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ミャンマーのカントリーリスク露呈。無視できない新興国のカントリーリスク

出典:Getty Images

新興国投資で有名なジム・ロジャースが来日し、東京の国際フォーラムで講演をしたのは2011年。

今から10年前の話です。

ジム・ロジャースは講演で「成長著しいアジアの中でもミャンマーが投資先として最も魅力的だ」という話をしていました。

2011年3月にミャンマーは軍事政権から民主政権に移行しました。

軍の実質的な権力自体は残っていたものの、民主化した後のミャンマーは世界中から投資を集め急速に発展し、株式市場まで整備されたのです。

最大の都市、ヤンゴンを訪れると巨大なショッピング・モールがあり、日本のラーメン店「一風堂」も進出するなど、日本食も食べられました。

欧米資本のHard Rock Cafe(撤退済み)もあり、街を歩けば巨大なデベロッパーが建設中のモールやビルが立ち並び、成長している経済のダイナミズムを感じられる国でした。

しかし、2021年2月のクーデターで情勢は一変。

一夜にして新興国のカントリーリスクが顕在化してしまい、何も考えずに気楽に歩いてまわれたヤンゴンは、夜道を歩けば命を落としかねないほどの危険な街に変貌してしまいました。

ミャンマー株の取引停止が相次ぐ

(ミャンマー証券取引所)

ミャンマー証券取引所に上場されている銘柄は、6銘柄しかありません。

  • ファースト・ミャンマー・インベストメント(複合コングロマリット):FMI
  • ミャンマー・ティワラSEZホールディングス(工業団地開発):MTSH
  • ミャンマー市民銀行:MCB
  • ファースト・プライベート銀行:FPB
  • TMHテレコム(通信業):TMH
  • エバーフローリバー・グループ(物流):EFR

2021年4月現在FMI、MCBは取引停止、FPBはブロックトレードのみと個人投資家が取引できる銘柄は3銘柄のみです。

取引できる銘柄も流動性を考えると、株式市場はただ開いているだけの状態と考えてしまっても良いかもしれません。

クーデター勃発で2月1日から証券取引所自体は一時閉鎖。

軍は3日から取引を再開したものの、対外的なポーズに過ぎず、実態としては厳しいようです。

カントリーリスクでミャンマーの個別株は流動性(売買のしやすさ)が低下してしまいました。

(ミャンマー証券取引所)4/2:2年チャート

2年期間のミャンマーのインデックスのチャートを見てみると、元々6銘柄しかなく、値動きは横ばいでした。

しかし、クーデター以降の出来高に着目すると、ほとんど取引されていないことが読み取れます。

クーデターで3割下落した、ヨマ・ストラテジック・ホールディングス

ミャンマー関連銘柄で大きく下げたのが、シンガポール上場のヨマ・ストラテジック・ホールディングスです。

ヨマはミャンマー投資では必ずと言っていいほど名前が挙がる、ミャンマーへの投資・不動産開発・飲食・金融など幅広い事業を手がけている企業です。

ヨマはクーデター前と比較すると約3割値を下げました。

外資でミャンマーに力を入れていた企業には、逆風が吹いています。

単純にミャンマー国内の政情が不安定であることはもちろん、米国政府の経済制裁をはじめとした国際社会の圧力も、ミャンマーに進出している外資系企業にネガティブな影響を与える恐れがあります。

米国がミャンマー関連の事業をしている企業をSDN(制裁対象)のリストに入れる可能性があり、リストに入ってしまうと、米国企業との取引禁止や米ドルの資金凍結などの措置をされてしまうかもしれません。

このようにミャンマーそのもののリスクだけでなく、欧米からの経済制裁などの懸念もあるため、ミャンマー関連の事業に力を入れている企業の動向にも投資をするなら注意した方が良いでしょう。

新興国のカントリーリスクが浮き彫りになったクーデター

そもそも、このクーデターはどのように起きたのでしょうか。

2月1日に行われた総選挙で、スーチー女史率いるNLD党が大勝しました。

総選挙でNLDの議席が増えると、軍は政治に対する権限を失ってしまいます。

そこで軍が選挙に不正があったことを訴え、さらに同日すぐにクーデターを起こしました。

現在、軍が再び主導権を握り、1年間の非常事態を宣言しています。

一般的な報道ではNLDの影響力の増大を恐れた軍が焦ってクーデターを起こしたという論調が一般的ですが、様々な憶測や考えが飛び交っており、現状「クーデターは何故、起こったのか?」という真相は定かではありません。

しかし、事実としてクーデター以降のミャンマー最大のヤンゴンは無法地帯の様で、民間人が歩いているだけで銃撃されるなど、痛ましい報道が流れてきます。

個人投資家は一般的に流れてきた報道やニュースで政情を読み取るしかありません。

しかし、客観的に株価やチャートを見て分かることは、

  • ミャンマー株のインデックス自体の大きな下げはないものの、流動性が極端に低下した
  • ミャンマー関連銘柄の外資系企業の株は売られた

この2点です。

ミャンマー国内株は極端に流動性が低く、外資の関連銘柄は売られています。

この状況を仕込みどきと捉えるか、一旦ポジションを解消するべきか明言できませんが、ミャンマーの政情が安定するまで様子を見て、トレンドがはっきりしてから投資判断を決めても遅くはないでしょう。

新興国投資は特に何が起きるか分からない。分散投資は必須

新興国投資は特に何が起きるか分かりません。

2021年2月に軍がクーデターを行い、ミャンマーが一夜にして軍事政権下に戻り治安が悪化するという事態を予測することは不可能でした。

先進国の投資でも何が起きるかは分からないものです。

しかし、新興国の場合、投資環境自体が根本的に変わってしまうような大きな出来事も一夜にして起きてしまいます。

新興国投資のリターンは一般的に高いイメージですが、リスクも高いことミャンマーのクーデターで改めて浮き彫りになりました。

かつてジム・ロジャースが称賛していたミャンマー投資は厳しい局面に入ってしまいました。

もちろんミャンマーの政情が安定し、再びミャンマーが注目されるときが来るかもしれませんが、政治の問題が解決するには相応の時間が必要と考えた方が良いでしょう。

今回のミャンマーのクーデターは投資家にポートフォリオの一極集中、特に新興国などリスクの高いアセットへの集中は避けるべきだという教訓を教えてくれる出来事だったのかもしれません。

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