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東証市場再編を視野に、今後2か月程度の日本株マーケットで起きそうなこと

出典:Getty Images

ご存知の方が多いと思いますが、東京証券取引所(以下:東証)は2022年4月に株式市場を「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場に再編します。

現在東証一部に上場している企業も、市場再編時にはその規模や株主等の状況に応じて前述した3市場に分けられます。

その区分は今年の6月末を移行基準日とし、東証が上場会社に対して、当該移行基準日の時点で新市場区分の上場維持基準に適合しているか否かを7月末までに通知することになっています。

上場会社は、9月から12月までを市場選択手続期間とし、各社が当該期間中に市場選択に係る手続を行うことになっています。

最上位ともいえる「プライム」市場のコンセプトは

「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場」です。

出所:東証 新市場区分の概要等について

現在東証一部に上場している企業ならば、その株価の維持やレピュテーションを考慮すると「プライム」に所属したいと考える企業が多いと想像されますが、「プライム」に所属する条件は、以下に示す通り現在の東証一部上場基準とは異なります。

出所:東証 新市場区分の概要等について

ひとことでいえば、「株主数」に関しては基準が緩くなりますが、「流通株式時価総額」に関しては閾値がぐっと高くなります。

「流通株式」とは、上場有価証券のうち、大株主及び役員等の所有する有価証券や上場会社が所有する自己株式など、その所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いた有価証券を言います。(参考:用語集 | 日本取引所グループ

出所:市場構造の在り方等の検討 | 日本取引所グループ

上に示した図の通り、来年4月の市場再編に伴い、流通株式の計算方法も変わります。

現在は流通株式に算出されている「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」が保有する株式も流通株式からは除外されます。

この判定が今年の6月末時点に行われるのは、今年の3月期決算の有価証券報告書が発行されるのが6月下旬だからでしょう。

つまり、来年4月の所属市場が事実上今年の春に決まることになります。

日本株は「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」によって保有されている部分が少なくありません。

いわゆる「持ち合い」といって、A社とB社がお互いの株を持ち合うことで資本を支えあっているのですが、このような保有のされ方は流通株式とはみなさないのが新市場区分のルールです。

よって、「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」にもたれている「純投資」ではない株式を減らさないと、流通株式時価総額基準や流通株式比率をクリアできない企業が、現東証一部上場企業にも一定数あるはずです。

時価総額が小さい企業にそのような傾向がみられることでしょう。

そのような企業が「プライム」市場への所属を希望する場合、例えば「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」にもたれている「純投資」ではない株式を、マーケット等で売却する動きが3月に向けて少しずつ顕著になるのではないかと筆者は考えています。

「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」が保有している株式は、すべてではありませんが、有価証券報告書で公開されています。

例えば三菱UFJFG(8306) の2020年3月期有価証券報告書では、121ページから「特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報」で掲載されています。

出所:三菱UFJFG 2020年3月期有価証券報告書

個人投資家ができることとしては、自分が保有している企業に関して会社四季報などを用いて大株主に「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」が掲載されているかどうかをまずは確かめましょう。

そこに「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」があれば、「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」がそれなりの大株主であり、流通株式比率を左右する存在である可能性が高いといえます。端的に言えば需給の悪化がありうると考えていいでしょう。

セクター的に言えば、「系列」が存在する比較的時価総額が小さいメーカーに該当する銘柄が多いと考えます。

10%超の保有であればすでに流通株式とはみなされていませんが、10%未満の保有はしばしば見受けられ、現状は流通株式に加算されていますが、新市場区分では流通株式とはみなされないものとなります。

筆者はアナリスト時代に、この「持ち合い株式」の動きを考察していました。

当時、金融機関や事業法人から伺ったところによると、「持ち合い株式」の売却は保有している側の意志だけでは実行できず、持ち合っている相手との合意を得て、初めて売却できるそうです。

つまり、売却できるまでの合意形成に時間がかかる故、今から取り掛かるのではなく、東証が市場再編と新たな流通株式算出基準を公表後から案件は進められていて、すでにそれなりに売られているものもあるかもしれません。

折しも30年ぶりの株高で、株価としては売る判断がしやすくなっているとも思います。

先週、グンゼ(3002)は昨年6月から12月までの間に「政策保有株式」(=いわゆる「持ち合い株式」)の売却を行ったことを適時開示しました。

業績への影響は軽微とのことですし、もともとターゲットを設定して保有を減らすことを公表していたようですが、これから6月に向けてグンゼのように「持ち合い株式削減」をリリースする企業が増えていくかもしれません。

株価を左右する要素の一つが需給です。

市場再編はその需給を動かすイベントですので、どの企業がどの市場に属するかだけではなく、ほかの要素も念頭においてほしいと思います。

免責事項と開示事項 記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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