【米国生活必需品セクターETF】最新パフォーマンス・ランキング2021年2月

生活必需品セクターのETFは、景気に左右されにくいとされるディフェンシブ銘柄で構成されています。
新型コロナウィルスによる世界的な景気低迷下において、不景気に強い同セクターのETFのパフォーマンスはどうなっているでしょうか。
直近1年のパフォーマンスで優れていた米国生活必需品セクターETFをご紹介していきます。
生活必需品セクターにおける2020年通年のパフォーマンス
生活必需品セクターの2020年における1年間のリターンについて、他のセクターとの比較でまとめたのが以下の表になります。
S&P 500セクター | 2020年リターン | 2019年リターン | 過去10年
平均リターン |
情報技術
Information Technology |
42.2% | 48.0% | 18.9% |
一般消費財
Consumer Discretionary |
32.1% | 26.2% | 16.0% |
通信サービス
Communication Services |
22.2% | 30.9% | 5.6% |
素材 Materials | 18.1% | 21.9% | 6.6% |
S&P 500 | 16.3% | 28.9% | 11.6% |
ヘルスケア Health Care | 11.4% | 18.7% | 13.8% |
資本財 Industrials | 9.0% | 26.8% | 9.6% |
生活必需品 Consumer Staples | 7.6% | 24.0% | 8.7% |
公益事業 Utilities | -2.8% | 22.2% | 7.2% |
金融 Financials | -4.1% | 29.2% | 8.6% |
不動産 Real Estate | -5.2% | 24.9% | 6.6% |
エネルギー Energy | -37.3% | 7.6% | -5.6% |
(出典:advisor.visualcapitalist.comより筆者作成)
生活必需品セクターの2020年のリターンは、7.6%でした。
この数値はまずまずのパフォーマンスでしたが、全セクターの市場平均ともいえるS&P500種株価指数を下回る結果となっています。
この理由は主に情報セクターで歴史的な高値更新を頻発するほど上昇したこと、さらに生活必需品セクター内で勝者と敗者が明暗を分けたことの2つが考えられます。
情報技術セクターの突出ぶり
新型コロナウィルスによるパンデミックとリモートワーク普及によって、そのような環境下で優位性を発揮するハイテク銘柄は、大きな上昇を見せました。
まず、ナスダック市場が早々と市場最高値更新となり、その後も次々と高値を更新していきました。
このような値動きを見せた情報技術セクターに対し、生活必需品セクターは元々ボラティリィが低くて大きく下落しない傾向がある反面、急激な上昇が見込みにくいセクターという特徴があります。
S&P500を下回ったのは、そのような急激な上昇を見せた情報技術セクターやその次に大健闘した一般消費財セクターに対して、それほどの伸びを示さなかったことが市場平均を下回った理由の一つとして考えられます。
生活必需品セクターの内で明暗を分けた勝者と敗者の存在
生活必需品セクターを構成する分野には、食品および医薬品の小売業、飲料、食品、タバコ、非耐久家庭用品、およびパーソナル製品を含む消費者製品の開発およびの製造業者・流通企業が含まれています。
代表的な個別銘柄では、プロクターアンドギャンブル(PG)、コカ・コーラ(KO)、ウォルマート(WMT)、そしてフィリップモリス(PM)などが挙げられます。
これらの業種は、不況であっても消費されることから不況に強いディフェンシブなセクターとされています。
しかし、非常に幅広い製品が取り扱われていることから、コロナ禍で同セクター内でもよく売れる製品とそうでない製品で明暗が分かれました。
外出する必要がなく、家庭で過ごす時間が増えたために、生活必需品とされる製品でも売上が落ち込んだものもかなり見られました。
例えば、化粧品やカミソリ、さらには大人用の失禁用品といった製品は、リモートワーク普及と巣籠り消費などが原因で消費が激減しました。
このように不況に強いとされる生活必需品セクターでも市場平均を下回ったのは、業績が上がる銘柄とそうでない銘柄が混在していたことも原因の一つといえるでしょう。
そうした中で、次に米国の生活必需品セクターETFにおいて、直近1年間でパフォーマンスが最も優れていた上位3つのETFをご紹介していきます。
直近1年の米国生活必需品セクターETFパフォーマンスランキング~IYK、ECON、PSL
直近1年間のリターンが最も高かった上位3つのETFを順にご紹介していきます。
