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FRBの予防的利下げとは?マーケットに与える影響を考える

2019年7月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、FRBは10年半ぶりにFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を0.25%引き下げ、年2.0~2.5%とする利下げを行いました。

この利下げは、米中貿易摩擦などによる米景気が減速したときに備える「予防的利下げ」といわれています。

この記事では、「予防的利下げ」とはどういう意味なのか、株式市場にどのような影響があるのかについて解説します。

予防的利下げとは

米国は今年になって、景気拡大局面が戦後最長の11年目となりました。

昨年も新興国中心に世界経済が減速するなか、「米国1強」の状態が続いていたのです。

通常、利下げは景気が悪化しているときに行われます。

利下げが行われると、銀行の貸出金利も低下します。

貸出金利が低下すると、設備投資など企業活動が活発して業績が回復、雇用や賃金情勢も良くなるため、個人消費が増加します。

その結果、景気回復という効果が期待できるのです。

しかし、FOMC前の6月雇用統計では、景気動向を反映する非農業部門の就業者数が前月に比べて22万人増加、失業率も歴史的低水準にとどまっていました。

こうした状況で FRB が利下げに踏み切った理由は、「景気の下振れリスク」です。

米中貿易摩擦の激化による景気減速リスクに先手を打ち、政策金利を小幅に下げる「予防的利下げ」を行ったのです。

過去のFOMCでの金融政策

過去の FRB の政策を見ると、0.5%の大幅な利下げが実施されるのは、景気情勢が大きく悪化してそれに遅れて対応が行われる場合か、金融危機のような大きなショックが発生した時です。

2001 年ITバブル崩壊やリーマンショック前の2007年の利下げでは、期間も長く、下げ幅も大きくなりました。

しかし、それでも景気後退を食い止めることができず、利下げは「手遅れ」と判断されました。

一方、予防的利下げは、最近では1995年と1998年に行われています。

1995年はメキシコ危機が米国に波及するのを回避するため、1998年はアジア・ロシア危機が米国経済に伝播するのを予防するために利下げを行いました。

主要国に広がる利下げ

7月のFOMC会合後の記者会見で、パウエルFRB議長は、「利下げは政策サイクル半ばでの調整であって、長期的な利下げ局面に突入するわけではない」と発言。

議事要旨でも、「多くの参加者がサイクル半ばでの調整とみている」と明記されています。

利下げ局面は短期間にとどまり、政策金利の引き下げも小幅なものになるとの見方を示したのです。

ただ、市場では9月の利下げを折り込み、トランプ大統領も利下げへの圧力をかける発言を繰り返しています。

そのため、「予防的利下げ」として短期間で利下げが終了するかどうかは不確定な状態です。

さらに、世界の中央銀行で予防的利下げの動きがでています。米中貿易摩擦が自国経済に影響を及ぼすのではないかという不安が背景にあるからです。

すでに利下げを始めているオセアニアだけでなく、ユーロ圏でも利下げの方向性が示されました。

好調な米国経済と対照的に、ユーロ圏に関しては景気減速やインフレ期待の低迷など、利下げの大義名分はたてやすいものの、過度なユーロ高を防ぐためにFRBの利下げに付き合わざるをえない面もあるのです。

7月以前に利下げを行っていたのは、オーストラリアやニュージーランド・韓国・インドなどで、G7(主要7カ国)はまだ行なっていませんでした。

しかし、米国が利下げに踏み切ったことで、ユーロ圏も加わる可能性が高まったのです。

英国でもカーニー総裁が予防的利下げの必要性に言及し、早ければ11月にも金利を引き下げる可能性が出てきました。

予防的利下げが株式市場に与える影響

米国で行われた95年・98年の予防的利下げでは、利下げが短期間で終了し、米国は景気後退を免れました。

その結果、利下げが行われても、ダウ工業株30種平均は堅調な推移が続いたのです。

しかし、利下げが後手に回った2001年や2007年は景気後退を止められず、米国株も下落しました。

7月の利下げは、現時点では「予防的利下げ」と捉えられているので、株価にとってプラスになるはずです。

しかし、7月以降も米国株は下落しています。米中貿易摩擦が激化し、景気悪化懸念が拭えないからです。

このまま景気悪化懸念が続く中で、米国の利下げが「予防的」と捉えられ続けるかは疑問が残ります。

今後、利下げが複数回続くようだと、マーケットの反応は代わってくる可能性があります。

日本株への影響

日本株への影響を考えた場合、米国株の動向とともに、為替相場にも注意が必要です。米国での利下げが続くと円高・ドル安になる可能性が高まるからです。

為替の決定要因には様々ありますが、日米の金利差は大きな要素になります。

米国の金利が低下し、日米金利差が縮小すると円高に進む恐れがあるからです。

さらに欧州でECBも利下げを行なうと、ユーロに対しても円高が進みかねません。

各国が景気悪化懸念に対して予防的利下げを行った場合、日銀はいかなる手を打てるのか。将来を見据えた判断が必要になるでしょう。


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記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。

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