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揺れる仮想通貨の税制。分離課税期待も道は遠い

仮想通貨が再び市場で注目を集めています。

大手SNSサイトFacebookの開発する仮想通貨リブラも日本の国会で取りあげられています。

仮想通貨は暗号資産という呼称になるという改正案も閣議決定されました。

しかし、仮想通貨の売買で市場関係者や投資家の多くが不利な税制だと考えている雑所得と、総合課税から申告分離課税への移行への道は険しいようです。

キャピタルゲインに対する課税のあり方次第で、同じ運用成績でも実質的に手元に残る資産は大きく変ります。

投資家として仮想通貨の動向はもちろん注目しておくべきですが、仮想通貨が既存の社会とどのように折り合いをつけていくかも、注意深く見守らなければいけません。

資産形成に不利な仮想通貨の総合課税・雑所得

仮想通貨は資産形成に不利な総合課税・雑所得に分類されていおり、仮想通貨の売却益に対する課税は最大で55%にもなります。

しかも雑所得は給与などの所得と合算されます。

高所得のサラリーマンが仮想通貨のキャピタルゲインで稼ごうとした場合は、いきなり利益に対して累進課税による高い税率が課せられます。

さらに仮想通貨の取引は他の株取引や先物取引などとの損益の通算もできません。

したがって利益を出しても大きな課税、損を出しても他のアセットとの運用と合算できないなど、実際に取引すればするほど税金の厳しさがわかります。

極論を言えば米国株投資で100万円の損を出し、仮想通貨取引で100万円儲かってもプラスマイナスでゼロという訳には行かず、しかも給与所得次第では数十万円以上もの税金だけが残ってしまうのです。

いくらビットコイン相場が好調といっても税引き後までも含めた運用成績を考えると、リスクの割にリターンが大きいとは決して言えないのではないでしょうか。

仮想通貨の税金の取り扱いはとても難しい

国税庁のHPには仮想通貨に対する課税についてまとめられています。

参考:国税庁

仮想通貨の課税はデリケートな情報のため、ぜひ一次情報を参考にしてほしいのですが、運用するにしても商品を購入するにしても、煩雑な計算をしなければいけません。

しかも仮想通貨同士の交換でも利益とみなされます。

例えばビットコインとイーサリアムのペアを交換したら、日本円換算で計算をしなければいけませんが、個人投資家や一般的な人が、いちいち細かく正しく計算するのも大変です。

多くの個人投資家は普段の生活や仕事をしながら投資もするはずですが、取引や決済の度にこのような面倒な計算をし続けるのは、現実的に考えると非常に難しいでしょう。

FXも昔は総合課税。分離課税への移行は2012年だった

投資家の間では仮想通貨の課税もかつてのFXのようになるのではという期待もあります。

2000年代半ばごろにFXブームがありました。ミセス・ワタナベという日本人の小口投資家の総称です。

欧米の報道機関が名付けた名称ですが、外国為替市場でも日本人投資家が一大勢力として認識されるほどには日本のFX業界は盛り上がっていました。

しかし当時のFXブーム時は、現在の仮想通貨と同様にFX所得は総合課税の対象とされていました。

つまり現在の仮想通貨と同じように税制上で不利な扱いでした。

2005年に取引所FX(くりっく365)が登場し、取引所FXのみ申告分離課税が適用され、2012年に一般的なFXの課税が申告分離課税に一本化されました。

先物取引等の分類にFXはあたるため、上場されている株式などとの損益通算まではできません。

しかし先物等との損益の合算と申告分離課税で売却益に対して約20%の課税で済むようになりました。

仮想通貨投資家の間でもFXのように将来的には総合課税から分離課税になるのではという期待の声もあります。

仮想通貨の税制は国会で審議されているが、国税庁は分離課税を認めず

仮想通貨の税制は国会でも実は何度かとりあげられています。

参議院議員の藤巻健史氏は国会での答弁で、仮想通貨の売却益も総合課税から譲渡課税へ、最終的には分離課税になるべきではないかという主張を繰り広げました。

藤巻氏の仮想通貨税制を変える会では、

  • 最大税率55%の総合課税から税率20%の分離課税にすること
  • 通貨を換える時に非課税
  • 少額使用時の非課税
  • 損した際に、分離課税にして繰越を認めること

この4点が主張されています。

この4点は仮想通貨取引や決済に利用したい人達の多くが希望するところでしょう。

これが実現すれば税制的には株投資と同じような税負担で仮想通貨取引ができるようになります。

参考:仮想通貨税制を変える会

しかし国税庁や麻生財務相の反応はネガティブです。

麻生財務相は「株式の分離課税は、所得税の再分配機能を一定程度損なったとしても、家計の株式等への投資を後押しする“貯蓄から投資”という政策的要請を前提としたものであるため、これと暗号資産を同列に扱うことは難しいのではないか」と言います。

国税庁も雑所得・譲渡所得化の議論については避ける態度でした。仮想通貨の分離課税への道は険しそうです。

既存の社会と折り合いがなかなかつかない仮想通貨を資産形成の手段にできるのか

仮想通貨市場は現在、再び盛り上がりを取り戻そうとしています。

ビットコインの相場も再び上昇しはじめました。

しかし現在の仮想通貨の置かれている税制を考えると、資産形成の手段としては、仮想通貨そのもののボラティリティや安全性などもそうですが、仮想通貨を取り巻く税制や社会の体制も逆風となっています。

麻生財務相の国会での発言でも、株式の分離課税は家計の株式等への投資を後押しするための政策的要請であると言います。

裏を返せば株投資による資産運用は国策の後押しを受けている一方で、仮想通貨は既存の社会体制との折り合いが十分についていないとも言えます。

既存の社会体制との折り合いを仮想通貨が今後つけていけるかどうかが課題です。

現状では仮想通貨は投資対象としても、決済手段としても非常に扱いが難しいと言わざるをえません。

資産形成には米国株投資は手堅い

米国株投資は日本の証券会社を通して運用する分には税制上もかなり優遇されているといって良いでしょう。

申告分離課税でETFや投資信託などとの損益の通算も認められています。

トレーディングでよく使われる先物関係のCFDやFXなどとの損益通算はできないものの、仮想通貨に比べればかなり恵まれているでしょう。

NISAやiDeCoなどのように税制上、有利な口座を通しても米国株や米国株関係のアセットへの投資は可能です。

株投資は資産運用の王道です。FXや仮想通貨取引にも魅力がないわけではありません。

しかしFXや仮想通貨は株投資のような「業績」などの分かりやすいファンダメンタルズ分析の指標も不十分です。

米国株は業績的にも右肩上がりの決算を出しているところも少なくありません。

また次々に新しいイノベーティブな時代を牽引する銘柄も多く登場しています。

若い方は仮想通貨取引に手を出しがちですが、株投資、特に世界を代表する米国株式市場の良さを改めて見直してみると良いでしょう。

仮想通貨は未だ社会との折り合いをつけている最中で取り扱いが難しく、国策から見ても逆風に投資先であることを忘れてはいけません。


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記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。
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