上位3銘柄になったのは、iシェアーズ・US・コンシューマー・グッズETF (IYK)、コロンビア新興国市場コンシューマーETF(ECON)、インベスコ・DWA・コンシューマー・ステープルズ・モメンタム・ETF(PSL)です。
今回取り上げるETFで特徴となっているのは、大麻関連株で構成されるファンドが含まれている点です。
尚、リターンについてはいずれのETFも、2021年2月26日現在のデータを基準としています。
iシェアーズ・US・コンシューマー・グッズETF(i Shares U.S.Consumer Goods ETF:IYK)
ファンド名 | iシェアーズ・US・コンシューマー・グッズETF(IYK) |
直近1年の上昇率 | 36.88% |
運用資産残高(AUM) | 7億4,950万米ドル |
株価収益率 | 25.41 |
経費率 | 0.43% |
年間分配金利回り | 1.45% |
投資対象資産 | 大型ブレンド株(Large Cap Blend Equities) |
投資対象セクター | 生活必需品 |
構成銘柄数 | 99銘柄 |
ベンチマーク | ダウ・ジョーンズ米国消費者物価指数 |
投資対象国・地域 | 米国 |
上場市場 | NYSE ARCA |
ファンド運用開始日 | 2000年6月12日 |
運用会社 | iShares |
上位10銘柄(2021年2月26日時点)
構成銘柄名 | ティッカー | 保有比率 |
Tesla Inc | TSLA | 17.92% |
Procter & Gamble Company | PG | 10.08% |
Coca-Cola Company | KO | 6.25% |
PepsiCo, Inc. | PEP | 5.81% |
NIKE, Inc. Class B | NKE | 5.42% |
Philip Morris International Inc. | PM | 4.34% |
Altria Group Inc | MO | 2.66% |
Mondelez International, Inc. Class A | MDLZ | 2.48% |
Activision Blizzard, Inc. | ATVI | 2.36% |
Estee Lauder Companies Inc. Class A | EL | 2.12% |
セクター別構成比率(2021年2月26日時点)投資対象国・地域
セクター | 構成比率 |
消費非耐久財 Consumer Non-Durables | 57.62% |
消費耐久財 Consumer Durables | 32.32% |
生産業向け製造 Producer Manufacturing | 2.79% |
プロセス産業 Process Industries | 1.92% |
小売業 Retail Trade | 1.88% |
流通サービス Distribution Services | 1.55% |
消費者サービスConsumer Services | 1.00% |
技術サービス Technology Services | 0.43% |
その他 Miscellaneous | 0.28% |
金融 Finance | 0.20% |
現金 Cash | 0.01% |
投資対象国・地域比率(2021年2月26日時点)
投資対象国・地域 | 比率 |
米国 | 99.97% |
その他 | 0.03% |
(データ出典:etfdb.comより筆者作成)
IYKは、大型株式ブレンドETFであり、消費者向けサービスを提供する企業を除いた米国内の個人向けの消費財メーカーを中心とするポートフォリオを構築しているファンドです。
株式は独自の分類システムを用いており、ダウ・ジョーンズ米国消費者物価指数から銘柄選定されています。
ファンドの構成銘柄は毎年9月に組み替えられ、四半期ごとに再調整されます。
上位保有銘柄は、電気自動車メーカーの「Tesla Inc. (TSLA)」、家庭用品、パーソナルケア用品、工業用製品の製造・販売する米国大手一般消費財メーカー「P&G (P&G)」、同じく食品および飲料メーカーの「PepsiCo Inc. (PEP)」となっています。
代表的な生活必需品セクターETFであるXLPやVDCとの比較はどうでしょうか。
XLPやVDCの直近1年の上昇率は10%~13%程度にとどまり、昨年2020年の1年間のS&P500の上昇率16.8%を下回っています。
一方のIYKの直近1年間の上昇率は、36.88%で大きくアウトパフォームしていることがわかります。
一方で、生活必需品セクター銘柄は、一般的に堅実な成長性のあるディフェンシブかつ比較的高配当利回りが期待できるセクターです。
しかし、IYKの年間分配金利回り1.45%は、同じ生活必需品セクターETFで、2.5%を超えるXLPやVDCに比べると物足りない印象となっています。
