The Motley Fool

逆イールドカーブが示唆することと景気後退に強い米国株について(その2)

モトリーフール米国本社、2019年8月23日投稿記事より

(「逆イールドカーブが示唆することと景気後退に強い米国株について(その1)」の続きです。)

リセッション時には、株式市場は全般的には大きく下落します。

世界市場を巻き込んだリーマンショックの18カ月間、S&P500インデックスのトータルリターンは約36%下落しました。

そして、各種のインデックスや多くの銘柄がリーマンショック前の水準に戻るのに何年もかかっています。

しかし、リセッションでも全ての株が下落するわけではありません。

一部の株は堅調に推移しています。

次のチャートに含まれる10銘柄とiシェアーズ・ゴールド・トラストは、厳しい経済環境下で上昇しています。

なお、このチャートは上昇した銘柄の一部をカバーしているだけで、そして推奨しているわけではありません。

半数の銘柄は配当を出しています。

リーマンショック時に上昇した銘柄(トータルリターン、単位:%)

上から順に、S&P500インデックス、ダラー・ツリー、ウォルマート、ネットフリックス、マクドナルド、ナショナル・ビバレッジ、J&Jスナック・フーズ、テバ・ファーマシューティカル、ランカスター・コロニー、サンダーソン・ファームズ、オライリー・オートモーティブ、iシェアーズ・ゴールド・トラスト。

出典:YCHARTS。2019年8月21日時点

次に、上記の銘柄がリセッション期間中、そしてそれ以降にどのようなパフォーマンスをあげたかを下のチャートで示します。

リーマンショック時に上昇した銘柄のその後のパフォーマンス(トータルリターン、単位:%、なおネットフリックスとオライリー・オートモーティブの単位は1000%)

上から順に、S&P500インデックス、ダラー・ツリー、ウォルマート、ネットフリックス、マクドナルド、ナショナル・ビバレッジ、J&Jスナック・フーズ、テバ・ファーマシューティカル、ランカスター・コロニー、サンダーソン・ファームズ、オライリー・オートモーティブ、iシェアーズ・ゴールド・トラスト。

出典:YCHARTS。2019年8月22日時点

ジェネリック(代替医薬品)メーカーのテバ・ファーマシューティカルとiシェアーズ・ゴールド・トラストを除くと、リーマンショック時に上昇した全ての銘柄のトータルリターンは、リーマンショック後もS&P500インデックスをアウトパフォームしています。

この結果、リセッション時のパフォーマンスがよかった銘柄の多くは、経済回復期においてもアウトパフォームを継続させる可能性が高いと考えられます。

また、下のチャートには、リーマンショック時にトータルリターンが1桁台の下落にとどまり良く持ちこたえた8銘柄を入れました。

ブリッジフォード・フーズ以外は配当を出しています。

リーマンショック時に1桁台の下落でよく持ちこたえた銘柄(トータルリターン、単位:%)

上から順に、S&P500インデックス、コネチカット・ウォーター、カリフォルニア・ウォーター・サービス、ヨーク・ウォーター、チャーチ・アンド・ドワイト、ブリッジフォード・フーズ、フラワーズ・フーズ、ハーシー、ハズブロ。

出典:YCHARTS。2019年8月21日時点

下のチャートは、上述8銘柄のリーマンショック後のパフォーマンスも含んでいます。

ご覧の通り、リーマンショックの発生時から見た場合、全ての銘柄がアウトパフォームしています。

リーマンショック時に持ちこたえた銘柄のその後のパフォーマンス(トータルリターン、単位:%)

上から順に、S&P500インデックス、コネチカット・ウォーター、カリフォルニア・ウォーター・サービス、ヨーク・ウォーター、チャーチ・アンド・ドワイト、ブリッジフォード・フーズ、フラワーズ・フーズ、ハーシー、ハズブロ。

