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資産や負債の流動・固定の分類を行う正常営業循環基準と1年基準の関係は?

出典:Getty Images

賃借対照表などの財務諸表は会計基準に基づいて作成されます。

会計基準というルールがあることで業種や業態、規模が異なる企業の業績を比較できるのですが、会計基準を知っていないと企業分析を誤る可能性があります。

そこで今回は資産や負債の流動・固定の分類を行う正常営業循環基準と1年基準について解説します。

正常営業循環基準とは?

正常営業循環基準とは、正常な営業サイクルの過程において登場する項目(資産や負債)を固定・流動に分類するための基準のことです。

正常な営業サイクルというのは、次のように一般的な営業の流れを指します。

  • 現金で商品を仕入れる(買掛金などの仕入債務)
  • 仕入れた商品(棚卸資産)により売上(売掛金や受取手形などの売上債権)が発生する
  • 売上を現金化して回収

正常営業循環基準とは、上記の営業の流れにおいて発生する次の項目を固定・流動に分類するルールになります。

  • 現金
  • 買掛金などの仕入債務
  • 棚卸資産
  • 売掛金や受取手形などの売上債権

結果として賃借対照表を作成する際に、現金や売掛金、受取手形、棚卸資産は流動資産に、買掛金などの仕入債務は流動負債に該当されます。

賃借対照表における流動・固定の計上区分を分ける基準に1年基準(ワン・イヤー・ルール)を用いますが、正常営業循環基準は1年基準よりも先行して判断するルールです。

1年基準(ワン・イヤー・ルール)とは?

1年基準とは、賃借対照表において資産や負債が流動・固定のどちらに分類するかの基準です。

賃借対照表を作成してから現金化するまでの期間が1年以内なら流動資産・流動負債と見なされ、1年以上必要なら固定資産・固定負債と見なされます。

例えば、決済日の翌日から1年以内に返済日を迎える借入金は流動負債で、返済日が1年を超えるなら固定負債に分類されます。

正常営業循環基準と1年基準の関係は?

正常営業循環基準と1年基準は、どちらも賃借対照表を作成する際に資産・負債が流動なのか、固定なのかを分類する基準です。

しかし、企業会計原則注解・注16において、資産や負債を分類する際は、まず正常営業循環基準を適用するようにとなっています。

企業の主目的たる営業サイクルにより発生した債権や債務は流動・固定に分類され、主目的から外れた取引によって発生した債権や債務に対して1年基準を適用するのです。

正常営業循環基準で流動と固定の分類される資産や負債は次のものになります。

  • 受取手形
  • 売掛金
  • 前払金
  • 支払手形
  • 買掛金
  • 前受金

一方で、1年基準で流動と固定に分類される資産や負債は次のものになります。

  • 貸付金
  • 差入保証金
  • 未収金
  • 借入金
  • 受入保証金
  • 未払金

正常営業循環基準が先行して適用される理由は?

正常営業循環基準が1年基準よりも先行して適用されるのは、企業の業種や業態によって、企業の営業サイクルが異なるからです。

例えば、仕入れた商品がすぐに売上になる小売業と、物件や土地を扱う不動産業では営業サイクルの長さが違います。

仮に、1年基準だけで資産や負債の流動・固定の分類をした場合、営業サイクルが長い企業の固定資産の比率が極端に高くなる、あるいは棚卸資産や営業債権が膨らんで経営状態が悪くなったように見えてしまいます。

そのため、通常の営業サイクルで発生した資産や負債は1年という時間で縛らずに流動・固定の分類を行い、通常の営業サイクル以外で発生した資産や負債に対して1年という時間で流動・固定の分類を行います。

正常営業循環基準と関係のある指標

正常営業循環基準や1年基準で流動・固定の分類をされた資産や負債は、企業の財務状態が暗線かどうか確認するための指標を算出するのに用いられます。

  • 流動比率
  • 当座比率

流動比率とは、流動資産に対して流動負債がどの程度あるのかを示す割合です。

数値は次の式で求めます。

  • 流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動資産は短期間で現金になる資産で、流動負債は短期間で支払わなければならない負債のことを指しています。

つまり、この比率が高いということは、短期的な支払い能力が十分にあると分析できます。

当座比率とは、当座資産(現金や預金、受取手形など)に対して流動負債がどの程度あるのかを示す割合です。数値は次の式で求めます。

  • 当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

当座資産に該当する資産は主に現金や預金、受取手形、売掛金といった流動資産のなかでもすぐに現金にできる資産のことです。

つまり、当座比率はすぐに現金化できる流動資産に対して、流動負債がどの程度あるのかを示す割合で、流動比率よりもシビアに債務返済能力を見極める指標です。

流動比率と当座比率は、どちらも「短期間」での債務返済能力がどれぐらいあるのかを示しています。問題は、この短期間がどの程度なのかを理解することです。

上記でも説明したように、正常営業循環基準は正常な営業サイクルで発生した資産や負債を流動・固定の分類をしています。

そして、1年基準で残りの資産や負債を分類しています。

つまり、流動比率や当座比率を算出するのに用いた流動資産や流動負債が、正常営業循環基準と1年基準のどちらで分類されているのかをきちんと理解していないと、指標を誤って解釈する可能性があります。

例えば、通常の営業サイクルが長く、1年を超える売上債権や棚卸資産が多い企業に対して、経営状態が悪いのではないかと考えて投資先から外してしまうケースがあります。

まとめ

以上が、資産や負債の流動・固定の分類を行う正常営業循環基準と1年基準の解説になります。

正常な営業サイクルで発生した資産や負債は正常営業循環基準に基づき、それ以外で発生した資産や負債は1年基準に基づいて流動・固定の分類が行われます。

流動資産や流動負債を用いる流動比率や当座比率は自分で算出する数値のため、賃借対照表などの財務諸表がどのようなルールで作成されているのか知っておくと、より深い企業の分析が行えます。

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