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無借金経営は本当に理想の経営?無借金経営のメリット・デメリットについて解説

出典:Getty Images

日本人の感覚からすると、借金は危ないというイメージがあり、負債が多い企業よりも無借金経営のような企業が投資対象として好まれやすいです。

しかし、無借金経営が本当に理想の経営だとも断言できません。

そこで今回は、無借金経営のメリット・デメリットや、無借金経営の代表である任天堂について解説します。

無借金経営とは?

無借金経営とは、銀行などの金融機関からの借入や社債、CPといった負債による資金調達を一切せずに経営を行う手法のことです。

基本的に自己資金(資本金)と内部留保(剰余金)だけで経営を行うことを無借金経営と定義しますが、買掛金や短期負債といった負債項目は賃借対照表に計上されるため、負債が0円(存在しない)という意味での無借金経営はほとんどありません。

また、無借金経営は金融機関から借入をしていない、融資を受けていないという状態を表す用語になるため、株主やベンチャーキャピタルから出資を受けていても、出資金を返済する義務が無ければ、これも無借金経営に該当するといえます。

ただし、返済する義務がない出資は返済以外の条件を結ぶことが多いため、結局のところ無借金とはいえない状態にもなります。

以上のことから、無借金経営は全く借入れをしていない完全な無借金経営と、金融機関から借入をしておらず、手元資金が有利子負債を上回っている実質無借金経営の2種類に分類されます。

無借金経営のメリット

無借金経営のメリットは利息を支払う必要が無いことです。

金融機関から借入をしていないため、利息が発生しないのは当然ですが、利息というのは企業の負担になります。

例えば、1億円を5年返済の年率2%の利息で返済する場合、利息は合計約800万円になります。

元本の金額が多い、あるいは利率が高いと利息は増えていき、企業の負担が増すため、無借金経営だと倒産のリスクを下げる経営方法と言えます。

また、金融機関から借入をするということは、銀行からの介入を受け入れるということになります。

銀行は融資をした企業に対して介入する権利があり、経営状態が悪化すれば役員派遣や意思決定の介入などを行いますが、無借金経営なら銀行の介入や影響を気にせずに方針を決定できます。

ほかにも、急激な景気変動が起きても手元にある資産だけで対処できる、バランスシートの見栄えが良くなるため健全な経営をしているというイメージが付くなどのメリットがあります。

無借金経営のデメリット

無借金経営のデメリットは、急な資金需要が発生しても資金繰りの目途が立ちにくいことが上げられます。

金融機関も動かしているのは人間のため、新規の融資希望者に対しては慎重な態度を取らざるを得ません。

無借金経営により金融機関との付き合いが無いと、急激な景気変動により自己資本が少なくなった、あるいは大口のビジネスチャンスが舞い込んで設備投資が必要になったときに、すぐに融資されるとは限りません。

過去には無借金経営で黒字を維持していた企業が、仕入れ代金と売上金額の入金ペースが合わずに現金が足りなくなり、資金調達に間に合わずに不渡手形を出してしまい、黒字倒産したというケースがあります。

金融機関の信用度は、現時点でどれだけの借金(借入)があるのかだけでなく、「これまでにどれだけの借金を返済できたのか」ということもポイントになります。

つまり、無借金経営を続けてきた企業は借金を返済できるかという信用度が無く、急に資金が必要になるのは何かしらのリスクがあるのではないかと疑われ、すぐに融資されないという状況に陥りやすいのです

ほかにも、ビジネスチャンスがあってもすぐに動けない、ROEが低くなりやすいなどのデメリットがあります。

日本だと無借金経営が好まれる理由

2018年時点で借入金の無い「完全無借金企業」は国内に8万3,978社あり、企業全体の24.4%になります。

手元資金が有利子負債よりも多い「実質無借金経営」をあわせれば、全体の約6割近くにもなります。

中小企業のみならず、世界的にも名の知れたトヨタ自動車やアウトドアスポーツメーカーの株式会社シマノ、日本郵便、ユニクロなども無借金経営をしている有名な企業になります。

このように日本では無借金経営を行おうとする経営者が多く、特にサービス業や建設業で多く見られます。

日本で無借金経営が好まれる理由はいくつかありますが、最大の理由として考えられるのが借金の持つメリットとデメリットを比べたときに、デメリットの方を重視しているという保守的な考え方が根強いことです。

