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中央銀行発行デジタル通貨とは?CBDCの日本や主要国の動向も解説

出典:Getty Images

インターネットの発展やスマートフォンの普及により、通貨の形も大きく変わっています。

世界各国では中央銀行発行デジタル通貨に関する研究や議論が活発になり、日本でも2021年4月より第1段階の実証実験を開始する予定です。

そこで今回は、中央銀行発行デジタル通貨について解説します。

中央銀行発行デジタル通貨のメリットやデメリット、世界各国の動向についても合わせて解説します。

中央銀行発行デジタル通貨とは?

中央銀行発行デジタル通貨とは、次の3つの条件を満たした中央銀行が発行するデジタル通貨のことを指します。

  • デジタル化された通貨
  • 円などの法定通貨建て
  • 中央銀行の債務として発行されている

中央銀行発行デジタル通貨は世界各国で注目されており、紙幣や硬貨といった現物を持たず、デジタルデータだけで存在する通貨になります。

なお、英語だとCentral Bank Digital Currencyで、CBDCと略称されます。

デジタル通貨とは?

デジタル通貨とは、一般的にデジタルデータに変換・保存されて通貨としてモノやサービスの交換(売買)が可能な通貨全般を指します。

法的な定義がなされている訳ではありませんが、中央銀行発行デジタル通貨以外に次の2つが主なデジタル通貨として利用されています。

  • 電子マネー
  • 暗号資産(仮想通貨)

電子マネーと暗号資産の大きな違いは、法定通貨を基準としているかどうかになります。

電子マネーは法定通貨の代替として国に価値が保証されていますが、暗号資産は国が価値を保証せず、利用者同士で取引の承認を行う通貨になります。

中央銀行発行デジタル通貨のメリット

中央銀行発行デジタル通貨のメリットは、コストや手間の削減が期待できることです。

例えば、1円玉を製造するには3円、5円玉を製造するには7円のコストが必要だとされています。

財務省の発表によれば、2020年に発行した1円玉の枚数は100万枚、5円玉は2,000万枚になります。

単純計算すると、1円玉のコストは300万円、5円玉は1億4,000万円になります。

紙幣や貨幣は作るだけでなく、流通や管理、廃棄などにもコストが発生していますが、中央銀行発行デジタル通貨が発行されれば、これらのコストを削減できます。

また、中央銀行発行デジタル通貨はデジタルデータのため、どのように入出金がされたのか一目瞭然になるので、マネーロンダリングや脱税などが見つけやすくなり、税収入が増えるという可能性もあります。

利用者目線でメリットを考えると、収入や支出といったお金の流れがすべて記録に残るため、納税などの手続きが少なくなるというメリットがあります。

ほかにも、銀行口座が無くても店舗で支払いができる、現金が不要になるため紛失や盗難のリスクが少なくなるといったメリットがあります。

中央銀行発行デジタル通貨のデメリット

中央銀行発行デジタル通貨のメリットはコスト削減と利便性の向上ですが、一方でデメリットもあります。

まず、デジタル通貨はクラッキングやハッキングの対象になりやすく、法定通貨建てのデジタル通貨ともなれば最高クラスのセキュリティ対策をしなければなりません。

そのため、高度な技術や高額な維持費などが必要になります。

次に、日本に限定していえばデジタル通貨を受け入れる土壌が完成しているとはいえず、中央銀行発行デジタル通貨が受け入れられない可能性もあります。

経済産業省の発表によれば、日本のキャッシュレス決済比率は約20%程度で、主要国が40%~60%に比べると低い割合です。

政府はこのキャッシュレス決済比率は2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指しており、キャッシュレス決済政策を推進しています。

しかし、政府がキャッシュレス決済を推進する一方で、キャッシュレス決済のトラブルは増加傾向にあります。

消費者庁の発表によれば、2019年に発生したキャッシュレス決済や電子マネーに関する相談件数は3491件で、過去最多を記録しています。

このように、中央銀行発行デジタル通貨が発行されても、これまでの商習慣と大きく異なるため、どのようなトラブルが発生するのか予想できないこともデメリットに上げられます。

