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犯罪の高度化とともに進化し続けるサイバーセキュリティ業界と主要銘柄

出典:Getty Images

ランサムウェア(身代金要求型のコンピューターウィルス)による情報機能マヒ事件や、ハッキングによる情報漏洩事件など、インターネットとDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進化とともに、情報セキュリティの必要性がますます高まっています。

最近も、米国の東海岸の重要地域を結ぶ、コロニアル・パイプラインのシステムが、ランサムウェアによって操業停止に追い込まれ、人々の生活、特にガソリン供給に支障が出て、ガソリン価格も急騰するなどの事態になりました。

また、食肉加工業のJBSのシステムがランサムウェアによって機能停止状態に陥り、やはり数日操業を停止せざるを得なくなりました。

サイバー犯罪の高度化に対応して、セキュリティも高度化しているものの、サイバー犯罪による被害総額は世界全体で約$6trillion(約654兆円)にも上ると言われており、それに比べると、サイバーセキュリティ業界は小さく、まだまだ成長の余地があると考えて良いかと思います。

被害総額に比べて、このサイバーセキュリティ業界の売り上げは、2019年の$156bil(約17兆円)、2020年には$170billion(約18.5兆円)に増大してはいるものの、比較にならないくらい小規模です。

急速に拡大しており、2021年には$200bilに到達し、その後も年率+15%で2027年まで拡大し続けるという予想もされています。

そうした中で、それぞれのニッチを持ったプロバイダーが様々なセキュリティー・サービス、アプリケーションを提供しています。

この業界は、急速に環境が変化していることで、強い競争力を持った、新たな小さな企業が数多く存在しており、生き残りや競争優位性の確保のために過去数年はM&A数多く起きてきました。

2020年、このセクターは非常に良いパフォーマンスであった(+116%、NASDAQは+44%)こともあり、今年はNASDAQ同様、調整している様子です。

ファイア・ウォール、エンド・ポイント、ゼロ・トラスト、ID&アクセス・マネジメント、セキュリティ・アス・ア・サービス(SaaS)などとセキュリティーに関する考え方、対処方法もどんどん進化しています。

そして、大きな流れとして、オン・プレミス(自社の中で情報システムを保有し、自社内の設備によって運用する形態)から、クラウドベースのソリューションに変わってきています。

この業界の特性として、多くの企業がその収入のほとんどをビジネスの拡大と犯罪の高度化に対応するR&Dに向けており、収益(GAAPベース。一般会計基準ベース)は出ず、まだしばらくは赤字が続きそうであるため、PERをバリュエーション指標としては使用できない状態です。

とはいえ、業界全体としての売上の拡大は当面は非常に大きいことはほぼ間違いないことと考えられています。

バリュエーションとしては、売上やキャッシュフローで判断せざるを得ないかと思います。

また、企業の情報アーキテクチャが、オン・プレミスからクラウドベースに移行してきていることなどを考えても、それに合わせた競争優位性の維持拡大のためのM&Aも引き続き活発に行われると考えられます。

業界の主なプレーヤーとしては、

  • Check Point Software
  • CrowdStrike Holdings
  • FireEye
  • Fortinet
  • NICE Ltd.
  • NortonLifeLock
  • Okta
  • Palo Alto Networks
  • Varonis Systems
  • Zscaler

上記10社が挙げられるでしょう。(ABC順)

今回、この中で、Palo Alto Networks、Okta、Zscaler、そしてNortonLifeLockについて簡単にご紹介していきたいと思います。

パロアルトネットワークス(NYSE:PANW)

この業界のリーディングカンパニーの一つです。

PANWは、ハードウェア・アプリケーションで業界をリードし、その評判を勝ち得てきましたが、次世代セキュリティー・ソフトウェア・ビジネス(ClaiSec)部門が急速に拡大しており、成長のドライバーになっています。