出典:YCHARTS。2019年8月22日時点

以下で、リセッション中もパフォーマンスが良かった銘柄に関して説明します。

リセッション時の「リップスティック効果」に注目

厳しい経済環境下では、当然のことながら人々は高額の買い物を控えます。

しかしその一方で、多くの人々は、そんな時に小さな買い物を増やす傾向があります。

高額なものは買えないので、厳しい中でも頑張っている自分への「ご褒美」といった感覚でしょう。

米国では、この現象を「リップスティック効果」と呼んでいます。

2000年代初め、化粧品メーカー、エスティローダーの当時の会長だったレオナルド・ローダーが気づいたことで、不景気な時ほど口紅などの化粧品が売れるのです。

「リップスティック株」と考えられる銘柄

「リップスティック効果」からの類推で、幾つかの銘柄は、リセッションの時でも上昇する「リップスティック株」と考えられます。

「リーマンショック時に上昇した銘柄」チャートに含まれる、ファストフード業界の巨人マクドナルド(NYSE:MCD)、「ラクロア」スパークリングウォーターで有名な飲料メーカーのナショナル・ビバレッジ、スナックや冷凍清涼飲料のJ&Jスナック・フーズなどがそうです。

また、不景気になると外でお金を使うのを控えて家にこもる傾向もあるため、家でいろいろな番組や映画が楽しめるネットフリックス(NASDAQ:NFLX)もリップスティック株のカテゴリーに入るかもしれません。

8月22日時点で、マクドナルドとJ&Jスナックの配当利回りはそれぞれ2.1%と1.1%です。

ナショナル・ビバレッジとネットフリックスは配当を出していません。

また、チョコレートメーカーのハーシーとおもちゃメーカーのハズブロも、上記の「リーマンショック時に持ちこたえた銘柄」チャートが示すように、景気後退時にリターンが良く持ちこたえているので、リップスティック株と考えられます。

配当利回りはハーシーが2%、ハズブロが2.4%です。

水道関連公益銘柄

先進国の消費者の多くは、最も深刻なリセッションの時でさえ、経済的な理由では水の利用を控えないため、水道関連公益株が有望です。

「リーマンショック時に持ちこたえた銘柄」チャートでも分かる通り、米国の3つの水道関連株(コネチカット・ウォーター、カリフォルニア・ウォーター・サービス、ヨーク・ウォーター)は、リセッション時でも相対的に堅調です。

水道関連公益株では堅実な配当を継続する銘柄が多く、長期的に見た場合、アメリカン・ウォーター・ワークス(NYSE:AWK)が最も有望との見方があります。

ニュージャージー州を本拠とする同社は、全米およびカナダの一部で広範に水道事業を展開し、さらに買収によって事業を拡張しています。

同社の配当利回りは1.6%です。

アメリカン・ウォーターは、リセッション期間中に約13%下落しましたが、2008年のIPO(新規株式公開)以降、トータルリターンは724%も上昇し、同期間のS&P500のトータルリターンの168%を大きく上回っています。

もちろん、過去の実績が将来のパフォーマンスを保証するわけではありませんが、長期的に堅調なパフォーマンスは、アメリカン・ウォーターが強い競争優位性を有していることを示唆しています。

その他の公益銘柄

電力会社やガス会社も、景気後退時には全般的によく持ちこたえますが、水道会社ほどではありません。

消費者は、不況になっても水道の使用を減らしませんが、電気やガスは節約する傾向があるからかもしれません。

チャートには入っていませんが、電力・ガス関連株の中では、長期的なリターンの点でネクステラ・エナジー(NYSE:NEE)が有望と考えられます。

同社は天候の良いフロリダが本拠で、風力および太陽光による世界最大の再生可能エネルギー発電施設を保有しています。

同社の配当利回りは2.3%です。

同社株のリーマンショック後のトータルリターンは361%で、市場平均の2倍以上です。

生活必需品銘柄

経済状況のいかんに関わらず、人々は食事を取り、髪を洗い、家の掃除などいつも通りのことを続けます。

「リーマンショック時に上昇した銘柄」チャートには、生活必需品株として、鶏肉関連業者のサンダーソン・ファームズと小売食品サービス業界向け専門食品を製造するランカスター・コロニーが入っています。

