The Motley Fool

米国インフレ長期化懸念でチェックしておきたい米国インフレヘッジETFとは?

ETF
出典:Getty Images

米国株式市場ではここ最近、景気回復に伴うインフレ基調がしばしば話題にされてきました。

ただ、米国のインフレが一過性のものなのか、あるいは持続していくものなのかは現時点ではわかりません。

FRBの見解では今のところ、一過性のものであるという立場が取られています。

しかし、ここ最近の米国の主要な経済指標を見ても、経済回復を裏付けるものが数多く発表されており、インフレがかなりの間にわたって持続する可能性も否定できません。

投資家にとってはインフレで運用資産の実質的な価値が目減りすることは避けたいところです。

インフレをヘッジしつつ、インフレを上回るパフォーマンスを上げることは多くの投資家の目標となっているのはないでしょうか。

もし、昨今の米国のインフレ基調が今後も持続するだろうと考えている投資家の方にとって、今回ご紹介する米国インフレヘッジETFは一つの選択肢になるかもしれません。

インフレヘッジ目的の運用先として真っ先に挙げられるのはゴールドです。

しかし、金鉱株や金鉱株ETFなどを除いて、基本的にゴールドは配当がありませんし、金鉱株ETFも分配金はさほど多くないものがほとんどです。

一方でインフレヘッジETFの場合は、分配金がありますのでインフレヘッジ手段として、分配金のメリットも享受できます。

そこで今回のコンテンツでは、その特徴と代表的な米国上場のインフレヘッジETFについてお伝えしていきます。

米国インフレヘッジETFの仕組み

インフレヘッジETFとは、元本部分がインフレ率に連動して変動する債券で運用されるETFのことです。

その中身は物価連動債から構成されるために「物価連動債ETF」とも呼ばれています。

債券は元々、インフレリスクに弱い金融商品であることはよく知られています。

しかし、インフレヘッジETFは、インフレ率の変化に応じて元本部分が調整されるため、インフレ上昇が中長期にわたって持続した場合には利払い額や償還額が増加していきます。

つまり、インフレが続いても通常の債券と異なり、実質的な価値が目減りしない商品ということになります。

インフレヘッジETFを構成する物価連動債は、債券のクーポン利率こそ固定されていますが、元本部分については物価が1%上昇すると同じように1%上昇します。

例えば、利回り1%、元本10万米ドルの確定利付債を物価連動債と比較してみます。

この条件の確定利付債の場合、運用初年度は利回りが1,000米ドルで元本はそのまま、2年目は利回り1,000米ドル、元本不変ということになります。

これが、インフレ率3%の場合の物価連動債では利回りだけでなく、元本部分が大きく変動することになります。

物価連動債の場合、運用初年度こそ利回りは1,000米ドルですが、元本部分はインフレ率を加味した103,000米ドルになります。

さらに2年目になるとインフレ率の部分だけ増加した元本に対する利回りになります。

そのため、元本103,000米ドルの1%に相当する1,030米ドルが2年目の利回りです。

また、2年目の元本は1年目の103,000米ドルに、インフレ率を考慮した3,090米ドルを合わせた106,090米ドルとなります。

物価連動債は、インフレの上昇が全くないという想定下での債券価格である「実質価格」で取り引きされています。

この実質価格にインデックス・レシオを掛け合わせることでインフレによる価値の上昇分を加えて売買決済がされます。

一方で物価連動債の利回りについては、償還時点まで保有した場合の利回りとなり、インフレ上昇分が加算される前の実質価格を基準として計算されます。

インフレヘッジETFが「優位性」を持つ条件とは?

