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香港の大規模デモが香港経済に与える影響

モトリーフール米国本社、2019824日投稿記事より

(元の記事は、アリゾナ州立大学のグローバルマネジメント担当教授であるAllen Morrisonが執筆し、学術専門家のアイデアと知識を扱っている非営利ニュースサイト、The Conversationに掲載されました。なお、デモの日本への影響を訳注で挿入しました。)

香港のデモは長期的な影響をもたらすことになるでしょう。

その影響を予想することは困難ですが、経済的影響はすでに明らかになりつつあります。

デモへの関心の高さと多様な参加者

この香港のデモで異例なのは、香港住民の関心の高さと参加者の多様性です。

香港のデモ参加者は老若男女さまざまです。ある調査によれば、参加者の約60%が30歳未満で、約20%は45歳以上でした。

多くの店主、運転手など市井の人々が、デモ参加者を支援するために水を配ったり、金銭的な支援をしていると報道されています。

8月18日には、豪雨にも関わらず、デモに参加するために推計170万人が集まったと言われています。

これは香港人口の4分の1近い人数です。

デモ参加者が立法会(議会)を占拠したり、香港国際空港の運営を混乱させた時は警官隊と衝突しています。

しかし、これほどの多くの参加者にも関わらず、デモは全般的にはとても平和的に行われています。

短期的な影響

デモの短期的な経済影響が見え始めており、7月〜8月の小売売上高は前年よりも10%以上減少すると予想されています。

(訳注:香港株式市場のハンセン指数は5月上旬から約15%下落しています。報道によれば、香港にフランチャイズ牛丼店約60店がある吉野家ホールディングスでは、繁華街でのデモが続いたことで牛丼店の売上が週末でも2桁減になっています。大規模デモの時には早い時間の閉店を余儀なくされています。また、香港で日本酒などの拡販を行おうとしていた日本企業などは、進出計画を再検討し始めました。)

香港国際空港を約2日間閉鎖することになったデモについて、航空専門家はフライトのキャンセルだけでも7600万米ドル(約81億円)の打撃を受けたと推定しています。

空港事業は香港のGDPの約5%を占めているため、空港の打撃は香港経済にも大きく影響します。

さらに、この状況から観光客やビジネス旅行者は香港への渡航を避けています。

また、中国本土からの訪問客は、通常渡航客の4分の3以上を担っていますが、これも徐々に減少しています。

(訳注:JTBによれば、8月上旬の時点で8月~9月の香港行きツアーの予約は前年同期比3割減となっていました。旅行各社の情報を総合すると、秋や年末年始の予約状況も例年よりかなり低いとのことです。また、香港では、8月中旬に食品関連の大規模な国際見本市が開催され、100社超の日本企業が当初参加予定でしたが、デモの激化を受け10社以上が出展を急遽取りやめました。なお、外務省は香港への渡航者に注意を促していますが、危険情報は出していません。)

(訳注:日本政府観光局(JNTO)によると、デモの影響や景況感の悪化などがあり、香港からの来日旅行者数は7月に前年同期比4.4%減の21万6800人となりました。8月も落ち込みが予想されます。)

長期的な影響

デモの長期コスト、およびそれに対する中国の対応は、定量化することが非常に困難です。

これは、中国やその他のアジア地域でビジネスを展開しているグローバル企業が香港を拠点としていることに関係しています。

香港政府によれば、2018年の時点で1530の多国籍企業が香港に地域本部を設置していて、このうち290社が米国企業でした。

香港に拠点を置く企業が多いのは、中国と比較した場合、香港は法の支配が強いためです。

(訳注:香港には600社以上の日本企業が拠点を構え、日系在留者は2万人以上にのぼります。現地拠点では、デモで混乱する際には在宅勤務を奨励し、また、不要不急の出張を控えるよう呼びかけています。)

なお、中国本土の経済力が増大するにつれ、より多くの多国籍企業が地域本部を中国本土に移動させています。

また、中国が香港のデモを武力などで強制的に制圧した場合、香港の法的なメリットが弱まるおそれが浮上し、多国籍企業は香港拠点を見直す可能性が出てくるでしょう。

(訳注:多くの多国籍企業は、アジア地域本部の移転先としてシンガポールを検討しています。シンガポールはアジアの金融センターであり、香港と同様に英語でビジネスを進めることができ、さらに英国法に基づいて統治されているためです。)

近年のデモとの比較

デモには様々な形があります。

2011年9月に発生したニューヨークでの「ウォール街を占拠せよ」運動は、わずか2カ月しか続きませんでしたが、広範な反体制運動になりました。

ただし、大きな経済的影響は出ませんでした。

フランスで最近発生した「黄色いベスト運動」は当初、燃料税高騰への抗議を目的としていましたが、その後マクロン大統領に対する広範な反体制デモに変化しました。

ピーク時には、約30万人が参加していました。40週間近く続いていますが、現在は勢いを失っています。

デモの経済的費用は約50億ユーロ(約55億米ドル)に相当します。

香港のデモは、フランスやニューヨークのデモよりもはるかに大きく、最終的な決着や経済的影響が、香港だけでなく香港以外の地域にどれだけ及ぶのかを予想するのは時期尚早です。

デモの結果がどうであれ、香港は経済的成功の2つの重要な要素である資本と人材の流出リスクにさらされています。

(米国株投資にご関心がある場合は、モトリーフールの下の記事をご参照ください。)

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記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。

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