ハードウェア対応中心であったので、時代遅れでマーケットシェアを失いつつあった同社をこのClaiSec部門が救っています。

このClaiSec部門は2021年度前年比で+90%成長し、$605mil達すると見込まれています。

まだまだ全体の売上の2割に満たないですが、この成長率で、サイバー・セキュリティーの高度化に対応したソリューションの提供を行うことができ、リーディングカンパニーであり続けていくことが出来ると予想されます。

ClaiSec部門の成長の加速もあり、2021年度の予想売上は、経営によって2度情報修正され、+23%成長と見込まれています。

ビジネスも比較的順調であり、かつ財務的にも健全であることを考えると、このセクターへの投資では、まず検討すべき銘柄かと思います。

オクタ(NASDAQ:OKTA)

企業向けのIDマネジメントのリーディングカンパニーです。

同社はSaaS(Software as a Service, Security as a Service)モデルを導入しています。

クラウドベースのセキュリティーを提供する複数年のサブスクリプション契約が伸びており、収入は安定的に成長しています。

顧客には様々なサイズの企業、大学、NPO、政府機関などがあります。

最近、Auth0という企業の買収を発表。

Auth0は$200mil以上の年間収入が現時点でありますが、その成長率は+50%を上回っており、OKTAにとっては補完的な買収であり、統合後の成長の加速が期待されています。

ビジネスは40%以上で成長していますが、コストも同様に増加しているので、会計的な収益が出るまでにはまだしばらく時間がかかりそうです。

成長著しいクラウドベースのIDマネジメント分野のリーディングカンパニーであり続けると予想されており、サイバー・セキュリティー分野で今後も重要な役割を果たすものと考えられます。

ジースケーラー(NASDAQ:ZS)

ZSは、クラウド・セキュリティーのリーディング・カンパニーであり、時代の流れに乗り非常に成長性の高いビジネスを行っています。

OKTAと同様にSaaSモデルを導入しており、SaaSでZero Trust Exchangeというサービスを展開しており、その下で、二つの旗艦サービスであるZscaler Internet Access (ZIA)とZscaler Private Access solution(ZPA)というサービスを提供しています。

ゼロトラストというのは、基本的に全てを疑ってかかる、あるいは、完全に信用しきらない(ファイヤーウォールの内側であっても)というスタンスでのセキュリティーの考え方です。

インターネットを介したクラウドベースでの情報処理が主流になりつつある中で、同社の提供するセキュリティー・サービスの重要性はますます高まっています。(因みに筆者が勤務する会社でもZscalerのセキュリティーシステムを昨年導入していました)

売上の伸びは70%を越える成長を示していますが、一方で、COVID-19 のパンデミックで一気に広がったWFM(Work From Home、日本で言うリモートワーク)へのより効果的な対応(Go to market initiative)のためのR&Dコストが大きく増加していることもあり、会計上の収益化への道がまた伸びています。

この先行投資の効果が2021~2022くらいには出てくるものと予想されることもあり、引き続きビジネスは堅調に進むものと思われます。

ノートンライフロック

上の3つは法人向けのものでしたが、最後のノートンは、個人向けのセキュリティー・ソフト、アプリケーションを提供している企業です。

個人向けのセキュリティーの分野では、インターネット黎明期からリーディング企業であったように思います。

2019年にSymantec Enterprise部門をBroadcomに売却したことで、個人向けセキュリティー専業に移行しています。

Norton Life Lockという会社名と同じ名前のセキュリティー・サービス・パッケージを個人向けに提供しており、ビジネスの成長性は法人向けセキュリティー企業に比べると低いですが、安定的に収益が出る構造にまで成長していますので、バリュー投資家にも手が出しやすい銘柄かと思います。

最近では、日本で特に注目されているダーク・ウェブ・モニタリング(個人情報がダークウェブに流出していないかどうかをモニタリング)というモニタリングサービスも伸びており、新たなビジネス分野として期待されています。

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免責事項と開示事項 記事の作者、松本義和は、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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