インフレヘッジETFを保有すると最も優位性があると考えられる条件としては、ズバリ「高いインフレ水準」と「実質金利が低い水準状況」が保たれていることです。

例えば、インフレ率が上昇している一方、中央銀行が景気や雇用面への配慮から利上げに踏み込めないような状況が挙げられます。

これはまさに今のアメリカの状況そのものと言えるでしょう。

FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、今年2021年8月27日のジャクソンホール会合において、テーパリングの年内実施の可能性について発言する一方で、利上げ開始は急いでいないという考えを示しています。

あくまで上昇しているインフレ率も一過性のものであるという従来からの考え方を改めて示しています。

インフレがFRBの考えているように本当に一過性のものであり、数カ月で落ちついてくれば、上記の前提条件は反対に働く可能性もあります。

しかし、一方で今年8月までに発表されている直近数カ月の力強い米雇用統計は、経済再開によりパンデミックで仕事を離れていた人達への再雇用意欲が強いことを明確に表しています。

とりわけパンデミックの影響をまともに受けたサービス業などの分野では、労働力不足が深刻とも言われています。

労働力不足が顕著化している状況では、当然ながら賃金上昇の可能性が十分に考えられます。

賃金上昇と景気は互いに深く結びついているため、本格的な経済再開に伴って、しばらくはインフレ率が高止まりしやすい環境にあることは間違いないでしょう。

インフレヘッジETFの注意点

インフレヘッジETFの運用対象となる物価連動債は実質価格で取引されています。

そのため、実質金利が低下する局面では、キャピタル・ゲインが得られます。

しかし、その反面、実質金利が上昇する局面においては、キャピタル・ロスが発生してしまう点には注意を要します。

さらに実際のインフレ率が想定されたものよりも低下する場合、物価連動債のインカム・ゲイン(クーポン収入部分)のパフォーマンスは悪化する点にも注意が必要になってきます。

これは想定よりも低いインフレ率で元本が調整され、その元本をベースにしたクーポン収入が低下するためです。

注目すべき代表的な米国インフレヘッジETF

次に2つの代表的な米国インフレヘッジETFをご紹介していきます。

資産運用において昨今のインフレへの対策が積極的に必要だと考える方の場合、一つの運用先として候補となりそうなETFです。

ファクトシート(2021年8月25日時点)

ファンド名 iシェアーズ米国物価連動国債ETF(iShares TIPS Bond ETF:TIP) バンガード米国短期インフレ連動債ETF(Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities Index Fund ETF Shares:VTIP)
1年トータルリターン 6.44% 5.62%
3年トータルリターン 7.18% 4.52%
5年トータルリターン 4.57% 3.15%
純資産総額 330億米ドル 160億米ドル
経費率 0.19% 0.05%
年間配当利回り 1.87% 1.35%
投資対象資産 債券 債券
分配 毎月 四半期毎
ベンチマーク ブルームバーグ・バークレイズ米国TIPS インデックス(シリーズL) ブルームバーグ・バークレイズ米国TIPS(0-5年)インデックス(シリーズL)
上場市場 NYSE アーカ ナスダック
ファンド運用開始日 2003年12月4日 2012年10月12日
運用会社 ブラックロック バンガード
日本国内取扱

ネット証券会社

SBI証券、マネックス証券、楽天証券 SBI証券、マネックス証券、楽天証券

(データ出典:ブルームバーグ、モーニングスターおよびヤフーファイナンスより筆者作成)

iシェアーズ 米国物価連動国債 ETF(TIP)

iシェアーズ 米国物価連動国債 ETF(以下、TIP)は、米国の物価連動債に分散投資を行なうファンドで、ブルームバーグ・バークレイズ米国TIPS インデックス(シリーズL)をベンチマークとしています。

保有銘柄数は48銘柄で、その全てがAAAの格付けの米国国債です。

分配頻度は毎月となっており、後ほどご紹介するバンガードのVTIPが四半期ごとであるのとは大きく異なっています。

TIPのパフォーマンスを1年、3年、5年の各期間別のトータルリターンで比べると、VTIPよりも全ての期間にわたって上回っています。

これはTIPのほうがVTIPよりも保有資産の平均残存期間が長いこと、厳密に言えば平均実効デュレーションが長いためです。

両者の特徴の違いをひと言でいえば、TIPは残存期間の長い債券を中心に保有し、VTIPは短い債券を保有するファンドということになります。

一般的に残存期間の長い債券のほうが、債券利回りが高くなります。

さらにコールオプションの影響が考慮された実効デュレーションでは、さらにデュレーションの値が長いほど、債券価格の金利に対する感応度が高い(コールオプション行使による繰上償還実施の可能性後退)ため、金利上昇局面での値下がりが期待できるのです。

