワークが運営)を維持するために各金融機関(約1200の金融機関が加盟)が資金を出し合っているのですが、その資金を送金手数料に転嫁しているため、どうしても送金手数料が高くなるのです。

1回の送金で220円の手数料が発生することに割高感を感じない人もいるかもしれませんが、預金金利が大手行で0.001%であることを考えると明らかに送金手数料は割高といえるでしょう。

また、国際送金となるとさらにユーザーは多くのコストを支払うことになります。

国内の銀行から海外の銀行に送金する際、「海外送金手数料」、「関係銀行手数料」、「円為替取扱手数料」の3重の手数料がかかります。

つまり、1回の送金で約1万円の手数料がかかることになり、現状では送金コストを抑える手段はないのです。

このようなユーザー側の不満に応えるべくリブラは、デジタル通貨を使って送金手数料をゼロ近くまで抑えることができると期待されているのです。

国際的な送金の簡素化

リブラはフェイスブックのメッセンジャー機能を介して低コストかつ瞬時に送金を実現でき、さらに他者にメッセージを送るように、お金も簡単に送ることを実現しているのです。

また、銀行口座を持つ必要もなく、世界中の銀行口座を持たない約17億人やフェイスブックユーザーである約27億人に対して親和性の高い国際送金サービスを提供できます。

リブラが各国政府から懸念される理由

  • 国際的な犯罪の温床になる
  • 中央銀行・民間銀行の存在価値がなくなる可能性

以上の2つが主なリブラへの懸念点です。

以下ではリブラへの懸念点を具体的に解説していきます。

国際的な犯罪の温床になる

ここで言う“犯罪“とはマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金調達、キャピタルフライト(タックスヘイブンへの資金移動)のことを指します。

マネーロンダリングは毎年1.5兆ドル規模で行われており喫緊の課題であることは確かです。また、キャピタルフライトについても米トランプ大統領が懸念しており、現米国政権下ではリブラは実現しにくいでしょう。

リブラをはじめとするデジタル通貨は、このような犯罪に使われることがないように十分配慮された設計になって初めて実現するのです。

また、米ムニューシン財務長官は2019年12月5日、「フェイスブックがデジタル通貨を作りたいならそれで構わない」と発言しており、さらにアンチマネーロンダリング規制を「完全に遵守する必要がある」と述べています。

つまり、リブラに概ね賛成する識者もマネーロンダリング対策は絶対条件としているのです。

中央銀行・民間銀行の存在価値がなくなる可能性

欧州と日本において数年前からデジタル通貨の必要性が浮上していました。

というのは、欧州と日本では慢性的な物価の低下が問題になっており、その対策としてマイナス金利まで踏み込んだ金融政策を実施しています。

今となってはマイナス金利の効果については疑問の声が上がっており、むしろデジタル通貨を導入して金融政策の効果が出るスピードを速くすべきではないかという意見が経済学者の間で話題になっていました。

つまり、リブラが銀行口座を持たない世界中の約14億人やフェイスブックユーザーである約27億人に対してデジタル通貨を普及させると世界中の金融政策をフェイスブックが担うことになるのです。

また、リブラは既存の民間銀行にとっても嬉しいものではありません。

上述したように、リブラは国際送金サービスで特に実力を発揮します。

となると、銀行の業務である一分野がリブラにとって代わられ、グーグルのようなIT企業も続々と金融業界に参入し銀行業務を開始しようとしています。

つまり、国際送金サービスという面で民間銀行は力を発揮できなくなるのです。

2020年はデジタル通貨元年になる可能性

2019年10月23日にリブラの発行は延期されました(当初は2020年前半に発行予定でした)。

ただ、フェイスブックのCEOのあるマーク・ザッカーバーグ氏は7月に「(デジタル通貨の発行は)我々がやらなくても誰かがやる」と発言しており、つまり中国がデジタル人民元を発行して世界の金融インフラを席巻してしまうことを指しているのです。

中国のデジタル人民元の開発は進んでおり、2019年12月初旬に「設計、標準策定、機能研究は終えた」との通達がありました。

また11月末にビットコイン等の暗号資産について取引の禁止も表明しており、中国国内ではデジタル通貨の普及に向け着々と準備が進んでいます。

さらに中国では電子決済が浸透しており、そのうち8割がアリペイとウィーチャットペイでの決済になっています。

中国政府はデジタル人民元をアリペイとウィーチャットペイ双方でシームレスに使用できるようにローンチするとみられ、また2020年内にテスト運用が開始される見通しです。

中国がデジタル人民元を発行すると、他国も追随せざるを得ない状況になり今後さらなるデジタル通貨の普及が加速するでしょう。

中国以外にもBISやカナダ、フランス等の多くの国で研究が進んでおり、最近ではECBでもデジタル通貨発行に意欲を見せています。

今後、デジタル通貨の普及が進むと利用者にとっては国際送金サービスにおいて圧倒的な利便性を発揮し、また他の金融サービスにおいても利用可能性が広がります。

銀行銘柄、IT銘柄、フィンテック銘柄は直接的な影響を受ける可能性が高く、またその他の分野でも影響を及ぼすと考えられます。

2020年はデジタル通貨元年になるかもしれません。


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