The Motley Fool

「投資家が相場」な相場でリスクを軽視するメカニズムと対処法

出典:Getty Images

『屋根を修理するなら、よく晴れた日に限る』

原文:「The time to repair the roof is when the sun is shining」

第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの言葉であり、この言葉は投資の世界でもしばしば比喩として用いられます。

投資行動におけるより実践的な言い回しにすると、投資の規律を守る為のルールは平時に定義し、有事にはそのルールを順守することになります。

雨が降ってきてから屋根の修理をしようとしても手遅れなのです。

しかし、実際の投資の世界においては相場が好調な時、投資家には以下のような傾向があります

  1. 全世界株式へのインデックス投資をしていた人が、特定セクターや単一国への集中投資に切り替える
  2. 1.をしていた人が、グロース銘柄への個別投資に乗り出す
  3. 1.2.をしていた人がレバレッジをかけだす

なぜか投資家は、リスクを回避すべき局面にリスクに対して寛容になるのです。

投資家のリスクに対するこのような非合理的な行動を、オークツリー・キャピタルマネジメントの共同創業者、ハワード・マークスは『リスクのあまのじゃく現象』と呼んでいます。

相場が好調で且つ、投資家が楽観的になっている時、著名投資家や経済アナリスト、一部の有名投資ブロガーは、相場に対して警鐘を鳴らすことがあります。

しかし、多くの投資家はそれらの言葉に耳を貸そうともしません。

このようなリスクのあまのじゃく現象はなぜ起こるのでしょうか?

筆者はここ最近、脳科学と行動経済学に関する勉強をしている中で、リスクのあまのじゃく現象に関する原因とメカニズムを見つけました。

まず原因ですが、人間の脳というのはお金を受け取った瞬間、脳内でドーパミンが分泌されるそうです。

脳内にドーパミンが分泌されると、人間は「意欲」「運動」「快楽」を感じるといわれています。

つまり脳はお金を使う時ではなく、お金を受け取るという行為そのものが一種の麻薬に近い反応を示すわけです。

しかも脳にとってはお金を受け取ったという行為は現金に限らず、クーポンでも同じ行為に相当します。

つまり、株式投資でプラスリターンを得ている状態、それが期待できる状態そのものが、脳が快楽によって興奮状態に陥ることにつながるのです。

人間の欲求がさらなる利益を求める理由はここにある訳です。

さて、これだけだと投資家が好調相場でリスクを軽視する理由にはなりません。

さきほど申したように、著名投資家たちが、相場に楽観的なムードが漂っている時に警鐘を鳴らすメッセージを発しても、残念ながら多くの投資家達はそのメッセージを無視します。

このような非合理的な状態を理解するには、脳の興奮状態に追加して、人間の認知バイアスである『現状維持バイアス』を組み合わせることで説明することが可能となります。

人間の脳というのは基本的に変化を嫌う性質があります。

例えば、いつも通りの通勤ルートを変更してみる、使っている携帯キャリアを変更してみる、愛用の飲食店から他のお店を選んでみる、例を挙げるときりがないですが、我々の脳が陥る現状維持バイアスという反応は、様々なところで影響を与えており、脳というのはそれぐらい変化を避けようとするのです。

先ほど説明したとおり、人間の脳は、お金(株式リターン)を受け取った瞬間にドーパミンが分泌され、我々は快楽や興奮状態になります。

そして脳にとっては現在の興奮や快楽状態を維持したいという現状維持バイアスが働き、周囲からリスクを注意するよう促されても、脳がその情報を潜在的に避けようとするのです。

例をだすと、スノーボードやスカイダイビングを楽しんでいる最中に、迫りくる怪我や死の危機を軽視するのと同じ状態です。

上記で解説したプロセスは、人間の脳に深く根付いた本能なので、いざこの状態に陥ると、自分で気づいて対処することはほぼ不可能に近くなります。

しかし、対処療法がないわけではありません。

心理学者のダニエル・カーネマンが解き明かした「速い思考」と「遅い思考」の特徴を利用することで、自分がリスクを軽視した状態から正常な状態に戻ることが可能になります。

まず、投資のまったくの初心者の方に、他人が描いたストーリーではなく、あなたの考え・理論的なプロセスを説明してあげてください。

人は自分より無知な人に説明しようとすると謙虚になり、理解度が深まり、物事をより正確に分かるようになります。

あなたが市場の動きに絶対的な自信があるとき、絶対的に有望だと感じる銘柄がある時、投資の初心者にそう思う理由を事実に基づいて詳しく説明してみるのです。

そうすることで冷静な感情と思考が脳の熱意・興奮を抑え込み、実は投資の初心者に説明できるような論理的に整合性のある内容が何もないことに気づくと思うでしょう。

これが認知バイアスに陥った時の対処療法になります。

他の方法としては、他人の振る舞いやニュースの内容から、相場がリスクを軽視した状況なのかを察知するやり方です。

以下に、投資家が好調な相場でリスクを軽視する時に聞こえてくる、代表的なフレーズを列挙します

  • バリュエーションは高いけど、産業構造の変化によって過去の事例は当てはまらない(≒今回は違う)
  • 長い目で見ると株価は永遠に右肩上がりなのだから、株式はいつ買ったって問題ない
  • 投資効率を考えると一括投資が正しい
  • このバリュエーションは、オールドエコノミーにしか適用できない(≒正当化)
  • このタイミングで現金を持っているのは、ただの機会損失
  • 投資先は〇〇だけでよい。投資対象国は〇〇だけでよい

これらのフレーズが頻繁に聞こえてくる時は、多くの投資家がリスクに寛容となっている可能性が往々にして高いことがあります。これは歴史が物語っております。

もしあなたの耳に『投資先を分散せよ』とのアドバイスが煩わしく(カッコ悪く)聞こえ、冷静に受け止められないのなら、あなたはもはや認知バイアスに陥っているでしょう。

そのような時は、さきほど解説した手法を試してみて下さい。

説明する投資初心者の人がいなければ、紙に書いてみるのも効果的です。

多くの投資家の非合理的な行動が株価形成に影響しているのなら、自分の感情と向き合い、コントロールするスキルを身に付けることが重要なのは間違いないでしょう。

テクニカル分析やファンダメンタルズ分析を学ぶとも劣らないぐらい、己のことを理解することによって得られる経済的効果は計り知れません。

今回の記事が、皆様のあらたな投資策定の一助になれば幸いです。

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