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【米国株】AT&Tが力を入れるエッジとは?

今年に入り、AT&Tはエッジコンピューティングや5Gの分野において、数々の大手テクノロジー企業と協業を進めています。

今回はエッジコンピューティングの概要とAT&Tの取り組みについて記載していきます。

近代ITの課題

エッジコンピューティングについて話す前に、エッジが必要な理由となる「近代ITの課題」について簡単にお話しします。

現在、スマホやタブレット、モバイルPCやIoT製品の普及により、通信量が増大しています。

各端末から最寄りの基地局→インターネットを経由しクラウドやサーバーに届くまでに、集約された通信量は膨大なものとなり、ネットワークの遅延を招き応答性が悪化します。

加えて、クラウドやサーバーでデータの処理をする際、一度に大量のデータを処理しなければならないので遅延を招くこともあります。

これが単にツイッターが遅いとか、ブログを開くのが遅い、程度であれば大きな影響にはならないかもしれませんが、自動運転などで自動車の反応が遅い…となった場合、どうでしょうか。大きな問題となりかねません。

そこでエッジコンピューティング

先の図のように、全ての端末から送られてくるデータを全てクラウドやサーバーに向けて流すのではなく、基地局など端末の近くにサーバーを配置することによって、ネットワークに流れる通信量を減らしたり、メインとなるクラウドやサーバー側の処理を減らしたりすることができます。

これにより応答性の改善を実現するのです。

基本的に、クラウドベンダーやサービスベンダーは通信そのものを提供していません。

ベンダーもユーザーを繋ぐ通信部分は、AT&TやVerizonなどの通信事業者頼みなわけです。

SaaSやIoTが普及し、通信量が増えたとき、途中の通信設備が追いつかず遅延を発生させるような通信事業者はまず選ばれなくなるでしょう。

通信において必要なのは、低遅延、高信頼性、堅牢なセキュリティです。通信事業としてのサービス品質を問われる形になります。

エッジによりネットワークにかかる負荷を低減することで応答性が改善されるのであれば、通信事業者にとってもメリットがあることでしょう。

そしてそれ以上に、多くのSaaS、IoTがエッジを求めるようになった時、そのエッジをソリューションとして提供することで、新たな収益源を獲得しようとしているのではないでしょうか。

提供形態はPaaSやSaaSになるかと思いますが、私としては、これは現在のユーザーとクラウドを繋ぐ「新たなクラウド」と言っても過言ではないと感じています。

今後、SNSの多様化やさらなる普及、自動運転のセンサー情報や監視カメラの画像解析など、「非構造化データ(例えば動画や画像などがそうです)」が増大していきます。

これを効率的に処理するためにエッジソリューションが必要だとすれば、多くのネットワークを利用する企業がエッジを活用するようになります。これは大きなビジネスチャンスです。

しかし、2018年に開催された「Open Networking Summit North America 2018」の印象からすると、昨年時点でAT&TはVerizonと比べるとエッジの分野で出遅れていた感が否めず、巻き返しを図ろうと今年に入り急速にエコシステムを広げているのではないか?と感じています。

AT&Tのエッジ推進エコシステム

エッジや5Gなど次世代通信におけるソリューション関連でAT&Tと協業している企業について代表的なところを挙げていきます。

Intel

半導体企業です。CPUのイメージが強いですが、SSDやNIC(Network Interface Card)などサーバーやモバイル向けのパーツ製造・販売をしています。

2018年のOpen Networking SummitでAT&Tと共同で、エッジのプラットフォームである「Akraino」を発表しました。

Microsoft

WindowsやOfficeなどのソフトウェア、AzureやOffice365などのクラウドサービス、AzureStackHCIなどのハイパーコンバージドインフラを販売するIT企業です。2019年7月に提携を発表しています。

