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ソフトバンク・ビジョン・ファンドが狙う近未来社会の覇権

世界中で巨額出資を連発するソフトバンクビジョンファンド(以下SVF)は、ソフトバンクの孫正義社長(以下 孫社長)がサウジアラビアのPIFのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子らと、2017年にロンドン特別区のシティに設立した投資ファンドのことです。

最大の特徴は約10兆円規模と言われる圧倒的な資金力です。

これはアメリカのシリコンバレーの年間投資額にも匹敵するため、新たなゲームチェンジャーの到来によるインパクトは絶大です。

なぜならSVFがどの分野に注目しているのかを知ることは、そのまま近未来社会を占うことにも繋がり、その巨額な投資額の恩恵を受けた企業はアーリーステージから巨額な資金体力を持つため、その業界でのシェアを握る可能性が極めて高いのです。

孫社長がどの分野の覇権を狙っているのか、世界中の投資家や起業家にとって、その動向に目が離せない存在感を放っています。

ソフトバンクビジョンファンド(SVF)の仕組み

SVFには2つのファンドが存在し、ひとつはSVF、もうひとつがデルタ・ファンドと呼ばれる投資ファンドです。

この2つのファンドの総額が約10兆円近くにもなる、超巨大ファンドが誕生しています。

主な出資者はSVFがPIFの450億ドルを筆頭に、ソフトバンク(250億ドル)、ムバダラ開発公社(100億~150億ドル)、Apple(10億ドル)、クアルコム(10億ドル)、など錚々たる企業や政府直属の企業が参加しており、孫社長のずば抜けた営業力も注視したいところです。

どちらのファンドも2017年11月20日に誕生し、投資期間は5年間。ファンド自体は12年間存続するという期間限定のプロジェクトであることがポイントです。

現在のところ80社以上に約3兆円の投資をしており、残高がまだ7兆円近くも投資余力が残っているので、まだまだ今後の展開に目が離せません。

桁違いの巨額投資額

約10兆円規模という圧倒的な資金力を持つSVFの登場は、米国のベンチャーキャピタル業界に衝撃を与えるには十分な大きさと言えるでしょう。

なぜなら、前述したようにシリコンバレー全体の年間投資額に匹敵する額をSVFが保持しており、どのファンドもSVFと競合する力を持っておらず、まさに桁違いの規模なのです。

その界隈では有望なスタートアップ企業はSVFにオファーをもらえるかどうかが指標の1つとなっており、ベンチャーキャピタルにおけるサラリーバランスが崩れるのではと懸念する声もあります。

今まさに世界中のAI企業が淘汰され、新たな潮流が生まれる変化の激しい時期にあると言えるのではないでしょうか。

出資先の企業の特徴

SVFは北米やヨーロッパ、アジアを中心に様々な分野の企業へ出資しています。

例えば衛生インターネットのワンウェブや日本でもお馴染みにウィーワークやウーバーテクノロジーズなど、次世代を担うサービスを提供する会社から、ガン検査の簡略化に挑戦しているガーダントヘルスやインドア農業の分野で先頭を走るプレンティ、自動運転技術のナウト、中小企業を対象にオンライン融資を進めるキャベッジなど、業種は多岐にわたります。

こういったSVFの出資先を知ることで、従来のサービスをブラッシュアップさせたり、そもそも存在していなかったビジネスチャンスの可能性を知ることができます。

いずれにせよ、出資先企業から世界有数の企業が出現することで、より便利で安全な社会が実現されていくことが期待され、近未来を知ることへと繋がっていくのです。

特殊なファンド構造

SVFは資金の実に60%を債権で投資しています。

大部分が成功報酬ではないため、債権に関しては仮にファンドからリターンが出なくても、利息をつけてLPに対して返す必要があるという報道(WSJ)もあります。

このように返済義務がある形でLPから融資を受けるファンドはとても異例であると言えるのです。

それだけ返済に対しても自信があるという見方も出来るでしょう。

さらにSVFは2018年夏に約6360億円の借入をするだけでなく、追加でさらに約9000億円を借り入れして、これはLPへの支払いにも使われています。

つまり、LPから債権と成功報酬がミックスされた資金調達をしている点において、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルの双方の特性を持ちつつ、固定報酬を支払うためにLPから資金を調達することで、かなり積極的な投資を可能とする構造となっています。

