バンガードの米国高配当株式ETFで注意すべきこと

モトリーフール米国本社、2019年6月14日投稿記事より
米国の高配当利回り株への平易な分散投資を追求する配当投資家は、その名前に基づいて「バンガード・米国高配当株式ETF(NYSEMKT:VYM)」に魅了されるかもしれません。
このETF(上場投資信託)は名前だけで明確な投資商品特性を提示しているように見えますが、十分ではありません。
以下は、このETF購入前に知る必要があるいくつかの重要な事実です。
1. 低コストで投資可能
ETFの有利な面は、非常に低コストで投資できるということです。
このETFの場合、経費率は年間わずか0.06%で、配当株投資の中で最も低い経費率の一つです。
その理由はいくつかあります。
第一に、ETF分野での競争はかなり激しくなっており、低コストが重要な差別化ポイントだということです。
次に、このETFは、世界最大の資産運用会社の1つであるバンガードによって運用されています。
それは、小規模のプレーヤーには欠けているスケールメリットをもたらします。
また、バンガードは顧客の利益を自らの利益よりも重視する点で非常に高い評価を得ています。
2.リスクとリターンの関係
2007 年から2009年の深刻な景気後退以来、低金利環境が続いているため、投資家は高い配当利回りを得られる株に関心を寄せてきました。
これが、配当株の強いパフォーマンスにつながりました。
5月までの過去10年間で、バンガード・米国高配当株式ETFの年率トータルリターンは約13.4%でした。
これはS&P 500インデックスのリターンとほぼ一致しています。
そして、このETFのリスク面についてですが、3年、5年、10年の期間にわたり、リスクを示唆する標準偏差(絶対ボラティリティの尺度)がS&P 500の標準偏差よりも低いのです。
また、相対的なボラティリティの尺度であるETFのベータ(この場合、S&P500に対する感応度)は、過去5年間および10年間で約0.90です。
繰り返しになりますが、このETFはS&P 500インデックスよりも変動が少ないことが歴史によって証明されています。
つまり、リスク・リターン特性で見た場合、このETFは、中程度から保守的なリスク許容度を持った投資家向けの商品であると考えられます。
3.それほど高くない配当利回り
このETFは約3.2%の配当利回りを提供しています。
これは、S&P 500インデックスファンドの約2%の利回りを超えていますが、このETFの名前ほど大きく上回っているわけではありません。
「高配当利回り」をうたうETFの名前として、何とか許容できるところでしょう。
4.ETFの詳細
配当利回りがそれほど高くないのは、ETFの投資アプローチによるものです。
このETFはFTSE All-World High Dividend Yield Indexに追随します。
バンガード・米国高配当株式ETFを理解するには、FTSE All-World High Dividend Yield Indexを理解する必要があります。
バンガード・米国高配当株式ETFの保有銘柄トップ10(2019年7月末現在)
企業名 | 時価総額 | 予想配当利回り |
JPモルガン・チェース | 3475億ドル | 3.34% |
ジョンソン&ジョンソン | 3490億ドル | 2.89% |
エクソンモービル | 2939億ドル | 5.10% |
プロクター&ギャンブル | 3009億ドル | 2.50% |
AT&T | 2585億ドル | 5.83% |
シスコシステムズ | 2144億ドル | 2.89% |
シェブロン | 2227億ドル | 4.11% |
ベライゾン・コミュニケーションズ | 2357億ドル | 4.25% |
インテル | 2125億ドル | 2.67% |
ファイザー | 1946億ドル | 4.16% |
出典:バンガード。時価総額と予想配当利回りはYAHOO! FINANCEで、2019年8月19日時点
FTSE All-World High Dividend Yield Indexは、世界中のすべての配当株をカバーし、それらを予想配当利回りに基づいて並べることによって構築されます。
REIT(不動産投資信託)は、税金の問題により除外されています。
REITの分配金は所得として課税されるからです。
一回限りの特別配当を支払った企業のように、配当が継続して行われていない企業も除外されます。
この後、インデックスはリスト全体の時価総額の50%に達するまで上から下に銘柄を追加します。
株式は実際には市場の時価総額によって組入れ割合を変化させています。
このリストは、年に2回更新されます。
ここで重要なことは、最も配当利回りの高い株が必ずしもこのETFの最大保有銘柄にはならない、ということです。
このETFには時価総額が最大の株が含まれていますが、そのためにETFが受け取る配当を低下させるという影響を及ぼしています。
それは通常、より大きくより強い企業の時価総額が大きいためです。
通常、人気のない小企業が高い配当利回りを出しています。
つまり、「高配当株式」という言葉がETFの名前の中にありますが、それはETFの本質を表してはいません。スクリーニングの基準として、高い配当利回りを使用しているだけです。
その後に行われること、つまり時価総額による加重により、ETFの名前を見たときに予想されるのとは異なる、ポートフォリオ利回りにつながります。
利回りで重み付けすると、リスクの高い銘柄へのエクスポージャーが増加し、ファンド全体のリスクが増加する可能性があるため、時価総額による加重は本質的に悪いことではありません。
しかし、それは投資家が期待するよりも低い配当利回りをとなる可能性が高いことを意味します。
(米国株投資にご関心がある場合は、モトリーフールの下の記事をご参照ください。)
「米国株投資を始めるのに適した、国内のネット証券5社を比較」
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元記事の筆者Reuben Gregg Brewerは、エクソンモービル株とプロクター&ギャンブル株を保有しています。モトリーフール社は、プロクター&ギャンブル株をショートしています。モトリーフール社は、ジョンソン&ジョンソン株とベライゾン・コミュニケーションズ株を推奨しています。