MENU

トラッキングストックとは?企業にとってのメリットを把握しておこう

グローバル企業の多くは同一企業の中に様々な業種が集約して事業を展開しています。

例えばコングロマリットと呼ばれる企業等は、M&Aを繰り返して異業種とのシナジー効果でさらに成長することを狙うものの、その成長サイクルにおいて成長著しい新たな分野が生まれるのと同時に、不採算部門によって企業全体の利益が減少することもあります。

この場合、会社を分社せずに成長分野に投資するトラッキングストックという手法があり、今回、詳しく解説していきます。

トラッキングストックとは?

トラッキングストックとは、種類株式に該当し、同じ会社の特定事業の業績を反映して連動するように設計された株式を指します。

例えば今後高成長が期待出来るAIやVRなどの事業を行っている会社があるとします。

ところがこの会社の本業が低成長であり、満足いく投資ができないケースがあるとした場合、どのように投資家から資金を集めるのか、その手段の一つがトラッキングストックなのです。

そして連動の対象となる該当部門のことを「ターゲット部門」、子会社の業績のみを連動させる株式を「ターゲット子会社」と呼びます。

その始まりは1984年のアメリカで、GM(ゼネラルモーターズ)がEDSという情報処理サービスの会社を、株式交換による買収に伴い発行されたクラスE株が最初の事例です。

この場合、成熟しているGMと成長企業のEDSでは、EDS株主にとってはGM株は急成長は望めず魅力的な話ではありません。

そこで、特定部門の成果に連動するトラッキングストックが発行されたのです。

注意が必要なのは、子会社の株式公開ではなく、トラッキングストックの株主はあくまでも親会社の株主であるため、議決権も対象の子会社ではなく親会社に対して行なわれます。

企業がトラッキングストックで上場するメリット

トラッキングストックによる上場のメリットは、会社を分割するわけではなく、事業部門を全くの別会社として分離して独立させることと比較すれば、そのハードルが随分と下がることが大きなメリットといえます。

また何か不測の事態が起きた場合でも、一つの会社として再出発しやすいのも魅力です。

そしてコングロマリット企業の株式時価が長年にわたって低迷してる場合、ベンチャー企業のように従業員の士気を高めるストックオプションの付与は難しいものの、成長分野である部門を有している場合、トラッキングストックを付与することで、モチベーションを上げることが期待できます。

また上場により資金を株主から集めることで、いち早く成長分野に投資できることもメリットといえます。

会社の未来を担う事業をさらに加速させることに繋がります。

企業がトラッキングストックで上場するデメリット

トラッキングストックによって上場すると、親会社と該当する特定事業の子会社の間で、利益をどのように分配していくのかが課題となります。

例えば、子会社の経営者の立場で考えると、普通株主とトラッキングストック株主の間で利益が相反する恐れがあり、事業構造をより複雑にさせてしまうデメリットが起こる可能性があります。

また、トラッキングストックが本当に特定の事業部門にどのぐらい連動するのかハッキリとしません。

なぜなら、法的には企業は分割されておらず、調達した資金は親会社に入るため、他部門の債務を負わされるリスク、利益や手元資金の流用リスクなどが起こる可能性があります。

これは*スピン・オフした場合も同じで、市場価値が分かりにくいことがデメリットといえます。

スピン・オフ…元の企業から出資してもらう形で独立し、独立後も親会社と子会社の資本関係が続く形のこと。また資本関係が続かず完全に独立する形のことをスピンアウトと呼びます。

日本でのトラッキングストックの歴史

日本ではほぼ事例がなく、会社法が施行される前の2001年、商法改正を待たずにソニーがネット接続サービス部門のソニーコミュニケーションネットワークをトラッキングストックの対象とした事例があります。

その当時、法務局は「現行法制上でも、特定の事業ではなく、特定の子会社の価値を反映させるトラッキングストックであれば可能」という見解を示し、種類株式の発行は難しいと回答していたものの、同年には商法改正によりトラッキングストック制度が整いました。

とはいえ、現在までに日本で広まっているとは言えません。

米国ではトラッキングストックの事例が沢山あり、いくつかの問題点も顕在化しています。

日本の産業界としても経営の選択肢や事業の柔軟性を加速させるために、より自由度の高い株式を発行できる仕組みが必要なはずです。

まとめ

21世紀に入り、ハイテク産業が盛り上がりを見せる中で、20世紀のようなタテ構造の産業ではなく、異業種間での競争が国境を越えたグローバルで熾烈なものへと変化しています。

例えばEC産業の雄であるアマゾンの登場によって、全米の小売業界は大きく塗り替えられました。

けれどもアマゾンですら未来永劫、繁栄し続けるとは限りません。

「万物は流転する」という言葉がありますが、今後も絶えず新たな企業やサービスが生まれていくはずです。

そういった時代において、制度の確立や変革は、日本がどのようにグローバル産業を育てていけるのかを考えることでもあるのです。

いつの日か、現在のGAFAのような世界的企業を超えていく企業が日本から誕生するかもしれません。

成長著しい民間企業の足かせにならないよう、法整備においても時代の鏡となることが求められています。

トラッキングストックもまた、その一例であると言えます。


フリーレポート配信

モトリーフールの日本進出にあたって日本の投資家、また、これから投資を始めたい方に向けて無料で「株式投資にどう臨むか -スペシャルフリーレポート-」を配信しております。

また、英国のEU離脱が差し迫る中、投資家として知っておくべき情報も無料で配信しております。「ブレグジットの混乱を乗り越えて、よりよいポートフォリオを構築しよう:5ステップの投資ガイド」こちらからご覧ください。

ツイッターやフェイスブックで最新情報を配信しております。公式ツイッターアカウント@motleyfooljp公式フェイスブックアカウントをフォローする。

最新記事