さらに同ETFの経費率0.43%は、XLPの 0.12%やVDCの 0.10%と比較すると割高感が否めません。
コロンビア新興国市場コンシューマーETF(Columbia Emerging Markets Consumer ETF:ECON)
ファンド名 | コロンビア新興国市場コンシューマーETF |
直近1年の上昇率 | 32.35% |
運用資産残高(AUM) | 1億9,630万ドル |
株価収益率 | 23.31 |
経費率 | 0.59% |
年間分配金利回り | 0.60% |
投資対象資産 | 大型ブレンド株(Large Cap Blend Equities) |
投資対象セクター | 生活必需品 |
構成銘柄数 | 59銘柄 |
ベンチマーク | ダウ・ジョーンズ・エマージング・マーケット・コンシューマー・ティタン指数(Dow Jones Emerging Markets Consumer Titans 30 Index) |
投資対象国・地域 | 新興国 |
上場市場 | NYSE ARCA |
ファンド運用開始日 | 2010年9月14日 |
運用会社 | コロンビア・スレスニードル・インベストメンツ(Columbia Threadneedle Investments) |
上位10銘柄(2021年2月26日時点)
構成銘柄名 | ティッカー | 保有比率 |
Baidu, Inc. Sponsored ADR Class A | BIDU | 7.77% |
Meituan Class B | 3690 | 6.08% |
Tencent Holdings Ltd. | 700 | 5.55% |
JD.com, Inc. Sponsored ADR Class A | JD | 5.36% |
Hindustan Unilever Limited | 500696 | 4.50% |
Alibaba Group Holding Ltd. Sponsored ADR | BABA | 4.28% |
NetEase, Inc. Sponsored ADR | NTES | 4.22% |
Chunghwa Telecom Co., Ltd | 2412 | 3.45% |
TAL Education Group Sponsored ADR Class A | TAL | 3.01% |
Uni-President Enterprises Corp. | 1216 | 2.94% |
セクター別構成比率(2021年2月26日時点)投資対象国・地域
セクター | 構成比率 |
Technology Services テクノロジー・サービス | 28.18% |
小売業 Retail Trade | 19.49% |
消費非耐久財 Consumer Non-Durables | 18.15% |
通信 Communications | 13.92% |
消費耐久財 Consumer Durables | 10.41% |
その他 Others | 9.85% |
投資対象国・地域比率(2021年2月26日時点)
投資対象国・地域 | 比率 |
中国 | 52.43% |
インド | 11.00% |
台湾 | 10.81% |
香港 | 4.45% |
ブラジル | 3.81% |
サウジアラビア | 3.38% |
南アフリカ | 2.93% |
オランダ | 2.62% |
タイ | 2.43% |
メキシコ | 2.16% |
インドネシア | 1.97% |
ロシア | 0.98% |
アラブ首長国連邦 | 0.88% |
その他 | 0.15% |
(データ出典:etfdb.comより筆者作成)
ECONは、新興市場の生活必需品セクターに焦点を合わせたファンドで、ダウ・ジョーンズ・エマージング・マーケット・コンシューマー・ティタン指数に準拠しています。
59銘柄からなる構成銘柄を国別でみると、その半分以上が中国関連株となっています。
そのため、非常にボラティリティの高さや中国の経済動向を強く意識する必要があります。
保有銘柄の上位には、中国最大手のインターネット検索エンジンとオンライン広告サービス企業であるBaidu Inc. (BIDU)、中国消費財等ショッピングプラットフォームMeituan (3690:HKG)、さらに中国最大手のインターネットサービス企業であるTencent Holdings Ltd. (700:HKG)が見られます。
ファンドは毎年リバランスされ、四半期ごとに見直されます。
参考までにXLPやVDCとの比較では、直近1年の上昇率が32.35%と大きくアウトパフォームしています。
しかし、ECONのターゲットは新興国市場であり、当然ながら先進国市場をメインとするXLPやVDCとの比較は適切ではなく、参考程度の比較となります。
