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官庁ファンド主導のジャパンディスプレイが窮地に立たされた理由を解説

価格競争が激しい分野において、官民出資のファンドが主導して複数のメーカーが共同して会社を設立するのは珍しくありません。

ジャパンディスプレイも、そのような経緯で誕生した企業でしたが、現在危機的な状況に置かれています。

今回は、官庁ファンド主導で設立したジャパンディスプレイが、どうしてここまで危機的状況に陥ったのか解説します。

ジャパンディスプレイとは

ジャパンディスプレイは、ソニー・東芝・日立と日本を代表する電機メーカーが中小型液晶ディスプレイ事業を統合して設立した会社です。

主にスマートフォンやカーナビの小型ディスプレイを作成しており、素材は日立が、タッチセンサー技術をソニーが提供することで、小型ディスプレイの分野でトップクラスの企業となりました。

現在の液晶パネル分野は韓国・台湾勢との価格下落競争に日本大手メーカーは付いて行けず、赤字が頻出。

そこで、利益が見込めるスマートフォン用の中小型液晶ディスプレイを専門に扱うメーカーを設立し、日本政府の投資ファンド産業革新機構の協力もあり、世界シェア1位を獲得したのです。

しかしながら、スマートフォンの需要はここ数年で限界を迎えつつあります。

人気スマートフォンiPhoneでさえ、2019年第1四半期の出荷台数は、前年同期比30%減、世界の出荷台数は6期連続の現象となっています。

この減少傾向は、消費者の多くがスマートフォンを1台以上持っている、あるいは新しい5G対応モデルや折り畳みスマホを待つなどの要因もあるかもしれませんが、スマートフォン用のディスプレイだけでは業績を維持できないとジャパンディスプレイに危機感を抱かせるには十分でした。

ジャパンディスプレイは「脱スマホ依存」をスローガンに、液晶パネルにバス停を組み合わせたスマートバス停や、ヘルメットに液晶パネルを取り付けた新製品などを発表し、スマートフォン用ディスプレイに依存している自社のかじ取りを変えようとしました。

ところが、ジャパンディスプレイの経営状況は想像をはるかに越えて悪化していたのです。

官民ファンドだよりの経営状態

官民ファンドの資本を受け、垣根を越えて集まった日本大手メーカーの高い技術力を結集し、世界を驚かせるような新技術・新素材を発表するのが期待されていたジャパンディスプレイの姿でした。

ところが、ジャパンディスプレイは日本の旧来のビジネスに固執してしまいました。

高い技術力を持ちながら、大手クライアントの要望に応える下請け企業となり、リソースの大半を大手クライアント、つまりAppleに費やしました。

たしかに、Appleが好調なら戦略として間違っていませんでしたが、先にも述べた様にiPhoneの販売台数は減少気味となり、逆風が吹いていました。

加えて、Apple側にしてみればジャパンディスプレイは数ある取引先の一つでしかありません。

Appleが求める有機ELディスプレイのノウハウをジャパンディスプレイが持っていないと、Appleは別のメーカーに注文を回すようになってしまいした。

結果、産業革新機構から2014年から2018年の間に3000億円以上の融資を受けたのに、自己資本がマイナスへと傾く結果となりました。

更なる融資を受けようとしましたが、産業革新機構は体制を一新し、新たに産業革新投資機構が発足。産業革新投資機構は経営不振の会社への投資を止める決定を下しました。

一時は800円台まであった株価は、2019年10月時点では50円台まで下落してしまいました。

本末転倒な援助

5期連続で最終赤字を計上し、自己資本がマイナスへと傾いたジャパンディスプレイは、新たな資金として中国最大の投資ファンドや台湾の電子部品メーカーなどから800億円の金融支援を受けると発表しました。

これは本末転倒な援助だといえます。

本来、ジャパンディスプレイは台頭するアジアのメーカーとディスプレイ分野で戦うために、複数のメーカーが共同して設立した企業でした。

その企業が、ライバルであるアジア勢の援助を受けなければ、経営が成り立たないほど追い詰められていたのです。

ジャパンディスプレイの苦難は続く

一旦は支援を受けることで活路を見出したジャパンディスプレイでしたが、内情が明らかになると頼りにしていた中国最大手投資ファンドの嘉実基金管理グループが出資中止を発表しました。

出資中止は、ガバナンスに対する考え方における重要な見解の不一致が生じたとされていますが、結果として500億円を超える出資が消えてしまいました。

他のファンドは予定通り出資するとされており、加えてAppleが出資額を2億ドルに引き上げると発表。少なくとも360億円以上の出資が期待できます。

とはいえ、その程度の規模の出資は若干の延命措置にしかならないと予想されています。

ジャパンディスプレイのケースから学ぶべき教訓

日の丸液晶連合と呼ばれ、アジア勢の台頭を止めるべく設立したジャパンディスプレイは、そのアジア勢の力を借りて再建される可能性があります。

台湾の電機メーカーやファンドが株主となれば、ジャパンディスプレイが培ったノウハウが吸収されてしまい、日本の最新技術が外国へと渡ってしまうのは防げません。

政府肝いりで指導されたプロジェクトが、どうしてここまでの失敗に終わったのか分析すれば、やはり旧来の手法に固執したからとしか言えません。

日本の産業は大手メーカーの要望を応えることに集中して発展してきた過去があります。

たしかに、大手メーカーに力があり、国内の経済も潤滑していた頃ならば、大手クライアントの下請けとして仕事をこなしていればある程度の業績を維持できました。

しかし、現在の日本の置かれた状況は違います。

ディスプレイ部門に限って言えば、中国・韓国・台湾勢の価格競争に負け、需要が見込めるスマートフォンディスプレイでもAppleの要望に応えられず、赤字を続けたという結果が全てを物語っています。

どれだけリスクを背負っても、何もしないで守りに入る経営をしていては状況を打開できません。

これからの日本に必要な企業は、誰もが欲しいと思う新技術・新素材、新しい価値観を提供できる企業です。

まとめ

以上が、ジャパンディスプレイの解説になります。

ジャパンディスプレイの再建がどうなるかは、現時点だと不透明です。

当初望んでいた出資額には到達できず、このまま大量リストラを続けて生産力が維持できるのかも不明です。

政府主導で動いたプロジェクトが失敗となれば、国民の信頼を損ねる結果となってしまうので、ぜひともジャパンディスプレイには復活してもらいたいです。


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