事業者にしてみれば、キャッシュレス決済とは別の決済端末やマニュアルが必要になる可能性があり、業務が混乱する恐れもあります。

世界の中央銀行発行デジタル通貨の動向

中央銀行発行デジタル通貨は世界各国で調査や研究、開発が進められていましたが、2020年になると実用化に向けて大きく動き出しています。

その理由は、フェイスブックが進めている民間デジタル通貨ダイム(旧リブラ)の存在と中国でデジタル人民元が本格的に導入されようとしているからです。

中国は2019年にデジタル人民元構想を表面化すると、2020年4月には本格導入を見据えたパイロット試験を実施。

10月までの時点で47,000人以上がデジタル人民元を62,000件以上の取引に利用しているとの発表がされています。

2021年になっても実験は行われており、本格導入に向けた環境整備や法律の改正作業、課題の洗い出しなどが行われており、主要国のなかでは最も早く中央銀行発行デジタル通貨を実用化するのではないかと予想されています。

一方でアメリカは中央銀行発行デジタル通貨に対して、当初は慎重な構えを見せていました。

なぜなら、ドルはこれまで世界の基軸通貨として存在していたため、デジタルドルを急いで発行する必要は無いと考えていたのです。

しかし、中国での研究が加速したことを受けて態度を変えつつあります。

2020年6月にはFRBのパウエル議長が中央銀行発行デジタル通貨は真剣に研究していく案件の1つだと声明を発表し、日本と欧州が創設した共同研究グループに合流するなど、変化を見せています。

とはいえ、アメリカでは、現時点で不明点が多いこと、ほとんどの決済がデジタル化していること、プライバシーをどうやって守るのかなどを理由に中央銀行発行デジタル通貨の反対派が根強いです。

ほかの主要国でいえば、すでにパイロット試験運用を始めているスウェーデンが2022年頃に本格導入を予定、ロシアやEUは2021年頃にパイロット試験や概念実証試験の導入を予定しています。

アメリカや中国よりも中央銀行発行デジタル通貨に前向きなのはバハマやカンボジアといった新興国や途上国になります。

これらの国は金融システムが未成熟で、貧困層は銀行口座を持っていないのも珍しくありません。

一方でスマートフォンの普及率は非常に高いため、中央銀行発行デジタル通貨のようなデジタル通貨との相性は非常によく、バハマやカンボジアではすでに正式運用が開始されています。

日本の中央銀行発行デジタル通貨の動向

日本はアメリカ同様、中央銀行発行デジタル通貨に対しては慎重な立場にいました。

なぜなら、日本は流通している現金が綺麗で偽造するのが難しく、流通量も高く、銀行口座を持てない人が少ない国のため、中央銀行発行デジタル通貨を必要としていない国になります。

しかし、中国が中央銀行発行デジタル通貨の導入を加速させ、将来的にはデジタル人民元のシステムを世界に向けて展開する可能性が現実化してきたことを受け、日本でも央銀行発行デジタル通貨のシステムは作成するべきではないかという意見が強くなりました。

ただし、日本は中国と異なり、他国と連携して研究を進めています。

日本と欧州が創設した共同研究グループにはアメリカを含めた主要7カ国の中央銀行が参加しており、2020年10月には「中央銀行デジタル通貨: 基本的な原則と特性」という報告書を発表しています。

すでに日銀は政府や民間事業者との連絡協議会を立ち上げ、中央銀行発行デジタル通貨の第1段階の実証実験を2021年4月から翌年3月まで実施する予定だと発表しています。

まとめ

中央銀行発行デジタル通貨は、その国の中央銀行が法定通貨建てで発行するデジタル化された通貨になります。

発行されれば流通コストや処理などの手間が削減されるなどのメリットが期待されていますが、日本やアメリカは慎重な態度を見せていました。

ところが、中国で中央銀行発行デジタル通貨の導入が加速すると、注目度が上がっています。

日本では2021年4月~2022年3月まで第1段階の実証実験が行われる予定で、その後もいくつかの実験を行います。

デジタル円の発行は確定ではありませんが、将来的に発行される可能性のある通貨になります。

免責事項と開示事項 記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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