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ワイドモート≒永続する会社≠値あがる銘柄

多くの方が銘柄選定の基準にするであろう「ワイドモート」と言う要素。

今回は「ワイドモート=永続する会社=値あがる銘柄」と言う一部の方が抱く誤解に、待ったをかけたいと思います。

そもそもワイドモートとは?

「オマハの賢人」とも呼ばれるウォーレン・バフェットがしばしば用いる言葉で、「エコノミックモート(経済的な堀)」が広いということです。

パット・ドーシーの書籍「千年投資の公理」で詳しく語られています。

なんのこっちゃ…と思う方は、まずは簡単なイメージとして「他社より有利な企業」と思ってください。

さてワイドモートには5つの基準があります。

  • 無形資産(ブランド)
  • 乗り換えコスト
  • ネットワーク効果
  • コストの優位性
  • 規模の優位性

最後の2つを合わせて4つとしている場合もありますね。

ちなみにモーニングスター社ではこれらの度合いにより「ワイドモート」「ナローモート」「ノーモート」の3段階のレベルで「ワイドモートさ」を表しているようですが、堀が「広い」か「狭い」か「無い」か、ですかね。

そのまんまです。それぞれの優位性を簡単に書いていきます。

無形資産(ブランド)

分かりやすいようでわかりにくい、「ブランド」です。

米国株でイメージしやすいのはコカコーラやマクドナルドですね。

企業そのものがブランドと化しています。

高いブランド力は、特定のヒット商品に頼らず安定した売上を稼げるため、中長期的に競合に対し優位性を持ちます。

乗り換えコスト

これは比較的わかりやすいですね。

例えばMicroSoftのWindowsOSやOffice製品などが好例でしょう。

社内、取引先含め、長い歴史の中でWindows製品を使った「ビジネス文化」が形成された今、代替製品で業務ができるような体制づくりをすることはかなり困難なことであると言えます。

代替製品による業務を実現するには「代替製品の調達コスト」「教育や体制が根付くまで業務効率の悪化」を受け入れなければなりません。

さらにビジネス関連のソフトウェアは、取引がある企業とのやり取りにも影響を及ぼします。

これらの事を考慮すると、大企業になればなるほど影響範囲が大きくなり、現実的ではありません。

競合他社の製品への乗り換えをネガティブにさせる要素はビジネスにおいて大きな強みとなります。

ネットワーク効果

かなり強力な要素でありながら、個人的には「ワイドモート」の中でも大きな弱点にもなりうる要素であると思っています。その理由については後述します。

SNS銘柄はこの「ネットワーク効果」が強く、ユーザーが増えれば増えるほどコンテンツの魅力が増し、さらにユーザーが増え、魅力が増し…急激な成長を遂げることができるようになります。

こうしたユーザーが根付いたことで成長したビジネスは、ユーザー同士の繋がりによりネットワークが維持、拡大されることも強みの一つであると思います。

コストの優位性

例えば、皆様は買い物するときにどこを重視しますか?

機能、デザイン、ブランド、生産国…買う商品によって色々変わってくると思いますが、必ずと言っていいほど見るのは「値段」でしょう。

余程の金持ちならさておき、投資家はコスト意識が高い方も多いと思います。

やはり機能やデザインにおいて同等の製品があれば、低価格の物を選びたくなることでしょう。

一部「規模の優位性」と被る部分がありますが、いかに商品、サービスを「低コスト」にできるかどうかです。

これには様々な要素が絡み、製造工程や製造場所(あるいはサービス提供の形や立地)、流通経路、経営能力などです。

利益率が高ければ、それだけ製品自体をディスカウントしても企業運営自体は可能になります。

規模の優位性

規模のメリットを活かすことで製造・流通コストを抑えたり、規模そのものがブランド力となったり、積極的なM&Aを仕掛けたりすることができます。

企業規模そのものが企業の体力になることもありますし、投資家としては大型株の流動性は安心感にも繋がることでしょう。

ワイドモート≒永続する会社

「=」ではなく「≒」です。ワイドモートとはすなわち同業他社、あるいは経済・市場全体における「優位性」であり、それが維持されている以上、その企業は「永続する企業」であると言えます。

さて、ここまではワイドモートな企業の「良いところ」ばかり語ってきました。

前提知識なしにここまで読んで、「この企業はこういった理由でワイドモートさがあるんだよ!だから永続するし、今後も期待できる素晴らしい銘柄なんだ!」と語られると、「なるほど、それは魅力的だ」と思ってしまうことでしょう。

しかし、ここからは少し流れが変わります。

永続する会社≠値あがる会社

「=」ではなく「≠」です。仮にその企業のワイドモートさが継続され、企業活動が「永続できる」としても、その企業は果たして必ず値上がりする企業であると言えるのでしょうか。

