何よりも先に「資金繰り」を把握すべきである

居酒屋などの飲食店を運営しているヴィアHD(7918)が、2/15の第3四半期決算発表と同時に「事業再生ADR手続に関するお知らせ」をリリースしました。
参考:ヴィア・ホールディングス[7918]:事業再生ADR手続きに関するお知らせ 2021年2月15日(適時開示)
「事業再生ADR制度」は経済産業大臣の認定を受けた公正・中立な第三者が関与することにより、過大な債務を負った事業者が法的整理手続によらずに、債権者の協力を得ながら事業再生を図ろうとする取組を円滑化する制度です。
債務者が申請した事業再生ADR制度が申請し、受理されると、認証紛争解決事業者が債務者と連名で債権者に対し、債権の回収、担保権の設定や破産手続、再生手続き、特別清算の開始を申し立てないよう通知します。
つまり、一時的に債務返済等に猶予を与えられることで、直ちに倒産することを回避できます。
後出しじゃんけんのようで恐縮ですが、実は筆者は昨年11月にこの企業のことを記事にしておりました。
ヴィアHDはこの記事を書いたときにすでに債務超過状態であり、決算時に「継続企業の前提に関する重要事象等」という項目の記載もあり、借入金の返済猶予を金融機関に依頼していることも記載されていました。
ヴィアHDがすぐに上場廃止になるわけではありませんでしたし、事業再生ADRを申請していたわけでもありませんでしたが、何かが起きる可能性は3か月前にすでに明らかになっていたわけです。
前述した記事でも触れていますが、COVID-19を原因とした業績悪化が、特に飲食店や人が集まることで成り立つサービス業で徐々に目立ち始めています。
内部留保がふんだんな体力がある企業や、資金調達が可能ないわゆる体力がある企業ならば、1年ぐらいは乗り切れても、そうではない上場企業も少なくありません。
その結果本決算を債務超過で終えると、前述した記事のとおり、2年以内に回復しなければ上場廃止基準に抵触することになります。
COVID-19を原因としない場合は1年で回復しなければなりません。
ヴィアHDのケースがCOVID-19による業績悪化だとしても、株式の発行体としては上場廃止懸念を少しでも排除したいでしょうし、それを避けるための事業再生ADR申請だろうと想像しますが、残念ながらマーケットではさしあたりはネガティブに受け止められるようです。
ヴィアHDも例外ではありませんでした。その後少し戻しているようです。
出所:日本経済新聞社website
さて、筆者が昨年11月に書いた記事ではヴィアHDの債務超過等に言及しています。
参照したヴィアHDの2021年3月期第二四半期決算短信を改めて確認してみます。
まず1ページ目。
連結財政状態を確認すると自己資本比率がマイナスです。
これだけで債務超過を把握できます。
出所:ヴィアHD2021年3月期第二四半期決算短信
自己資本比率は、自己資本/総資本で算出される、企業の資金調達における返済しなくていい資金の割合です。
これがマイナスということは、総資本に占める自己資本以外の割合、つまり負債が多いということになります。
負債はもちろん返済しなければいけない資金です。
返済しなければならない資金>返済しなくていい資金の状態は、企業の財務としてお世辞にもいい状態とは言えません。
次に確認したいのが、現預金と流動負債です。
企業の息の根が止まるときは、資金繰りがおぼつかなくなっていることが多いです。
流動負債は1年以内に返済しなければならない負債で、それに対して現預金が十分あれば負債の返済の猶予を申し出なくてもお金のやりくりができます。
この点に関してもヴィアHDの場合は疑問符が付きました。
出所:ヴィアHD2021年3月期第二四半期決算短信
現預金の残高が12億強に対して、買掛金、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、未払金、未払費用と言った近々払わなければならないものがざっくり100億円以上はあります。
これは個人の資産に例えると、自由になるお金は120万円である一方、支払いを要求される金額は1,000万円以上ある状態で、払うためには高い金利でもどこからかお金を借りないと払えない状態です。
自己資本比率がマイナスの企業は資金調達が難しくなります。
すでに十分借りているとみなされるわけですから、借り入れで調達することがまずできません。劣後ローンもやや厳しいでしょうか。
ものすごく低い株価で公募増資は可能でしょうが、増資した資金が借り入れの返済に回るようなら、企業の成長には結び付きにくくなりますから、マーケットでは好感されないでしょう。
このように貸借対照表の読み方を少し知っていると、近い将来の資金繰りを想像できるようになります。
日経平均株価が30年ぶりの高値と言われている一方、業績不振に苦しんでいる企業は少なくありません。
東証一部だけで2,000銘柄以上あるわけですから、日経平均株価に採用されている225銘柄以外の約9割は30年ぶりの高値の蚊帳の外に置かれていても不思議ではないのです。
自分が保有する銘柄が近いうちに資金繰りに苦しまないか、今一度確認しておくことをお勧めいたします。
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