一方、経費率の0.59%や年間分配金利回りの0.60%という面では大きく見劣りしています。
インベスコ・DWA・コンシューマー・ステープルズ・モメンタム・ETF(Invesco DWA Consumer Staples Momentum ETF :PSL)
ファンド名 | インベスコ・DWA・コンシューマー・ステープルズ・モメンタム・ETF(PSL) |
直近1年の上昇率 | 33.10% |
運用資産残高(AUM) | 1億800万米ドル |
株価収益率 | 28.5 |
経費率 | 0.60% |
年間分配金利回り | 0.78% |
投資対象資産 | マルチキャップ・ブレンド株
(Multi-Cap Blend Equities) |
投資対象セクター | 生活必需品 |
構成銘柄数 | 39銘柄 |
ベンチマーク | ドーシー・ライト・コンシューマー・ステープルズ・テクニカル・リーダーズ指数(Dorsey Wright Consumer Staples Technical Leaders Index) |
投資対象国・地域 | 米国 |
上場市場 | NYSE ARCA |
ファンド運用開始日 | 2006年10月12日 |
運用会社 | インベスコ |
上位10銘柄(2021年2月26日時点)
構成銘柄名 | ティッカー | 保有比率 |
Chegg, Inc. | EL | 5.14% |
Estee Lauder Companies Inc. Class A | MNST | 4.45% |
Monster Beverage Corporation | CHD | 4.40% |
Church & Dwight Co., Inc. | KDP | 4.39% |
Keurig Dr Pepper Inc. | FRPT | 4.18% |
Freshpet Inc | DAR | 3.71% |
Darling Ingredients Inc. | MKC | 3.62% |
McCormick & Company, Incorporated | TUP | 3.39% |
Tupperware Brands Corporation | USFD | 3.37% |
US Foods Holding Corp. | EL | 3.22% |
セクター別構成比率(2021年2月26日時点)投資対象国・地域
セクター | 構成比率 |
消費非耐久財 Consumer Non-Durables | 44.26% |
プロセス産業 Process Industries | 11.06% |
流通サービス Distribution Services | 10.08% |
消費者サービスConsumer Services | 8.90% |
商業サービス Commercial Services | 8.86% |
消費耐久財 Consumer Durables | 6.42% |
生産業向け製造 Producer Manufacturing | 3.37% |
金融 Finance | 2.48% |
小売業 Retail Trade | 2.27% |
ヘルスサービス Health Services | 2.14% |
その他 | 0.16% |
投資対象国・地域比率(2021年2月26日時点)
投資対象国・地域 | 比率 |
米国 | 99.84% |
その他 | 0.16% |
(データ出典:etfdb.comより筆者作成)
PSLはドーシー・ライト・コンシューマー・ステープルズ・テクニカル・リーダーズ指数(Dorsey Wright Consumer Staples Technical Leaders Index)に準拠した、生活必需品セクターにおけるマルチキャップのブレンド株ETFです。
保有する39株の約40.5%が上位10銘柄に投資されています。
上位3つの保有銘柄には、教育テクノロジー企業のChegg Inc. (CHGG)、エネルギー飲料・飲料会社のMonster Beverage Corp. (MNST)、家庭用品メーカーのChurch&Dwight Co., Inc. (CHD)があります。
尚、インデックスのリバランスと再構成は、四半期ごとに行われています。
XLPやVDCとの比較では、直近1年間の上昇率が33.10%と、大きくアウトパフォームしています。
しかし、年間分配金利回り0.78%は大きく劣り、さらに経費率も0.60%と比較的割高となっています。
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免責事項と開示事項 記事の作者、モントキアラは、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。