かなり特殊なビジネスモデルのため、今後もどのような展開が待っているのか、そして2020年代の主役に躍り出るのか注目が注がれています。

モビリティ関連事業戦略

「モビリティ関連のAI(人工知能)企業への投資は、中核をなすほど大きな塊だ」このような発言を昨年の10月4日、孫社長はTOYOTAとの提携会見で語っています。

これを裏付けるようにSVFの投資先でも特に力を入れているのが配車アプリです。

現在、世界4強と言われるウーバー・テクノロジーズ(米国)、滴滴出行(中国)、グラブ(シンガポール)、オラ(インド)、これらの筆頭株主になっており、この4社で実に世界の9割のシェアを占めることを意味します。

これはIT企業がライドシェアや自動運転の市場をターゲットに自動車データを狙っているからです。

つまりAIにはビッグデータが欠かせず、孫社長も2018年夏から「AIを制するものが未来を制する」と発言しています。年齢や性別、収入や購入履歴などの豊富なデータがあるほど的確なターゲティング広告や需要の見通しを立てやすくなります。

つまりデータ覇権こそ、今後のビジネスで勝ち残るカギとなり、その中でも車は半導体の塊であり究極のIOTと位置づけています。

またGAFAを明らかに意識しており、グーグルやアマゾン、フェイスブックのAIは彼らの産業の範囲内(検索、eコーマース、SNS)と発言しています。

ソフトバンクは各産業のAIのトップと組むことでIT大手との明確な違いを示しており、これを「AI群戦略」と呼んでいます。

今後もこの成長サイクルは加速していくことが予想されます。

とはいえ、自動車関連のAI群戦略によって各企業が収集したデータをどのように活用するのか、まだ明確にはなっていません。

またデータ以外の技術で連携する可能性も考えられます。

AIをどのように活用していくのか、目が離せない展開がしばらく続きそうです。

TOYOTAと手を組んだソフトバンク

異業種との連携を急拡大させているソフトバンクですが、今回の提携はトヨタ自動車からと言われています。

なぜなら自動車業界は100年に1度の変革期と言われる時期にあり、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を軸にした異業種との激しい覇権争いが続いているからです。

事実、トヨタ自動車の豊田章男社長は「生きるか死ぬかの戦いが始まっている」と2018年の秋頃に発言しており、危機感を強めていることが伺えます。

2019年1月には、テクノロジー企業が集まる展示会として有名な米国のエレクトロニクスショーで「トヨタ自動車は車を造る会社からモビリティサービス会社に変わる」と発言しています。

象徴的なのがTRI(トヨタ・リサーチ・インスティチュート)です。

そして招聘したTRIのトップであるギル・ブラッド氏はAI分野の世界的権威であり、世界中から優秀なエンジニアを集めています。

またTRIの東京支社(TRI-AD)では、グーグル出身のジェームス・カフナー氏がCEOに就任し、現在のエンジニア270人を1000人規模に拡大させようとしています。

なぜならADは同じトヨタ系列のグループ会社であるアイシン精機やデンソーが出資する形で、トヨタと3社共同で3000億以上の技術開発が行われるなど、前例がなかった主力サプライヤーを巻き込んで次世代車に向けた技術開発が進められており、エンジニアの確保が生き残りの必須条件だからです。

またアマゾンを名指しでライバル視していたのが一転、ソフトバンクを絡めた異業種間のグループ作りが加速しています。

これも孫社長が薩長同盟に例えたようにSVFが発足したことによる大きな流れであることは間違いありません。

従来とは違った異業種間の生き残りを賭けた戦いが始まっており、孫社長が筆頭となり、トヨタ自動車も明らかなギアチェンジを意識した経営戦略を打ち出そうとしているのです。

これもSVFがあってこそ実現した協力体制だと言われています。

2020年代はソフトバンク・ビジョン・ファンドが覇権を握るのか

2019年5月9日、ソフトバンクの孫社長は2018年度の決算発表をしました。

売上高は前年比の4.8%増の9兆6022億円、営業利益は前年比80.5%増の2兆3539億円と大幅な増収増益を達成しました。

躍進した理由は、SVFによる投資利益が大きな役割を果たしており、SVFは前年度から9536億円増の1兆2566億円にまで達しています。

これに伴いソフトバンクの当期純利益は1兆円を超える極めて好調な結果を出し続けています。

これは投資先の企業が成長拡大していることを意味し、「ナンバー2は嫌い」と発言した孫社長の経営哲学通り、投資先はAIを活用した、その分野のナンバー1であることに拘り続けた結果を示しています。

今後は新たに第2号となる投資ファンドの立ち上げを表明しており、ソフトバンクの成長曲線は驚くことに助走段階といえるのです。

今後も加速度的な成長を続けていくことはもはや既定路線であり、孫社長は2020年代にSVFと共に近未来に確実にやってくるAI社会の覇権を握るトップランナーとして、今後も目が離せない存在なのです。


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記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。

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