「リーマンショック時に持ちこたえた銘柄」チャートに入っている生活必需品株の中でも注目されるのは、家庭用品およびパーソナルケア用品のチャーチ・アンド・ドワイト(NYSE:CHD)です。

170年以上の歴史を誇る同社は、米国人なら誰でも知っている「アーム・アンド・ハンマー」ブランドの重曹(食用ですが掃除でも使えます)を販売し、さらにそれを活用して付加価値の高い製品を展開しています。

同じチャートに入っているのは、冷凍パン生地やビーフジャーキーなどを製造するブリッジフォード・フーズとパン関連製品メーカーのフラワーズ・フーズです。

フラワーズは増配を継続してきた確固たる実績があり、配当利回りは3.3%で、この記事で言及している株の中で最も高い配当利回りです。

なお、フラワーズ以外の配当利回りは、サンダーソン(0.9%)、ランカスター(1.7%)、チャーチ(1.2%)、ブリッジフォード(配当なし)の通りです。

ヘルスケア銘柄

ジェネリック(後発医薬品)銘柄は、リーマンショック時でもパフォーマンスは相対的に安定していました。

不況になれば、多くの消費者が、有名だが高いブランド処方薬よりも安いジェネリック薬品を選択するのは当然でしょう。

「リーマンショック時に上昇した銘柄」チャートに入っているイスラエル企業のテバ・ファーマシューティカルは、リセッション時にトータルリターンは1桁台で上昇しています。

ただ、リセッション後は大きく落ち込んでいます。

ディスカウントストア銘柄

景気が悪くなれば、消費者は価格に敏感になります。

リーマンショック時には、世界最大のディスカウントストア・チェーンのウォルマート(NYSE:WMT)と1ドル均一で日用雑貨を販売するダラー・ツリーが堅調でした。

リセッションの18カ月間にウォルマートのトータルリターンは7%超となり、ダラー・ツリーは56%も上昇しました。ウォルマートの配当利回りは1.9%、ダラー・ツリーは配当を出していません。

高額購入を先延ばしにするのに有効な銘柄

リセッションになると、人々は補修等を行って自動車などの大きな買い物を先延ばしにします。

そのようなトレンドの恩恵を享受する銘柄として、「リーマンショック時に上昇した銘柄」チャートに入っている自動車部品販売のオライリー・オートモーティブがあります。

なお、オライリーは配当を出していません。

株式ポートフォリオ見直しの時期か

今は、株式ポートフォリオをややディフェンシブなスタンスに移行させるいい時期かもしれません。

経済環境に関係なく一定の需要がある製品やサービスを扱っていて業績が安定している配当株に注目すべきです。

上述のリップスティック株や生活必需品銘柄は検討に値するでしょう。

(米国株投資にご関心がある場合は、モトリーフールの下の記事をご参照ください。)

「米国株投資を始めるのに適した、国内のネット証券5社を比較」


フリーレポート配信

モトリーフールの日本進出にあたって日本の投資家、また、これから投資を始めたい方に向けて無料で「株式投資にどう臨むか -スペシャルフリーレポート-」を配信しております。

また、テクノロジー分野に投資したい投資家として知っておくべき情報も無料で配信しております。「人工知能というテクノロジーの「第三の波」が、日本の年間GDP以上の付加価値を生み出す」こちらからご覧ください。

ツイッターやフェイスブックで最新情報を配信しております。公式ツイッターアカウント@motleyfooljp公式フェイスブックアカウントをフォローする。

アマゾンの子会社ホールフーズ・マーケットのCEOであるJohn Mackeyは、モトリーフール社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Beth McKennaは、記事で言及されている株式を保有していません。モトリーフール社は、アマゾン株、ハズブロ株、ネットフリックス株を保有し、そして推奨しています。モトリーフール社は、ナショナル・ビバレッジ株を保有しています。モトリーフール社は、ハズブロ株をショートしています。モトリーフール社は、ナショナル・ビバレッジ株に関するオプションを保有しています(2019年10月の45ドルのショート・コール)。モトリーフール社は、ネクステラ・エナジー株を推奨しています。

最新記事