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機関投資家の資金運用の在り方を変えた「デイビッド・スウェンセン」から学ぶ

出典:Getty Images

5月5日、イエール大学基金の運用マネジャーであり、CFO/CIOであったデイビッド・スウェンセン(David Swensen)が癌のため他界されました。享年67歳でした。

彼は、イエール大学の基金(寄付金で創設されているもの)の運用を1985年から担当し、開始時$1bil(約1,090億円)を2020年には$31.2bil(約3兆4,000億円)にしています。

35年で31.2倍、年率で10.33%のリターンです。

意外に小さいように見えるかもしれませんが、この数字は、毎年ずっと+10.33%のリターンを35年間出し続けるということで、異常とも思えるくらい凄い数字です。

同じ期間のS&P500は+5.57%ですので、S&P500のリターンのほぼ2倍を出し続けたとも考えられます。

アクティブのミューチュアルファンド(投資信託)の9割以上が長期ではS&P500に勝てないと言われている中で、この成績です。

彼が始めたイエールモデルと言われる投資法は、他の大学基金を始め、機関投資家の資金運用の仕方に大きな影響を与えました。

個人投資家の方にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、彼は個人投資家向けにも投資の在り方を説いた本も書いていますので、個人投資家への応用も含めて、彼の功績をお伝えしたいと思います。

デイビッド・スウェンセンの経歴と「イエールモデル」

スウェンセンは、イエール大学で経済学博士号を取得した後、ウォールストリートの投資銀行(ソロモン・ブラザース、リーマン・ブラザース。ソロモンはシティバンクに吸収合併され、リーマンは解体しています)で働いた後、1985年にイエール大学の基金マネジャーに就任しています。

イエール大学では、ディーン・タカハシと「イエールモデル」を開発しました。

このモデルは、現代ポートフォリオ理論を応用したものになっています。

特徴としては、考え抜かれて分散された資産配分(とリバランス)を強調していることです。

そして、順張り的というよりは、慎重に考えられた上での逆張り的な投資行動、規律ある投資行動を厳格に要求するものです。

分散すべき資産クラスとしては、TIPS、国債、不動産(ファンド)、新興国株式、国内株式(米国株式)、先進国株式を上げており、通常、分散されたポートフォリオと言われるものよりも、株式偏重になっています。

そして、もう一つ特徴的なのが、非流動性資産を中心に据えていることです。

リスク・リターンの関係からも明らかですが、流動性(換金性)が高いものは、比較的安全ですが、その分、リターンは低くなる傾向にあります。

スウェンセンは、流動性は、低いリターンという意味で割高であると考え、流動性の低いものへの投資を積極的に行なっています。

長期・超長期の運用をする投資においては、流動性は必ずしも必要ではないとし、プライベート・エクイティ・ファンド(ベンチャー・ファンドも含む)などを株式部分の投資として取り入れています。

下図は、昨年発表された、2021年度に向けての資産配分です。

約8割が非流動性資産であり、キャッシュ化にかなり時間のかかるものになります。(投資期間が10年以上になるものもあります)

この株式偏重・非流動性資産偏重の分散型ポートフォリオは、他大学基金の参考になり、有名大学の大学基金の多くが過半数の資産を非流動性資産に投資するようになっています。

各大学の非流動性資産割合は以下の通りです。

  • ハーバード大学:70.4%
  • スダンフォード大学:65%
  • プリンストン大学:72%
  • マサチューセッツ工科大(MIT):56.5%

現代ポートフォリオ理論を実践に導入しつつ、あくまでも投資目標と資金性格を考慮したリスク・リターン構成のポートフォリオの構築を目指していました。

「イエールモデル」を個人投資に取り入れる

こうした投資の考え方は、年金基金の運用にも影響を与えています。

インターネット・バブル、金融危機(リーマンショック)など、上場株式のパフォーマンスが良くなかった2000年代に流動性資産から非流動性資産への資産をシフトさせる動きが年金基金などでもかなり進みました。

日本でも、バブル崩壊後、株式市場がずっと低迷していたこともあり、株式のウェイトを下げて、非流動性資産のウェイトを上げる動きがずっと続いています。

ここ数年はオルタナティブ投資(非流動性資産への投資)ブームとも言われるくらい資金が非流動性資産に流れ込んでいます。

結果として、期待リターンの水準も切り下がってきてしまっているようです。

非流動性資産を中心とした運用というのは一般の個人投資家には残念ながら難しいです。(非流動性資産を投資対象とするファンドの多くが、機関投資家専用、もしくは最低投資金額が数億円というものであるため)

全く同じものは出来ませんが、分散の仕方を似た形で複製することは出来るかと思います。

この時問題になるのが、スウェンセンのイエールモデルは、米国の投資家としての立場からの分散の割合ですので、日本人投資家とは若干目線が異なるということになります。

前提条件として長期・超長期投資家であるということで考えているので、株式偏重のポートフォリオであり、70%株式、30%債券という配分が基本で構わないかと思います。

後は、この株式部分、債券部分をどう細分化していくかにあります。

イエールモデルでは、米国株式、先進国株式、新興国株式、そして、不動産も株式として扱っています。

不動産も実物投資をここに入れるとバランスが崩れるので、ここではREITもしくは不動産を対象とした投信、ETFなどで代用すればよいかと思います。

不動産現物を既に保有しているのであれば、この証券ポートフォリオでは、敢えて不動産を持つ必要はないかと思います。

米国の個人投資家向けの案としては以下のようなものがあります。

  • 30%…米国株式:Vanguard Total Stock Market(NYSEMKT:VTI)
  • 20%…不動産:Vanguard Real Estate(NYSEMKT:VNQ)
  • 15%…国際株式:Vanguard FTSE Developed Markets
  • 5%…新興国株:iShares MSCI Emerging Markets(NYSEMKT:EEM)
  • 15%…国債:iShares 20+Year Treasury Bond(NASDAQ:TLT)
  • 15%…TIPS:TIP iShares TIPS Bond

これをこのまま真似するのも一つの方法ですが、日本人投資家としての置かれた環境の違いも考慮する必要があります。

まず、日本株を単体でどのくらい持つべきか、また、国際株式(世界株式除く日本)として考えた時に、そのリスクとリターンのほとんどは米国株から来るので、国際株式の代わりに米国株式で置き換えるのも一つの方法です。

日本株・米国株を先進国株式のメインで保有し、新興国株式を補助的に持ち、債券部分では、日本の国債ではほとんど利回りもないので、グローバル債券と、国内物価連動債投資信託との組み合わせで良いかと思います。

細かいウェイト付けは様々な条件と、今後5年・10年という視点で見た時の経済の状況などを考慮に入れて決めていけば宜しいかと思います。

実際にポートフォリオを組むにあたっては、スウェンセンの個人投資家向けの以下の書籍で学んでいただいてから実行していただくのが良いかと思います。

「イエール大学CFOに学ぶ投資哲学」(デイビッド・スウェンセン著 日経BP社)

原題: Unconventional Success: A Fundamental Approach to Personal Investment

更に、イエールモデルについてより詳しく学びたい場合には、若干古いですが以下の本がお勧めです。

「勝者のポートフォリオ運用」(デイビッド・スウェンセン著 金融財政事情研究会)

原題:PIONEERING PORTFOLIO MANAGEMENT

理論も実践もこれほど理解して高いリターンを上げた人はほとんどいません。

是非、彼の投資哲学・アプローチを学んで、自分の投資のレベルアップに役立てていただければと思います。

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