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エネルギー需要が世界的に本格回復すればチャンス到来か。エネルギー系ファンドの米国「MLP」ETF

出典:Getty Images

MLPはエネルギー・インフラ系のファンドであるため、景気変動を受けにくい運用先としてしばしば紹介されます。

しかし、実際のファンドパフォーマンスは原油価格や燃料需要から大きな影響を受けます。

今回ご紹介するAMLPも他のMLP同様、昨年の新型コロナのパンデミックによるエネルギー需要の大幅な減少により、およそ32%も基準価格が下落しました。

しかし、米国をはじめ、各国ではワクチン接種も進み、経済も本格的に再開されてきています。

そのような状況下で景気の回復と消費の拡大が進めば、そのままエネルギー需要の拡大へとつながっていきます。

そのような状況は米国MLPにはまさに追い風となります。

今回はそんな米国MLPと代表的な米国MLP ETFについてご紹介していきます。

MLPとは何か?

MLPとは、Master Limited Partnership(マスター・リミテッド・パートナーシップ)の略称で、投資家からの出資金を共同でエネルギー・インフラ関連企業に投資する事業形態のことです。

MLPは1980年代に米国で始まっており、ニューヨーク証券取引所やナスダックといった米国主要取引所で上場されています。

投資家から集められた出資金は主に原油や天然ガスといった化石燃料を中心にパイプラインや貯蔵施設、運搬事業をおこなう企業銘柄株や関連する銘柄で運用されているETFやETNを共同で保有しています。

投資家に配当として還元されるのは、保有企業のパイプライン使用料や貯蔵施設の利用料、さらに運搬事業からの収益源から、手数料等を差し引かれた残りの大部分となります。

米国で設立されているMLPの現在の数は100以上あり、MLP市場の代表的な指数は、米国アレリアン社のMLP指数となっています。

このMLP指数の基準日は、1995年12月29日を100としており、指数を構成するのはニューヨーク証券取引所に上場するMLP50銘柄です。

MLPの特徴

それでは次にMLPの特徴を詳細にお伝えしていきます。

MLPの主な収益源となっている川中事業

米国のエネルギー産業は大きく分けて、「川上」「川中」「川下」の3種類の事業領域があります。

米国MLPは100種類以上ありますので、上記3種類の事業領域の各事業会社に投資してはいるものの、主要な収益源となっているのは川中事業となっています。

3種類の事業内容をそれぞれ簡単にご紹介すると、まず川上事業では天然ガスや原油といったエネルギー資源そのものの開発や生産がおこなわれています。

MLPの主要な収益源となっている川中事業は、インフラ関連の事業が中心となっています。

川中事業では、採掘された原油の集積や貯蔵、天然ガスの集積や分離、貯蔵などがおこなわれます。

同時にパイプラインやタンカーなどによる原油や天然ガスの輸送も川中事業に含まれています。

川下事業は運ばれてきた原油の精製や天然ガスの化学製品の製造・販売を主な事業としています。

川中事業の事業内容と強み

MLPの多くが川中産業からの収益を中心として成り立っていますが、そこには川中事業ならではの強みがあります。

まず、挙げられるのがインフレ率に応じて使用料も変化するためにインフレに強いことです。

また、パイプラインや貯蔵施設といった大規模なインフラが必要なために参入障壁が高いことやそのような施設の使用契約が長期にわたるために収益やキャッシュ・フローの安定化が望める点も挙げられます。

さらにシェール革命以降に世界第1位になるまで増大した米国の天然ガスの生産量や輸出量の拡大も追い風です。

当然ながら生産や輸出が増えることで、インフラ施設への需要が高まったり、稼働率も上昇して収益拡大につながっています。

リートに似た特徴を持つMLP

MLPはパイプラインや貯蔵施設といった現物を保有する企業が使用契約に基づいて得られる施設利用料が主な収益源です。

そういった意味では、不動産を保有し、その賃料収入を収益源とするリート(不動産投資信託)にも似た特徴を持っていると言えるでしょう。

また、NYSEやNASDAQなど米国主要取引所で日々売買されており、流動性が高い点もリートに似ています。

MLPの今後の値動きに影響を与える要因とは?

MLPの今後の値動きに影響を与えているのが、エネルギー市況です。

お伝えしているようにMLPはエネルギー関連のインフラ事業をおこなう川中事業を中心に川上事業や川下事業を営めた関連企業銘柄株や証券で構成されています。

そのため、価格についてはどうしてもエネルギー市況に影響されます。

米国のエネルギー需要が拡大する局面では、MLPの基準価格は上昇するチャンスとなります。

原油や天然ガスなどのエネルギー価格

MLPの価格変動に大きな影響を与えているのは主に原油や天然ガスの価格です。

米国MLPは、パイプライン会社や貯蔵タンク会社といった川中事業会社が中心であるため、一般的には原油や天然ガスなどのエネルギー価格の影響を受けにくいとされています。

その理由は、仮に原油100万バレルを貯蔵する場合、原油価格に関わらず、貯蔵のための専有スペースも使用料も変わらいからです。

しかし、実際にはエネルギー需要の変化によって、生産量や流通量も変化するためにエネルギー価格の影響を受けてしまいます。

以下のチャートは米国MLP(Alerian MLP Index、アレリアンMLPインデックス:AMZ NYSE Arca)と原油や天然ガス、米国エネルギー株式に米国国債10年利回りを比較するための週足チャートです。

(出典:Tradingviewより筆者作成)

赤ラインの米国MLPを黒ラインのWTI原油先物価格や黄ラインの天然ガス(ヘンリーハブ天然ガス先物価格)の価格と比較すると、多少のブレはあるものの、ほぼ同じタイミングで上下に推移しているのがわかります。

