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米新築住宅販売業界における需要急増の背景と今後の展望

出典:Getty Images

現在、アメリカでは国内西部の一部地域を除いて、新築住宅への需要が急増しています。

4/23に米国国税調査局及び米国住宅都市開発局が共同で発表した、2021年度3月次新築住宅販売統計によると、当該月における新築一戸建て住宅の販売件数は、季節調整済み年率で102万1,000戸となりました。

これは2021年度2月次における同販売件数の改定値である84万6,000戸に対して、20.7%の増加、そして前年同月比では66.8%の増加となっており、2006年8月以来の高水準となっています。

今回の住宅販売数増加に関して、2000年代前半にアメリカで発生した住宅バブルと重なる人が多いのではないでしょうか。

このバブルは結果的には2007年に崩壊し、リーマンショックなどの世界的な金融危機へとつながりました。

今回の住宅価格の上昇の今後と、株価に与える影響について考察していきます。

結論としては、今回の新築販売数増加は2000年代に発生した住宅バブルとは全く違うものであると言うことができるでしょう。

前回のバブル崩壊の背景と比較しながら、現在の状況を見ていきたいと思います。

米住宅市場における新築住宅販売数増加の詳細

今回の新築販売数増加に関して、2000年代に起きた住宅バブルと比較しながら詳しく見ていきます。

まず、人々の新築住宅への需要が高まっている原因について考えていきたいと思います。

最も大きな要因は、2020年初頭から続く新型コロナウイルスの流行でしょう。

昨年度以降のパンデミックの影響で、多くの企業や学校などで在宅ワークやオンラインでの活動が推奨されるようになりました。

一部企業などでは、パンデミック終息後も在宅ワークを主とする旨を発表しているところもあります。

そういった状況下で、人々の住環境に求める快適さや重要性の度合いが上がっていることは明らかでしょう。

現在、アメリカでは多くの人々が住宅を欲している一方で、中古住宅の減少と、それによる価格上昇が発生しています。

人々はより快適な住まいを求めて新築住宅への需要を募らせていますが、そもそも供給が圧倒的に追い付いていないどころか、市場への住宅の供給量は下がっている状態が続いています。

これは2000年代のバブルとの大きな違いの一つとなっています。

当時は需要増加とともに供給も増加していましたが、今回供給量はむしろ減少しています。

この原因については、建設業界におけるパンデミックの影響が考えられます。

特に2020年度では、これまでにない状況の中での建築方法の工夫や、建築資材や機器搬入の遅れ、営業停止命令などにより、建築可能件数が減少していることが考えられます。

そのため、現在新たに住宅を購入している人々の多くは比較的経済的に安定しており、信用リスクの低い人々であることが示唆されます。

つまり、これが最も重要なことですが、新築住宅を購入している人々の多くはサブプライムローンのような貸付者にとってリスクの高いローンではなく、支払い能力に対して適正なローンの下で売買契約を結んでいます。

アメリカでは、リーマンショック以降、住宅ローンの規制が大幅に変更されています。

現在では住宅ローン契約における貸付基準が大幅に引き上げられ、その新たな枠組みを管理するため、2011年に新しく消費者金融保護局が設立されています。

加えて、現在のパンデミック下における経済状況の悪化に伴い、多くの銀行が住宅ローンの契約に対して消極的になっています。

住宅ローンを発行する銀行の貸付への意欲の尺度である「住宅ローン信用状況」は2014年以降最低のレベルに近づいています。

さらに、ニューヨーク連邦準備銀行の公表している資料によると、住宅ローン契約者における信用スコアに関して、2000年代では約7割の契約者のスコアが759以下であり、さらにそのうち過半数が719以下となっています。

しかし、2020年度第4四半期においてはその比率は逆転しており、約7割の契約者のスコアが760オーバーとなっています。

2020年度第一四半期時点ではスコアが760を超えている契約者の割合は6割前後となっていますので、パンデミック下で確実に貸付基準が上昇していることがうかがえます。

以上のことから、2000年代前半の住宅バブル時と異なり銀行がローン契約者を絞ったうえでなお住宅価格が上昇しているため、今回の住宅価格の上昇は、2000年代前半の住宅バブルとは全く正反対の性質を持つ適正な需要増加による価格の上昇ととらえることができるのではないでしょうか。