そもそも「値上がりする」の定義次第だと思いますが、2つの定義を上げておきます。

1つは「今の価格から配当込リターンが1%でも得られる」という絶対的な値上がり。

もう1つは例えば「S&P500をアウトパフォームする」と言う相対的な値上がりです。

前者であれば可能性は十分ありますが、後者の場合はやや難しい可能性もある、と言ったところでしょう。

言うまでもなく、株価の上昇率とは「今現在の企業の魅力」を反映したものではありません。

今より値上がりするためには、「将来より魅力を感じる」か「実体が今現在評価されている魅力を上回る」必要があります。

ここでの「魅力」とはビジネスのワイドモートさでも、財務でも、将来受け取れる配当でも良いですが、世間でワイドモートともてはやされる銘柄は既に十分な期待が乗っていることも多いため「今現在の評価」が既に高いわけです。

確かに、企業の本質は利益を得ることなので、永続することでいつかは事業を拡大したり、配当により確実なリターンを得られたりするかもしれません。

しかし、永遠に株を相続し続けない限りは必ずどこかで出口があります。

購入から出口までを切り取った場合、企業自体が永続するとしても、その期間「期待外れ」だっただけで十分なリターンを得られない可能性もあるわけです。

「ワイドモート」を誤解するなかれ

さらに、そもそも企業は「ワイドモートさ」を失う可能性があることを忘れてはいけません。

ブランドであればそれ以上の人気ブランドが台頭することもあります。

また、勘違いしやすいのは「有名商品=ブランド力」ではないということです。

確かにブランド力のランキングを評価するサイト「BrandZ」では製品ブランドも「ブランド」として表現していますが、特定商品に依存したブランド力とは案外弱いものです。

例えばおむつブランドである「パンパース」などがその例ですが、P&Gは決して「パンパース」ブランドでワイドモートを形成しているわけではありませんね。

「この企業は〇〇という人気商品があるからブランド力がある!つまりワイドモートである!」と考えるのはやや短絡的と言えるでしょう。

その商品の人気が薄れた時点で致命的なダメージを被りかねません。

乗り換えコストであれば現状以上の製品、あるいは乗り換えが容易な互換性を持たせた製品や、契約関連であれば規制による条件緩和(例えば日本の携帯キャリアの〇年縛りなど)があるでしょう。

ネットワーク効果は人と人との繋がり、つまり口コミや人気から規模を急激に拡大できるメリットがありますが、裏を返せば人が減るにつれ、あるいは「減る理由」が表立ってしまえば、急激に衰える可能性もはらんでいます。

日本国内で言えば、「モバゲー」や「mixi」などが判りやすい例ではないでしょうか。

コストの優位性も他社に真似されやすく、数字で見えやすい部分でもあるため、他より安くなくなった時点で急激に魅力を失います。

規模も上手く活用できれば大きな強みですが、大きな規模を維持するにはコストもかかるため、ひとたび経営難に陥れば足かせになりかねません。

事業売却をすればその規模は失われます。

まとめ

ワイドモートな企業は確かに魅力的に映りますし、ライナス自身もワイドモートさを持つと言われる企業を好んで選んでいます。

しかしそこには既に十分な期待が乗っているため、ひとたび「期待外れ」に終われば急激に勢いを失いかねないことを忘れてはなりません。

例えばIBMやGEなどが好例でしょう。

どちらも一時は栄華を極めた世界トップの企業でしたが、今は見る影もありません(とは言え、期待が剥がれ落ちた今こそ割安であり、買いチャンス捉える方もいるでしょう)。

投資判断に用いられる「ワイドモート」とは過去、及び現在の話であり、未来においても優位性をキープでき「そうだ」と言う推測に信憑性を持たせるための要素の一つにすぎません。

今現在ワイドモートだからと言って、将来も永遠にワイドモートであり続けられるとは限らないのです。

現在は注目すらされておらず割安で、これからワイドモートさを獲得する企業の株を買えれば確実に儲かるのかもしれませんが、それが簡単にできたら苦労はしませんね。

魅力的な言葉に踊らされないように気を付けたいところです。

それでは今回はこの辺で。明日は大吉!


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記事の筆者ライナス@米株仮面は、ビザ株、マスターカード株、マイクロソフト株、アップル株、アルファベット株、ジョンソンエンドジョンソン株、ファイザー株、アムジェン株、アッヴィ株、コカコーラ株、P&G株、ブリティッシュアメリカンタバコ株、マクドナルド株、AT&T株、USバンコープ株、アメリカンステーツウォーター株、ユニオンパシフィック株を保有しています。

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