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欧州中央銀行のラガルド総裁とは?内部分裂するユーロの現状を解説

2019年11月に欧州中央銀行(ECB)の総裁として、クリスティーヌ・ラガルド氏が就任しました。

女性初の総裁であり、元IMF専務理事というキャリアを持つラガルド氏が内部分裂を引き起こしかけているECBの立て直しに成功するかどうか注目が集まっています。

今回はECBの新総裁に就任したラガルド氏がどのような人物なのか、ECBの抱えている問題点がどこにあるのかなどを解説していきます。

クリスティーヌ・ラガルド氏とは?

ラガルド氏は1956年にフランスで生まれた女性です。

大学を卒業後は渡米し弁護士として活躍。

2005年頃から政治・経済の世界に関わるようになると、当時の日本で言う所の財務大臣に相当する役職に就任。

アメリカでは世界最強の女性30人に選ばれるなど、多方面で活躍する人物でした。

2011年にはIMFの理事会で専務理事に全会一致で選出。

初めての女性専務理事が誕生したとニュースになりました。

そして今回、8年間務めていたIMF専務理事を退き、故郷である欧州の中央銀行の総裁となったのです。

華麗なる経歴を積み上げるラガルド氏ですが、実績は経歴を裏打ちするのに十分な物です。

フランスの財務省時代では、リーマンショックが起き世界中で金融危機が起きる中、フランスの財政をコントロール。

その後、IMF専務理事としてギリシャの金融危機に対して手腕を発揮。

一番の功績といわれているのは、2009年のメキシコ金融危機においては、周囲からの非難を浴びつつもIMF史上最大の470億ドルの融資を実行して、メキシコが倒れるという最悪のシナリオを回避しました。

欧州中央銀行総裁の役割と現状

法曹出身でありながら金融・経済の経験を積んだラガルド氏ですが、欧州中央銀行の総裁はこれまで中央銀行総裁経験者が就く役職だったため、法曹出身のラガルド氏には適性が無いのではとささやかれています。

ECBは欧州の単一通貨であるユーロにたいして金融政策を実地できる唯一の中央銀行です。

日本で言う所の日本銀行にあたり、ECBの発表がユーロに加盟している全ての国に影響を与えます。

ECBは前総裁だったドラギ氏の方針を受けて、マイナス金利導入や量的金融緩和を行うなど、強引なユーロ安に踏み切っていました。

これらの方針をアメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領は痛烈に批判し、アメリカがEUに対して制裁関税を加えるという事態に発展しました。

また、ドラギ前総裁の掲げた「金利低下とユーロ安」はECB内部に分裂をもたらしてしまいました。

過度な金融緩和を繰り返した結果、ドイツを始めとしてオランダやオーストリアなどのユーロ圏財政健在国が慎重姿勢を示し、フランスの中央銀行総裁までもが反対意見を口にしています。

ドラギ前総裁の方針は一定の効果を上げていたのは間違いありません。

前総裁が就任したころは欧州への信用不安が起きており、「金利低下とユーロ安」という方針は特効薬のように効きました。

ですが、信用不安が後退しても更に金融緩和を進めたことによりECB内部での分裂、そしてマイナス金利にまで金利を引き下げたことで、これ以上の金融緩和が取れなくなってしまうという結果をもたらしたのも事実です。

ラガルド新総裁に求められる役割とは

現在のECBが抱える問題点は、「ドラギ前総裁が立てた目標設定の見直し」、「ECBが取るべき経済政策」、「ECBの内部分裂」の3つと言われています。

なかでも、ECBの内部分裂は金融緩和などの問題よりも早急に解決するべき内容かもしれません。

11月1日に就任したラガルド氏に対して、理事会メンバーは民主的な決定を求めるなどの発言を会議でしました。

というのもドラギ前総裁は自信の掲げる方針を断行するために、強権を発動するようになったため、ECB理事会メンバーが不満を抱いていました。

ECB理事会は、ユーロ圏に加盟している19カ国の中央銀行総裁と6人の専任役員会で構成されています。

つまり、この理事会メンバーが対立するというのは、ユーロ圏に参観している各国が経済的に対立するのと同じ意味となります。

会議後、ドラギ前総裁の量的金融緩和に反対を表明したフランス中央銀行総裁とオランダ中央銀行総裁は、「追加緩和を急ぐべきではない」とコメントを発表。

それに対してラガルド新総裁からの直接的なコメントはありませんでした。

革新的とも暴力的とも呼べる量的緩和をしたドラギ前総裁に比べると、ラガルド新総裁に求められる役割は経済改革よりもECB理事会メンバー間の調整かもしれません。

2019年12月12日には欧州中央銀行政策理事会がフランクフルトで行われる予定です。

ラガルド新総裁のデビュー戦となり、ここでの会議での発言や方針の決定に注目が集まっています。

重要なポイントを握るドイツ

不安定な欧州経済の中で「一人勝ち」とまでいわれていたドイツですが、現在の経済は先行きが分からなくなっています。

米中貿易戦争やイギリスのEU離脱問題などで、世界的に貿易の伸びが落ちたことにより、ドイツ経済を支えていた輸出が減少。

国内総生産が半年の間もゼロに近い数字となっていました。

これまでドイツはECB前総裁のドラギ氏の方針に対して不満を表明していました。

ドイツのマスメディアは「ドイツの金を破産した国に使うな」とバッシング。

ドラギ前総裁の強引な量的緩和などを巡り、これまでにドイツ出身の理事会メンバーが3人も辞任するという結果となりました。

失業率が3%台と低い水準を保つドイツですが、それだけにECBでの役割も大きくなります。

9月に辞任したドイツのサビーヌ・ラウテンシュレーガー専務理事に代わり、イザベル・シュナーベル氏が就任すると発表されました。

新たに選ばれたシュナベール氏は大学教授で、これまでのドイツの政治家や銀行家がドラギ前総裁のおこなった量的緩和に対して「ドイツの預金を盗んでいる」などといった批判に対して危険だと警告してきた人物です。

ドイツを第一に考えるタカ派ではなく、EU全体の事を考える融和的な人物が理事に加わるのは、内部分裂を防ぎたいラガルド新総裁にとっても頼もしい味方と言えるかもしれません。

まとめ

以上が、ECBの新しいラガルド総裁に関する解説です。

フランス出身のラガルド新総裁とドイツ出身のシュナベール新理事の手腕に大きな期待が寄せられています。

EU経済は遠く離れた日本にも影響を与えるため、投資をしている方は12月の会議の結果をチェックしましょう。


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