米新築住宅需要増加が株価に与える影響

アメリカの大手建築資材小売企業であるホーム・デポ(NYSE:HD)の株価は、コロナ以前の2019年頃において220ドルから230ドル台で堅調な推移を続けていました。

コロナショック以降、一時的に150ドル台まで下落しましたが、すぐに持ち直し、2020年5月時点ですでにコロナ以前の水準を上回っています。

その後も2020年度は270ドル前後で安定していましたが、2021年3月以降急激に上昇し、現在はおおむね320ドル台で安定しています。

つまり、パンデミック下で同社株価は約1.5倍になっていることがわかります。

同様の株価の変化が同業他社であるロウズ(NYSE:LOW)にも確認できます。

続いて、米国最大手の住宅建設会社であるDRホートン(NYSE:DHI)及び、特に新築戸建て住宅を取り扱うレナー(NYSE:LEN)の株の値動きへの影響に注目します。

まず、DRホートンについてみていきます。

コロナ以前における同社株価は40ドル台後半から50ドル台で推移していました。

コロナショック直後は一時的に30ドル台まで落ち込みましたが、その後約1か月で元の水準に戻っています。

2020年度はそれ以降大きく値崩れすることなく右肩上がりの成長を続け、最終的には70ドル前後で安定しました。

そして現在、2021年3月以降、同社株価は急上昇をはじめ、ついに100ドルを突破しています。

続いてレナーですが、同社は現在シェアなどでDRホートンと比べてほぼ互角の立場にあり、基本的な株価の変動はDRホートンと変わりません。

同社も2020年を通してコロナ以前の約2倍の水準まで成長しています。

また、こちらも2021年3月以降大幅な株価上昇を開始し、100ドル前後で安定しています。

この両者の直近の大幅な成長は、冒頭で述べた2021年3月次の新築住宅販売件数増加を反映していると考えられます。

不動産連銘柄は、景気やその他の市場全体の動きなど様々な影響を受けやすくあまり安定した銘柄ではありません。

しかし、現在のアメリカの状況を考えると、まず住宅需要が増加し続けており、これはいまだ収まりそうにはありません。

続いて、各株価指数も上昇傾向にあります。

また、現在コロナワクチンの接種も拡大しており、今後、景気はさらに改善されることが予想されます。

以上のことから、不動産関連銘柄は今後も成長を続けていくことが考えられます。

米住宅市場における新築住宅販売数増加及び株価の今後

2020年初頭に起こった世界的な新型コロナウイルスの蔓延により、他の多くの業種と同様に不動産業においても大幅な売り上げ低下が起こることが予想されました。

しかし、パンデミックによる在宅勤務化とそれに伴う在宅時間の増加、そして、低金利政策などが重なった結果、幸運なことに住宅販売数は大幅に上昇することとなりました。

アナリストらの予想によると、今年のアメリカ経済は6.5%前後という昨年の経済的低迷を考慮したうえでなお大幅な成長率を誇ると考えられています。

今年に入ってからすでに、長期金利はパンデミック以前の水準に戻ってきていますが、それでもなお、新築住宅需要は増え続けています。

また、ワクチンなどの普及によって今後新築住宅の供給量が増えることも予想されるため、この新築住宅需要の増加はまだまだ続いていくのではないでしょうか。

また、今後長期的にみて、減少に転じたとしても、今回の需要増加は現時点では前回のバブル崩壊とは異なった適正な需要増加だと考えられるため、急に大幅な値崩れが発生することはなさそうです。

2007年のバブル崩壊と同じ結末を想像して不動産及び建築関連銘柄への投資を躊躇する必要はないでしょう。

参考元:

MONTHLY NEW RESIDENTIAL SALES, MARCH 2021

Quarterly report on household debt and credit

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米国の株式市場は最高値を更新している一方で、バブルを警戒する見方もあります。そこで、より堅実な投資先として、緩やかながらも成長し続け、持続的に増配する銘柄を検討してみてもよいでしょう。このレポートでは、堅実な成長が見込める5つの高配当株をご紹介します。

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