東京オリンピックが終わると不動産価格はどうなる?他のオリンピックの事例を交えて解説

2020年の東京オリンピックが終わると、不動産価格は下落すると言われています。
確かにオリンピックというイベントが終われば、景気が後退するのではないかという漠然とした不安感もあり、不動産に対する信頼も揺るぎそうになります。
今回は、東京オリンピックが終わると不動産価格が本当に下がるのかどうか、過去におこなわれたオリンピック後の都市を分析するとともに解説します。
現在の東京の不動産価格
2020年東京オリンピックを前に、東京では建設ラッシュが続いています。
大量の観光客を見込んだホテルがいくつもオープンし、ここ数年のタワーマンションブームと相乗して、東京のあちこちで工事が行われています。
東京の不動産事情はリーマンショックをきっかけに下落傾向にありました。
元々、リーマンショックが起きる前から横ばいから低調へと切り替わりつつあり、2012年にはマンションの平均㎡単価が80万円を切る所まで安くなっていました。
しかし、東京23区のマンション・土地の単価は東京でオリンピックが開催されると決まった2013年から上昇傾向にあります。
マンションの平均㎡単価は2013年が約88万円だったのが、2018年には約113万円までに上昇しています。
マンションほどの急上昇は見られませんが、土地の平均㎡単価も緩やかに上昇しており、東京オリンピックが近づくにつれて不動産価格が上がっているというのは疑う余地もありません。
他のオリンピックのケース
東京オリンピック後の不動産価格の解説に入る前に、過去におこなわれたオリンピック後の不動産価格がどうなったかを解説します。
東京オリンピックと同じように夏季オリンピックの行われた都市を例にします。
ロンドンオリンピック
2012年におこなわれたロンドンオリンピック。
開催が決定したのは2005年でしたが、この7年間でロンドンの住宅価格は25%上昇しました。
これは2009年に起きたリーマンショックの暴落も含めての上昇率のため、もしリーマンショックがなければ更に上昇したのではないかと推測されます。
そして、オリンピックが終了した後のロンドンの不動産価格は順調に上昇しています。
2016年に一度下落をしていますが、これは不動産投資熱が最高潮に達し、売り注文が増えたことによる下落です。
ロンドンの不動産熱は一時的に落ち着いたのか、それでも現在に至るまで年5%程度の上昇を続けています。
ロンドンがオリンピック後も不動産価格を上昇させていた理由として2つの事が考えられます。
1つは、ロンドンはオリンピックの開催にあたり、交通や電力、水道などのインフラを整備し、警官の数を増やし治安を良くしました。
ロンドンという都市の魅力と価値を引き上げ、オリンピック後もそれを維持しているからこそ不動産価格が上昇したのです。
そしてもう1つが、ロンドンの不動産価格上昇にロンドンオリンピックがなんら関わっていないという分析があります。
統計によれば、ロンドンは1980年以降から平均年率6.4%程上昇を続けていたのです。
つまり、ロンドンオリンピックが無くてもロンドンの不動産価格は上昇して現在の価格までたどり着いていた可能性は十分に考えられます。
リオデジャネイロオリンピック
2016年のリオデジャネイロオリンピック後、住宅価格は14%も下落しました。
2011年から2014年までブラジルはオリンピックの影響もあり経済成長が順調で、オリンピック関連の特需もあり不動産価格が上昇していました。
しかし、オリンピックが始まる直前の2015年になると特需に陰りがでてしまい、住宅価格が下がり始めました。
オリンピックが終わっても不動産価格の下落は止まらず、現在も住宅価格は反転する兆しを見せていません。
しかし、ブラジルはオリンピックを開催するにあたり自国の経済が困窮し、治安の悪化を招いたなど様々な要因が絡み合った結果、景気が後退したと分析できます。
つまり、オリンピックを開催する前から抱えていた不安要素がオリンピック後に一気に噴き出した結果、不動産価格が下落したと言えます。
その他のオリンピック開催国
2008年北京オリンピック、2004年アテネオリンピック、2000年シドニーオリンピック、1996年アトランタオリンピック。
これらのオリンピック開先国の住宅価格を調べると、オリンピック前後で住宅価格が下落した国はありません。
それぞれオリンピック前から不動産価格が上昇し、オリンピックが終了しても上昇は続いています。
どの国もリーマンショックの影響はありますが、一度掴んだ好景気を離さずに維持。
これらの国や地域に共通しているのは、オリンピック特需を絡めた好景気を、オリンピック後も離さずに維持していた事になります。
反対にオリンピック後に景気が後退したギリシャとブラジルは、オリンピック開催の費用が負担となり悪化した経済を立て直せなかったのが原因です。
東京の不動産価格が上昇している理由
東京の不動産価格が上昇しているのはオリンピックを控えているからだけではありません。
現在、都内の高級マンションを積極的に購入しているのは国内外の富裕層です。
特に中国の富裕層が湾岸エリアを中心に購入しているが大きいです。
そしてもう1つの理由が政府と日銀が進める低金利政策になります。
金利を下げれば不動産を購入しやすくなり、買い注文が増えます。
株式と同じで需要が高くなれば、自然と価格が上がります。
また、日本は東京オリンピック後の2027年を目標にリニア中央新幹線の建設や新東名の全線開設など、インフラ面での整備を行っています。
これらの好材料を理由に東京の不動産価格はこれからも上昇できると期待できます。
つまり、東京の不動産価格が上昇している理由は東京オリンピックだけではないのです。
東京の不動産価格が下がるとされる理由
冒頭でも触れた様に、東京オリンピック後に不動産価格が下落すると予想されています。
この予想の根拠は、今の不動産価格の上昇が東京オリンピックに浮かれたムードで買いが集中しているかとなっています。
しかし、上記でも説明したように、東京オリンピック以外の要因もあって東京の不動産価格は上昇しているのです。
また、オリンピックとは別に2022年問題というのもあります。
これは税金面で優遇されている農地が2022年の指定解除により市場に流れ込むという問題です。
たしかに国土交通省の調査によれば、解除される生産緑地は全国に1億3422万㎡あり、東京全体では約3296万㎡あります。
しかし、都内の不動産価格を底上げしている山手線の内側に生産緑地は1カ所もありません。
いわゆる、「売れ筋」のマンションというのは山手線の内側か、山手線の外側でも駅まで徒歩7分から10分の場所に集中しており、その辺りに生産緑地はほとんどありません。
つまり、2022年になって生産緑地が市場に出たとしても、マンション市場の脅威にはなりえないのです。
不動産価格の下落は起こりにくい
これまでの解説をまとめますと、東京の不動産価格が上昇しているのは東京オリンピックだけが要因では無いため、東京オリンピックが終わったからといって不動産価格が暴落する可能性は低いと思われます。
しかし、都市部のマンションや土地は今ほど売買が過熱される状況にはなりにくいため、新しい場所で投資熱が生まれる可能性が十分に考えられます。
それは東京23区内の山手線外側の準都心や郊外になります。
都心のマンションラッシュが終われば、今度は準都心の再開発が始まります。
事実、世田谷や杉並などは手ごろな価格が再評価され、じわじわと人気を集めています。
生産緑地が解放される神奈川や埼玉、千葉などの郊外エリアも注目のポイントです。
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