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相場のカギは「仕掛け」にあり。手仕舞いより仕掛けを重視すべき理由とは

出典:Getty Images

江戸末期の大儒者、佐藤一斎が遺した『言志四録』という本があります。

言志四録は、言志録・言志後録・言志晩録・言志耋録の四巻から成る本で、西郷隆盛がこれを抄録したものを指針としていたことで知られています。

第三巻にあたる言志晩録の第255条に、以下のような記載があります。

「凡そ事、初起は易く、収結は難し。一技一芸に於いても亦然り。(どんなことでも、始めるときは簡単だが、終わりが難しい。技術でも、芸術でも、なんでもそうである)」

「一技一芸においても然り」とある通り、相場も例外ではありません。

相場技法を用いて相場を張ってゆくとき、最初は試し玉から始めます。

試し玉は地合を確かめるための小さな玉であり、どのような状況でもあまり抵抗なく建てることができます。

建玉の技術を学べば投資はグンとうまくなる。まずは「試し玉」からやってみよう

地合が悪いと判断すれば、試し玉は切ってしまいますが、試し玉自体の損益は軽微であるため、損切りにも抵抗がありません。

試し玉から始めるならば、相場も「初起は易し」といえます。

試し玉を入れた後、本玉を入れ、ナンピンや増玉もし、次第に建玉は大きくなっていきます。

うまくトレンドに乗れば、含み益はどんどん膨らみます。

トレンドの終盤に近付くと、手仕舞いを考えていくわけですが、手仕舞いのタイミングは早すぎても、遅すぎても損益に大きな影響をもたらします。

さらに、トレンドの終盤は相場が荒れやすく、適切に判断することがかなり難しく感じられます。

まさに「収結は難し」です。

手仕舞いよりも仕掛けが重要

一般にも「買うよりも売るほうが難しい」などと言われる通り、相場では最初よりも最後のほうが難しいものです。

ここで注意したいのは、仕掛けと手仕舞いを分けて考えないことです。

これを分けて考えてしまうと、簡単なものより難しいものに注力すべきと考え、仕掛けを軽視したり、手仕舞いにあまり意味のない苦労をすることになりかねません。

確かに、仕掛けより手仕舞いが難しいことは間違いありません。

しかし、これを「仕掛けよりも手仕舞いに注力すべきである」と考えるのは間違いです。

後述する通り、うまく仕掛けることができなければ、うまく手仕舞うこともできず、仕掛けを離れた手仕舞いには努力も注力もないからです。

さすがに一斎先生ほどになると、このことがよくわかっていたようです。

第255条に続いて、第256条には以下のように書かれています。

「収結は固と難しと為す。而れども起処も亦慎まざる容からず。起処是ならずんば、則ち収結も完からじ。」

訳:終わりが難しいことは当然である。しかし、これは最初が慎重でなくてもよいということではない。むしろ、最初をうまくやっていなければ、終わりもうまくいかない。

手仕舞いだけを意識しても意味がない

仕掛けがまずいと、あらゆることがうまくいかなくなります。

仕掛けの際に慎重にならず、不利なタイミングで大きな玉を建てれば、早期に損切りしたとしても、それなりに大きな損失を被るでしょう。

これが、不利な状況でのナンピンを招き、さらなる損失につながることも多いです。

そのような建玉で、かろうじてトレンドに乗ったとしても、平均建値がかなり不利になっているのが普通です。

平均建値を有利にしておかなければ、トレンドの最中で増玉することでさらに不利になるため塩梅も難しく、相場技法の運用が全体的にうまくいかなくなります。

その結果、元来難しいとされる手仕舞いが、いっそう難しくなります。

平均建値が抑えられていなければ、手仕舞いを考えるべきトレンドの終盤で、次のような状況に陥る可能性が高いです。

  • 現在価格と平均建値が近く、終盤の大きな変動によってすぐに含み損を抱える可能性があり、冷静に手仕舞うことができない(早すぎる利確の危険)
  • 思ったほど利益が乗っていないため、もう少し、もう少しと粘っているうちに急激な変動に巻き込まれ、手仕舞うべきタイミングを逸してしまう(遅すぎる利確の危険)