確かに、借金があると急激な景気変動や業績悪化が起きた時に、支払う利息が負担となり倒産リスクは高まります。

中小企業で創業者が個人保証を求められていると、倒産したときに創業者の私財が失われるため、経営者としては倒産のリスクにつながる借金は避けたいです。

また、すべての企業が成長することを望んでいないというのも理由に上げられます。

一定の利益を出せる事業があるなら、借金をして事業拡大をするよりも、事業を存続することを優先する経営者も珍しくありません。

このように、日本では借金をすることのデメリットや倒産リスクが高まることを嫌って、無借金経営を目指そうとする企業が多いです。

アメリカ企業は借金をして経営をするのが一般的

みずほ総合研究所の調査によれば、手元資金が有利子負債よりも多い「実質無借金経営」の企業は全体の約3割になり、日本企業とは反対の結果となります。

そもそも、アメリカ企業は、企業は株主のためにあるという考え方が基本にあり、株主還元施策のために借金をして現金を調達することもあります。

株主が企業に求めるのは収益性と成長性で、資金を調達して適切な投資をするのは当たり前という認識があります。

また、最近では「もの言う株主(アクティビスト)」の存在も問題視されており、株式を追加発行して株主の議決権を強めるよりも、借金をした方が経営の規律を保てる場合があります。

以上のことから、アメリカ企業は借金をして経営をするのが一般的とされており、無借金経営の割合は低いです。

よって、無借金経営が理想的な経営とは断言できないのです。

無借金経営の代表的な企業

国内で無借金経営の代表的な企業と言えば、任天堂になります。

任天堂は2020年3月期決算まで有利子負債は一貫してゼロで、自己資本比率は79.7%と驚異的な数字を記録しています。

2021年3月期第3四半期累計では前年同期比92.9%増、増益率が52.6%増、第3四半期累計最終利益が13期ぶりの過去最高を更新しました。

業績好調に伴い、年間配当も大幅増額となり、5月の総決算に対して期待が高まっています。

世界でも名だたる企業の任天堂が無借金経営をしているのは、無借金経営をすることで業績が向上するからではなく、過去の倒産危機が関係しています。

元々、トランプメーカーとして台頭してきた任天堂は、1962年に上場するも経営の多角化に失敗し、1度目の倒産危機を迎えました。

地元の京都銀行の融資を受けることで倒産危機を回避し、その後はおもちゃ事業により一時的に回復を果たします。

ところが、おもちゃブームが過ぎると経営が再び悪化し、2度目の倒産危機を迎えてしまいます。

このとき、任天堂に唯一救いの手を差し伸べたのが、またしても京都銀行でした。

ほかの銀行は任天堂が多角経営に失敗したという過去と、世間がオイルショック後の不況に突入していたこともあって融資をしませんでした。

結果として、京都銀行の緊急融資により2度目の倒産危機を回避した任天堂は、1980年代になりテレビゲーム市場のシェアを一気に獲得すると、日本を代表する企業へと成長しました。

2度の倒産危機を回避した当時の社長の山内溥氏は、ゲーム業界は当たり外れが激しい業界だから付き合いのない銀行が簡単に融資しないため、売上が悪くなったときに会社を守れる現金資産を積み上げるべきだという考えを明かしています。

自身の後継者に指名した岩田聡氏にも、「異業種には絶対に手を出すな」などの独自の経営哲学を語り、それらは現在でも守られています。

このように任天堂は無借金経営をしてきたから業績が上がったのではなく、過去の経験や経営者の方針によって無借金経営を貫いてきたのです。

まとめ

以上が、無借金経営の解説になります。

無借金経営とは金融機関から借入をしないで経営を行うことで、日本では金利負担が軽減される、倒産リスクが低くなるといった理由から無借金経営が好まれます。

確かに、任天堂のように無借金経営でも世界的な大企業はあります。

しかし、借金は企業に対して収益性と成長性を与えるチャンスになるため、一概に否定はできません。

実際、アメリカ企業で無借金経営をしている企業は全体の3割程度で、多くの企業で借金をして経営をするのが一般的になります。

よって、無借金経営の企業は倒産リスクが低い企業ではありますが、無借金経営だから投資の対象になるということはありません。

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