AT&TはAzureを活用し、AT&TとMicroSoftが共同で設計、開発し、エッジに関するソリューションを提供するとのことです。

AT&Tはクラウドベンダーの選定においてAzureを優先的に活用したり、Office365を利用したりする、とのことです。

強力なクラウドサービスを持つMicrosoftとの提携は大きな後ろ盾ですね。

Microsoftにとっても、5Gで通信量の増大が想定される中、さらにビジネスを加速させるエッジコンピューティングは必須と言える技術なのでしょう。

IBM

IBMクラウドなどのクラウドサービスやソフトウェア、コンサルティングなどサービスを提供する会社です。

2019年7月に提携を発表し、クラウド上でAT&Tのビジネスアプリケーションを動かす、とのことです。

Microsoftと比べると「クラウドサービス」と言うより「アプリケーションやオープンソース」がメインのように思います。

IBMは同月、LinuxOSやオープンソース持つRedHat社を買収しており、RedHatはコードによる構成管理などを可能にするAnsibleなどの技術を有するため、その辺りの技術が中心ではないか、と考えています。

Dell Technologies

PC、サーバー、ストレージなどのハードウェア製品を提供する会社です。

傘下にハイパーバイザ(仮想化技術)を持つVMwareや、コンテナの技術を持つPivotal(2019年8月にVMwareが買収を発表)などを有しています。

2019年8月に協業が発表され、OpenStack(クラウド向けのオープンソースソフトウェア)とKubernetes(コンテナ)技術の分野を推進するとのことです。

Pivotalの持つコンテナの技術の活用を狙っているのかもしれません。

また、DELLはサーバー、ストレージ以外にも、Linuxベースのネットワークスイッチやホワイトボックススイッチも提供しています。

AT&Tは5Gやエッジソリューションの提供に向け、これらのハードウェアをDELLから調達するようです。

ネットワーク機器に関しては、VMwareがSD-WANなどネットワークの仮想化にも積極的に取り組んでいますから、ネットワーク拠点が多くなるエッジコンピューティングとの相性は良いと言えるでしょう。

Badger Technologies

小売企業向けのRPA(ロボティックプロセスオートメーション)用ロボットを開発する企業です。

開発中のロボットは商品の陳列などを行うことができ、今後米国に展開していくようです。

AT&TはBadger Technologiesと提携し、IoTロボット実用化のため、5Gやエッジコンピューティングを活用した運用テストを行っているとのことです。

RPAを推進するBadger Technologiesにとっては低レイテンシ(低遅延)を実現する5Gやエッジは必須の技術であり、AT&Tにとっては今後の需要が高い技術のデータを集めたい、と言うことなのでしょう。

まとめ

AT&Tと言えば通信事業や、タイムワーナー買収によるコンテンツ事業拡大のイメージが強く、そちらも奮わないことから万年割安株と言う不名誉な地位をさらに深めてしまったと思います(通信企業は元々割安感がありますけどね)。

AT&Tホルダーのライナスとしては、今後は5Gやエッジの分野において、クラウドベンダーやRPAを推進する企業と協業することで、新たなるサービスを提供し、ビジネス(収益源)拡大により企業としての価値を高めてくれることに期待しています。

特にRPAは既存のマンパワーに頼るシンプルなビジネスをロボットに置き換えることで、人件費の高騰に備えたり、働き方改革の推進に繋がったりすることでしょう。

まだまだ技術的にもコスト的にも完全普及は難しいかもしれませんが、将来的にロボットの導入コストが安くなり世に広まれば、産業革命を起こしうる技術の一つだと考えています。

そのような「新しい時代」が来た時、AT&Tも存在感を増す企業の一社なのかもしれません。

競合のVerizonも5G、エッジコンピューティングには力を入れているので、二社の動向には注視していきたいと思います。

それでは今回はこの辺で。明日は大吉!


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記事の筆者ライナス@米株仮面は、ビザ株、マスターカード株、マイクロソフト株、アップル株、アルファベット株、ジョンソンエンドジョンソン株、ファイザー株、アムジェン株、アッヴィ株、コカコーラ株、P&G株、ブリティッシュアメリカンタバコ株、マクドナルド株、AT&T株、USバンコープ株、アメリカンステーツウォーター株、ユニオンパシフィック株を保有しています。

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