原油も天然ガスは株式やリートなど他の資産同様、2020年3月のコロナショックの際には大きく売り込まれ、急落しました。

しかし、同年の終わりから今年にかけては欧米での経済活動の正常化やそれに伴う景気回復への期待感と、それに伴う原油を中心としたエネルギー需要回復への期待感が増したことなどから、上昇トレンドを築いています。米国MLPもそれに歩調を合わせるように上昇を継続させてきています。

また、青ラインは、米国のエネルギー資源関連株の代表的なインデックスであるS&P500エネルギー株指数になります。

この指数は、特に原油価格の変動に合わせた値動きを見せます。

景気回復を見越した原油需要の拡大に伴い、米国エネルギー株指数も上昇してきており、米国MLPはこの指数ともほぼ同様の値動きを見せています。

このように米国MLPは、原油や天然ガスといったエネルギー関連の代表的な指標から影響を受けており、結果としてほぼ相関した値動きを見せます。

米10年債利回り

原油や天然ガスに連動するような値動きを見せる米国MLPですが、その原油や天然ガスが米国10年債とは反対の値動きをするからです。

従って、米国国債10年の利回りも米国MLPの値動きに間接的に影響を与えています。

米10年債の利回りが上昇すれば、エネルギー関連の指数は下落しますので、米国MLPは同様に下落する可能性が高くなるわけです。

米国10年債については、最近その利回りに大きな影響を与えるイベントがありました。

それは2021年6月17日に終了した米国FRBのFOMC(米連邦公開市場委員会)です。

この中で、FRBによって2023年中にゼロ金利政策を解除する方針が示され、それまで2024年以降とされていた利上げ時期の予想外の前倒しが示唆されました。

これを受けて市場では早期利上げ観測が高まったために米国10年債の利回りが上昇しています。

予想を上回る緩和政策の早期転換によって市場の余剰なリスクマネーの回収が始まり、ここまでで買われ過ぎとされてきた株式や原油に調整局面が訪れる可能性も出てきています。

そうなれば原油や天然ガスなどエネルギー関連の指数が下落し、つられて米国MLPも下がる可能性が生まれます。

代表的なMLP ETFのご紹介~Alerian (アレリアン)MLP ETF

ここで米国MLPの代表的なETFとして、Alerian (アレリアン)MLP ETFをご紹介していきます。

ファクトシート(2021年6月25日時点)

ファンド名 アレリアン MLP ETF (Alerian MLP ETF: AMPL)
年初来の上昇率 47.97%
直近1年の上昇率 58.44%
純資産総額 52億9,000万米ドル
経費率 0.90%
年間配当利回り 8.84%
投資対象資産 マルチキャップブレンド株
投資対象セクター エネルギー
ベンチマーク アレリアンMLPインフラストラクチャー・インデックス(AMZI)
上場市場 米国 NYSE アーカ
ファンド運用開始日 2010年8月25日
運用会社 アレリアン

(データ出典:ブルームバーグ、モーニングスターおよびヤフーファイナンスより筆者作成)

MLP資産上位10銘柄の構成(全資産の80.09%、2021年6月25日時点)

保有資産構成 ティッカー 保有比率
Magellan Midstream Partners LP MMP 10.20%
Energy Transfer LP ET 10.12%
MPLX LP Partnership Units MPLX 10.08%
Western Midstream Partners LP WES 9.79%
Enterprise Products Partners LP EPD 9.71%
Plains All American Pipeline LP PAA 9.28%
Phillips 66 Partners LP PSXP 6.26%
DCP Midstream LP DCP 5.10%
Shell Midstream Partners LP SHLX 4.79%
NuStar Energy LP NS 4.76%

(上記データ出典:etfdb.comおよびヤフーファイナンスより筆者作成)

アレリアンMLP ETF(以下、AMPL)は米国MLP市場の代表的な指数である、ニューヨーク証券取引所上場のMLP50銘柄で構成されているAlerian MLP Index(AMZ)を算出する米アレリアン社のETFです。

AMPLは米国エネルギー関連事業25銘柄で構成される、Alerian MLP Infrastructure Index(AMZI)に連動し、NYSEアーカ取引所に上場する投資信託です。

このETFは同インデックスの価格と手数料・費用控除前の利回り実績と同等の運用成果を目指しています。

AMPLで特筆すべきなのが、8.84%という高い配当利回りです。

配当は年4回あり、高配当なETFの中でも利回りの高さは抜き出ています。

同時に0.90%というETFの中ではかなり高めの経費率は意識する必要があります。

基準価格については、コロナショック後の景気回復とエネルギー需要を追い風とした原油や天然ガスの上昇もあり、大きく値を伸ばしてきています。

保有資産は原油や天然ガス向けのパイプラインや貯蔵施設による、エネルギー製品の輸送や貯蔵、加工をおこなう大型・中型の企業銘柄株で構成されています。

保有銘柄数は全部で17銘柄ありそのうちのおよそ80%が上位10銘柄で占められており、リスク分散よりも川中事業に特化したETFであることが伺えます。

ポートフォリオに組み込む場合、高配当ETFの一つとして考え、他の保有資産でリスク分散する必要があります。

AMPLは日本国内大手ネット証券三社では取り扱いがありません。

サクソバンク証券のみの取扱いとなっています(2021年6月25日現在)。

尚、大手ネット証券三社でも取り扱われていた「Direxionザックス MLP 高配当ETF(ZMLP)」は昨年2020年10月16日に上場廃止となっています。

ZMLPはAMPL以上の高配当を誇り、日本人投資家の間でも人気がありました。

しかし、コロナショック後の急落やエネルギー需要の長引く低迷もあり、価格は軟調な状態が続き、運用継続も難しくなったために上場が廃止されました。

免責事項と開示事項 記事の作者、モントキアラは、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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