TIPの実効デュレーションは、約8年(7.69年、2021年8月25日時点)となっており、モーニングスターによれば、同社の同カテゴリー平均値である6.94年を上回る長さです。

また、VTIPとの比較では、VTIPの実効デュレーションが2.82年という短さとなっています。このような期間の差がパフォーマンスの違いとなっているわけです。

ただし、注意が必要な点として、この残存期間・デュレーションが長ければ長いほど、価格変動リスク(いわゆるボラティリティリスク)が高まることです。

なぜなら期間が長ければそれだけ市場の変化の影響を受けやすく、金利変動に対する感応度が高いために債券価格の変動幅も大きくなる傾向があるからです。

尚、TIPへの直近の資金流入は、昨今の米国インフレ率上昇を受けて、過去最高を記録しています。

ブルームバーグによれば、TIPは今年2021年7月23日にはおよそ14億米ドルの資金流入となりました。

インフレヘッジとならない、同じブラックロックのiシェアーズ米国債ETF(GOVT)が過去最大となる13億米ドルの資金流出を記録したのと対象的な結果となっています。

それだけアメリカでは多くの投資家からインフレリスクへのヘッジ手段として、このTIPが支持されたということでしょう。

バンガード・米国短期インフレ連動債ETF(VTIP)

上記の米ブラックロックに次いで、世界2位の資産運用会社となるバンガードのバンガード・米国短期インフレ連動債ETF (以下、VTIP)です。

バンガードは昨年2020年8月に中国本土市場に経営資源を傾けるべく、日本から撤退した会社です。

VTIPはブルームバーグ・バークレイズ米国TIPS(0-5年)インデックス(シリーズL)をベンチマークとするファンドです。

ブラックロックのTIPと違い、主に短期の物価連動米国債で運用されています。

そのため短期のインフレに対する感応度が高いという特徴があります。

同時に実効デュレーションが2.82年と短いために、ファンドパフォーマンスはTIPより劣る傾向があの反面、ボラティリティリスクはより低く抑えられます。

また、経費率については0.05%と他のバンガードのETF商品同様に、数あるETFの中でも低い水準です。

これは、それなりに低い水準であるTIPの0.19%よりも大きく有利であるため、手数料重視の投資家には魅力的です。

まとめ

今回は米国のインフレヘッジ手段として、物価連動債で運用されている米国インフレヘッジETFについてご紹介してきました。

同商品はアメリカでは主にリタイヤした個人投資家がインフレ率ウ上昇による実質的な資産が目減りするのを避ける意味で購入されています。

今回ご紹介したTIPもVTIPも日本の大手ネット証券である、SBI証券、マネックス証券、楽天証券のいずれでも取扱いがあります。

インフレヘッジが必要だと考える投資家の方においては、ポートフォリオの一部で運用を検討してみてはいかがでしょうか。

フリーレポート配信

優良企業30社で構成されるダウ平均株価は、1世紀以上にわたり世界中でフォローされています。ダウ構成銘柄の長年の良好なパフォーマンスを考えると、市場参加者が注目するのはごく自然なことで、最近はこれから紹介するダウ4銘柄が注目されています。

著名投資家も注目の優良大型株4銘柄」はこちらからご覧ください。(メールアドレスの登録が必要です)

また、ツイッターやフェイスブックで最新情報を配信しております。

公式ツイッターアカウント公式フェイスブックアカウントをフォローする。

また、公式LINEアカウントの方では、投資初心者向けの情報を発信しています。
友だち追加

免責事項と開示事項 記事の作者、モントキアラは、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

最新記事