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【米国株動向】アドビvs.スラック、どちらに注目か?

出典:Getty Images

モトリーフール米国本社、202121 8日投稿記事より

画像編集ソフト大手のアドビ (NASDAQ:ADBE) と企業コミュニケーションツールを運営するスラック・テクノロジーズ (NYSE:WORK) は、どちらも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)に端を欲したデジタル化の恩恵を受けています。

ここ12カ月間の株価上昇率は、アドビが33%、スラックは69%で、株式市場全般をアウトパフォームしています。

そのような状況下の2020年12月、セールスフォース・ドット・コム (NYSE:CRM) がスラック買収を発表しました。

それにより、自体はやや複雑に(かつ興味深く)なっています。

1. アドビ:クリエイティブの巨人

アドビは、3つの戦略的成長分野に力を入れています。

デジタル文書、クリエイティビティ、そしてデジタルエクスペリエンス(顧客体験管理)です。

世界的にデジタル・ソリューションへの動きが進む中で経営陣は、同社が対象とする市場のTAM(獲得可能な最大の市場規模)は、2023年までに1470億ドルとなると見ています。

クリエイティブ関連のソフトウエアをサブスクリプションで提供するCreative Cloud(クリエイティブクラウド)には、画像編集のPhotoshop(フォトショップ)やウェブサイトデザインのDreamweaver(ドリームウィーバー)といった業界屈指のアプリケーションがあります。

一方で、同社の最近のイノベーションにも注目が集まっています。

たとえば、Adobe Spark(アドビスパーク)は、ブランド企業やインフルエンサーによる、高品質のソーシャルメディア・コンテンツ作成を可能にするものです。

同社はこのように、新たなメディア形態出現の流れにも対応しています。

顧客体験管理関連のソフトウエア基盤が、Digital Experience Cloud(デジタルエクスペリエンスクラウド)です。

データに基づくマーケティング・分析・コマースとコンテンツとを融合させるためのツールであり、クリエイティブクラウド上に構築されています。

たとえば、利用者データを収集してリアルタイムのプロファイルを作成し、それをターゲット広告やパーソナライズド・ウェブコンテンツに利用するといったことを可能にします。

調査会社のガートナーは、アドビをこの分野において、セールスフォースやオラクルを凌ぐマーケットリーダーだと評しています。

このようにクリエイティブとデジタルエクスペリエンスを統合する能力こそが、同社の成長を牽引する強みです。

アドビの売上成長は堅調ですが、利益率の拡大はさらに目を見張るものがあります。

同社のビジネスモデルはソフトウエアのライセンシングからSaaSに移行しており、それにより営業利益率は2015年の19%から2020には33%と大幅に上昇しています。

つまり、同社の強力な売上成長は、経営効率化によって利益拡大を産んでおり、フリーキャッシュフローの急激な成長へとつながっています。

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2. スラック:コラボレーションのスペシャリスト

2020年12月1日、セールスフォースはスラックを約277億ドルで買収し、2021年7月末までに買収を完了させる見込みであることを発表しました。

スラックの株主は26ドル79セントを現金で、さらにセールスフォース株を0.0776株受け取ることとなりました。

つまり、本稿執筆時点の株価で計算すると、スラックの株主は1株あたり約45ドル44セントを受け取ることになります。

これが状況を複雑に(または奇妙に)しています。

現時点でスラックを購入することは、セールスフォースを購入することになります。

両社を見ていきましょう。

スラックのメッセージング・プラットフォームは、企業のEメールといった従来のチャネルに取って代わり、チームがより効率的かつ生産的にコラボレーションすることを可能にしました。

直近の四半期では、スラックの有料会員数は14万2000、継続率は123%となっています。

しかし同社には課題が一つあります。それは、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)です。

マイクロソフトとスラックはともに、インスタントメッセージングや社内コミュニケーション市場において大きな存在感を示しています。

スラックは中小企業において、Microsoft Teamsは大企業での利用が多い傾向があります。

しかし、マイクロソフトにはTeamsとMicrosoft365とをバンドルするという大きな強みがあります。

つまり、マイクロソフト365を導入している企業の多くが、すでにTeamsを持っているのです。

そのような状況ですが、セールスフォースのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は買収に対して前向きです。

同社はスラックを新たなユーザーインターフェイスに据えて、セールスフォース・カスタマー360プラットフォームを刷新しようと計画しています。

さらにスラックの機能をCRMソフトウエアに取り込んで、従業員や顧客、パートナー企業の繋がりやコミュニケーションをより便利にする意向です。

セールスフォースは、すでにカスタマーサービス、営業、マーケティング、分析などさまざまな市場で地位を築いていますが、スラックを取り込むことでさらに盤石となる可能性があります。

買収により、売上は2026年までに500億ドルになると見ています。

セースルフォース経営陣は、同社の市場におけるTAMは、2025年までに1750億ドルになると見込んでいます。

同社の営業利益率はアドビよりもかなり低位(過去5年間は、いずれも6%未満)ですが、売上はアドビより多く、さらに急激に増加しています。

投資家は、セールスフォースとスラックの統合を注視する必要があります。

2事業の統合はなかなか難しい可能性もありますが、売上シナジーと経営効率向上の可能性もあります。

セールスフォースは2019年にタブローを買収し、分析能力を強化していますが、今のところ、この買収は成功していると言えます。

スラックとの統合が成功すれば、成長加速の弾みとなるかもしれません。

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最後に

アドビとスラックの2社を比べると、アドビに軍配があります。

スラックは利用者が定着しやすい製品であり、ユーザーベースも拡大しています。

しかし株価が唯一の変動要因となっている現状を考えると、購入する理由はありません。

一方、アドビは業界屈指のソフトウエアや高利益の事業を抱えており、長期にわたる成長の道筋があります。

とは言え、セールスフォースも革新的で急成長を遂げる企業です。

スラックの買収により、同社の新たな機会が生まれる可能性もあります。

その意味では、本稿執筆者はアドビとセールスフォース、両方に注目しても間違いはないと考えます。

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免責事項と開示事項 記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。マイクロソフトの子会社LinkedInの従業員であるTeresa Kerstenは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、アドビ・システムズ株を保有しています。モトリーフール米国本社は、アドビ・システムズ株、マイクロソフト株、セールスフォース株、スラック・テクノロジーズ株を保有し、推奨しています。
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