【米国株動向】アマゾンとS&P500指数をリスク対リターンの観点で比較

モトリーフール米国本社、2021年2月7日投稿記事より
パンデミック(感染症の世界的流行)にもかかわらず、巨大eコマース企業アマゾン・ドット・コム(NASDAQ:AMZN)の第4四半期売上高は前年同期比で44%、営業利益は同77%増加し、ロックダウン(都市封鎖)による巣ごもり生活中の消費者が同社のオンライン・ショッピングにいそしんだことから、通年ベースでも素晴らしい業績となりました。
こうした好業績を背景に同社の株価は昨年60%を超える上昇をしました。
しかし、決算発表にあわせて、創業者で27年以上にわたり同社の最高経営責任者(CEO)を務めたジェフ・ベゾス氏が、今年後半にCEOを退任すると発表され、波紋を呼んでいます。
ベゾスという名がアマゾンとほぼ同義語であるとは言えない時代が始まることになりますが、投資家はどのように反応するか決めきれていません。
好決算にもかかわらず、株価は5カ月におよぶ低迷から脱して急伸するのではなく、わずかながら下落しました。
市場は、現在アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEOを務めており、ベゾス氏の後任となるアンディ・ジャシー氏がどのような変化をもたらすか、手がかりを探っている状況です。
結局のところ、アマゾンは単なるクラウド・コンピューティング事業ではありません。
未知の指導者が舵取りを担うことになる実績のある企業に賭けるよりも、上場投資信託のSPDR S&P500 ETF(NYSEMKT:SPY)など、より幅広い企業に投資することを検討する投資家もいるかもしれません。
現時点では、それがおそらく投資家が取れる最善の行動であると思われます。
政権交代
ほとんどの企業はCEOを超える存在ですが、例外もあり、ここは判断が難しいところです。
長年投資をしていれば、ジャック・ウェルチ氏が退任したあとのゼネラル・エレクトリックが以前と同じではなくなったことを覚えているかもしれません。
イーロン・マスク氏が自動車業界に革命を起こすことを決断しなければ、今日のテスラはなかったでしょう。
ベゾス氏は、アマゾンをeコマースを代表する企業にすると決め、同社が持続可能な企業となるか定かではない実績の乏しい初期の時代を乗り切ってきたように思われます。
ベゾス氏はまもなくいなくなりますが、その後はどうなるのでしょうか。
ジャシー氏の強みは、新型コロナウイルスで急増したオンライン・ショッピングが元の水準に戻ったあとでも成長を続ける事業を掌握していることです。
2006年に設立されて以降AWSは成長を続け、昨年の売上高は前年比30%、営業利益は同47%増加し、アマゾンの連結利益に貢献しました。
しかし、アルファベットやマイクロソフトなどの大手企業がクラウド・コンピューティング事業の強化を続けていることから、競争は激化しています。
しかし、ジャシー氏は単なるクラウド専門家でありません。
オンライン消費全般については前任者ほどの現場経験はありませんが、新たな成長エンジンとなる事業については相性の良さを示しています。
たとえば、同氏はビデオゲームの潜在力を信じています。
市場規模が近く年2,000億ドルに達するビデオゲーム業界におけるアマゾンの競争力はあまり強くありません。
この市場に機会を見出すジャシー氏は単なる技術屋ではありません。
しかし、アマゾンに今投資をするのを思いとどまらせるような材料もあります。
未知数が多過ぎる
ベゾス氏の退任はタイミングとしては最悪です。
同社が長年水面下で抱えていた懸念が深刻な問題として表面化しつつあります。
SNS(交流サイト)「パーラー」をアマゾンのサーバーに接続できなくするという決断が物議を醸していますが、その根底には大手プラットフォーム企業、いわゆる「ビッグテック」が、サービス提供先企業の運営にどれくらいのコントロールを及ぼすべきかという、より大きな哲学的な問題があります。
これは、連邦議会レベル、とりわけ政権党となった民主党の中で長年にわたって議論されてきた問題です。
同様に、独占禁止法上の懸念も米国内外で広がりつつあります。
いずれも克服できない課題ではありませんし、ベゾス氏が取締役会長として残り、そばにいてくれますが、ジャシー氏にとってあまり馴染みのない事柄です。
投資家が経営移行期にある同社に対して消極的な姿勢を示していることは、アマゾンの株を保有するうえでおそらく現時点の最大のリスクですが、規制をめぐる不確実性はこの状況をさらに悪化させることになります。
パンデミックが終息し始めても同社が現在の成長軌道を維持できるかも不確実性の一因となります。
決算内容が素晴らしかったにもかかわらず、わずかながら株価が下がったことはこうした懸念を反映したものであり、市場が同社に対しベゾスCEO時代と同じような信頼を取り戻すには何カ月もかかる可能性があります。
総合的な評価をし、リスクに注意すること
決してアマゾンの将来が暗いというわけではないので過剰に反応すべきではありませんが、今後多くの変化が予想され、そうした不確実性は株価にとってマイナスの要因となります。
市場全体もリスクを抱えているのは確かであり、たとえば、株価が新型コロナウイルスの影響からどれくらい早く抜け出すか正確なところはわかりません。
しかし、国内総生産(GDP)が第4四半期に約4%成長したことがわかっており、一方、スタンダード・アンド・プアーズによれば、S&P500指数構成企業の第4四半期の利益は新型コロナウイルスで経済が麻痺(まひ)した第2四半期の水準から倍増したと推定されます。
リスク対リターンという観点からいえば、インデックスベースの取引の方が現時点では賢明な選択です。
リターンのためにどのようなリスクを取っているのか知るのは大切なことです。
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