このような状況では、手仕舞いをうまくやろうと努力したところで、あまり意味はありません。

適切なタイミングで手仕舞えたとしても、そもそもの平均建値が不利なのですから、せいぜい「多くない利益をできるだけ取った」くらいの成果にすぎません。

空回りして失敗する可能性も高いでしょう。

起処、是なるべし

仕掛けが慎重であればどうでしょうか。

試し玉を繰り返し、底を見極めて本玉を建てているならば、そこからの下落は限定的であり、ナンピンもうまくいきます。

底値圏でしっかり本玉を作ることができ、平均建値は低く抑えられ、その後の増玉の影響も小さく、トレンド全体を通じて有利な建玉を維持できます。

有利な建玉を維持した状態でトレンドの終盤を迎えると、

  • 含み益が十分に生じているため、終盤の変動にも冷静に対処できる(早すぎる利確に陥りにくい)
  • いつ利確しても満足できる状態であり、手仕舞いを決心しやすいため、深追いして急激な変動に巻き込まれることがない(遅すぎる利確に陥りにくい)

という、非常に好ましい状態で手仕舞いを考えることができます。

元来難しい手仕舞いが、かなりやりやすくなるのです。

仕掛けも手仕舞いも、どちらも重要です。

しかし、全体的に見れば仕掛けのほうが圧倒的に重要といえます。

極端に言えば、仕掛けがうまくいっていれば、手仕舞いはどうあっても良い結果が得られます。

しかし、仕掛けがまずければ、手仕舞いはどうあっても良い結果は得られません。

例えば、2,000~4,000円の上昇相場で、平均建値2,500円の買玉を持っていれば、トレンドの終盤でどのように手仕舞っても大きな利益が得られます。

平均建値3,500円の買玉を抱えていたのでは、トレンド終盤でいくら頑張ったところで、満足のいく利益は得られないでしょう。

一斎先生の言う通り、まさに「起処、是なるべし」です。

本間宗久翁も仕掛けを重視した

一斎先生は儒者であり、相場とは無縁です。

しかし、起処是なるべしの考えは、本間宗久翁の相場哲学と完全に一致しています。

宗久翁が仕掛けをどれくらい重要視していたか、それは宗久翁の遺著を見れば明らかです。

明治43年に出版された『宗久翁相場全集』は、宗久翁の遺著に注釈を施したものです。

この本は、「米商は踏出大切の事」で始まります。「踏出」とは仕掛けのことです。

古い本では特にみられる傾向ですが、その本の内容のうち、最も重要なものを冒頭に据えたものが多いです。

論語が良い例で、全10巻20篇にわたる論語において、冒頭の「学びて時にこれを習う」の章句こそ論語の真髄です。

相場技法にも色々あり、解説することも種々ある中で、いの一番に仕掛けの解説をしている事実だけを見ても、宗久翁が仕掛けを重視していたことは疑いありません。

冒頭で、宗久翁は以下のように説いています。

「米商は、踏出し大切也。踏出悪き時は、決して手違になる也(米相場では、仕掛けが大切である。仕掛けが悪い時は、必ず失敗するものだ)」

この教訓を、表面的に見ただけでも、宗久翁の哲学がよくわかります。

仕掛けが悪ければ必ず失敗すると断言しているのです。

宗久翁は、遺著の中で手仕舞いについても触れています。

しかし、仕掛けほど重視していません。

宗久翁にとって、手仕舞いは「上手に仕掛けた後、しっかり利益を取るための手仕舞い」、「仕掛けに誤ったとき、被害を最小限に止めるための手仕舞い」といった位置づけに過ぎません。

仕掛けあっての手仕舞い、という考え方で一貫しています。

当たり前に相場を張ること

一斎先生も宗久翁も、全く同じ教訓を遺しています。

儒学であれ、相場であれ、結局は同じところに到達するのでしょう。

入口が違うだけのことで、それぞれの道を極めていけば、行きつくところは同じです。

本質を無視していれば、小手先の理論や技術をいくら使ってみたところで、相場での成功は望めません。

当たり前ではない、奇策のような方法を用いて相場を張るのではなく、もっと当たり前のこと、例えば仕掛けをうまくやる、そのために好機をじっくり待つ、試し玉を入れてタイミングを図るといったことが重要です。

ただし、「当たり前にやればよい、だから相場は簡単」というものではなく、これが厄介なところです。

当たり前のことは簡単に見えますが、実際には簡単ではありません。

当たり前にやれば良い、しかし当たり前のことを当たり前にやれない、ここが相場の難しさだと思います。

仕掛けをうまくやるためには、じっくり待つことが重要です。

待つことは簡単に思えますが、中々難しいものです。

では、当たり前に待つためには、どうすればよいのでしょうか。

相場で「待つ」とは具体的にどのようなことなのか、どのような考え方によって待つべきなのか、次の記事で解説していきます。

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