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2021年以降配当利回りの上昇が見込める「S&P10」の中でも優秀な銘柄

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、3月に世界の金融市場が未曾有の大暴落を経験する中、日欧米などの主要中央銀行による大規模な金融緩和が功を奏し、年末には世界の上場企業の株式時価総額は、史上初の100兆ドルを超えるなど、激動の1年となりました。

結果的に2020年末の取引最終日には、「NYダウ平均株価」や「S&P 500指数」といった米国主要株価指数は終値ベースで史上最高値を更新しており、世界中の投資家は来年以降の米国経済の回復及び更なる成長に強気の姿勢である事が分かります。

そんな「S&P 500指数」にはサブ指数として、「S&P 100指数」と呼ばれる投資ユニバースがあり、各業種を代表するブルーチップと呼ばれる優良株式100銘柄で構成されています。

そこで、今回は「S&P 500指数」のうち、時価総額上位100銘柄から構成される「S&P 100 指数」をテーマに、特に「S&P10戦略」と呼ばれる「ダウの犬」に相当する投資手法に焦点を当てながら、将来的に配当利回りの上昇が期待される銘柄をご紹介致します。

まず、「S&P100 指数」は、GAFAMやTeslaといった超大型株の組入れ比率が高く、特に情報技術や一般消費財の占める割合は約46%にもなり、直近10年までの各年における年率リターンでは米主要株価指数をアウトパフォームしています。

Total Return 1Y 3Y 5Y 10Y
S&P 100 21.52% 15.59% 15.97% 14.25%
S&P 500 18.40% 14.18% 15.22% 13.88%
Dow Jones Industrial Average 9.72% 9.90% 14.65% 12.97%

出所:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス「パフォーマンス」を基に筆者作成

実際に、同指数の組入れ上位10銘柄の全体における割合は昨年末時点で4割超かつ、時価総額は10兆ドルと世界の株式時価総額の約1割を占める規模であり、これらの超大型株のリターンが指数のパフォーマンスに寄与した考えられます。

出所:finance.yahoo.com

さて、時価総額1兆ドル超の超大型株を筆頭に優良株式100銘柄で構成される「S&P100指数」ですが、同指数には「S&P10戦略」と呼ばれる投資手法が存在します。

これは、「S&P100指数」構成銘柄のうち、配当利回りが最も高い10銘柄に年末に投資し、翌年末まで継続保有し、その時点で配当利回りが最も高い10銘柄へリバランスする事で、割安になった優良銘柄に毎年投資する事を念頭に置いています。

2020年はGAFAやTeslaなどの超大型株が米主要株価指数を大きくアウトパフォームした事から、グロース株に優位な相場展開だった一方で、今年新たに「S&P10戦略」に採用された高配当利回りの10銘柄の多くにおいて、年間リターンはマイナス圏で低迷しています。

一方で、「S&P10戦略」の長期的なリターンの優位性においては、ペンシルベニア大学大学院のジェレミー・シーゲル教授が著著「Stocks for the Long Run 4/E」(和名:「株式投資」)の中で、米主要株価指数との比較に言及されています。

S&P10戦略と米国株主要2指数のパフォーマンス比較(1957~2006年)

利回り(CAGR) ベータ
S&P10戦略 15.71% 0.9092
ダウ10戦略 14.08% 0.8532
ダウ30(NYダウ平均株価) 11.86% 0.9341
S&P500 11.13% 1.000

出所:ジェレミー・シーゲル著「株式投資」

同教授によると、「S&P10戦略」は米国主要株価指数や「ダウの犬戦略」を長期的にはオーバーパフォームしており、高配当利回りのバリュー株投資が、現在では主流のインデックス運用に対して有利となり得る事が分かります。

それでは、2021年における「S&P10戦略」に採用された10銘柄のうち、「YOC (5年間)」の高い上位3銘柄を紹介致します。

なお、「YOC」とは具体的に「年間受取り配当金÷買値 (平均取得価格)」であるため、連続増配する前提で考えると、基本的に「YOC」が高い銘柄ほど、長期保有するに従って配当利回りが上昇します。

「フリーキャッシュ・フローマージン (FCFM)」は具体的に「フリーキャッシュフロー÷売上高」であり、連続増配の原資となる企業が自由に使える現金をどれだけ効率よく稼いでるかを見る指標として、その対象銘柄の収益面、ならびに財務面の安定性を図る重要です。

【優秀銘柄】~S&P10戦略 2021~

2020年末時点の「S&P 100」の構成銘柄の配当利回りを基に、今年の「S&P10戦略」を比較すると、ABBV, T, MO, PM, SPG, DOWの6銘柄が昨年同様にランクインしており、特に、ABBVとTの2銘柄は再びYOCの高い上位3銘柄として、それぞれ首位と3位です。

また、採用された10銘柄 において、YOC (5年)と連続増配年数の加重平均値はそれぞれ、5.68%と32年と3年時点に対して、配当利回りの上昇が見られ、またいずれも「ダウの犬戦略」の値を上回る結果となりました。

S&P10 Market Cap ( $b) FCFM (TTM) YOC3Y
(%)
YOC5Y (%) Growth
(Year)
Sector
1 ABBV 189 37.70 5.38 8.75 49 Health Care
2 KMI 31 25.19 5.81 6.95 3 Energy
3 T 205 16.26 5.35 5.95 36 Communication Services
4 MO 76 39.63 4.82 5.84 51 Consumer Staples
5 CVX 163 2.81 4.10 5.71 33 Energy
6 PM 129 32.30 4.54 5.37 12 Consumer Staples
7 IBM 112 16.86 4.27 4.66 21 Information Technology
8 XOM 174 -1.71 4.16 4.40 38 Energy
9 SPG 28 2.66 3.03 2.66 0 Real Estate
10 DOW 41 12.83 N/A N/A 1 Materials
Weighted Average 18.35 4.53 5.68 32

出所:

FCFM (TTM):Key Ratio(morinigstar.com)

YOC(3Y,5Y), Dividend Growth:Yield on Cost(seekingalpha.com)

Market Cap:Summary(finance.yahoo.com)

*いずれも2020/12/31時点のデータを参照。

アッヴィ

  • FCFM (TTM):37.70%→「S&P10戦略」内順位No.2
  • YOC3Y:5.38%→「S&P10戦略」内順位No.2
  • Dividend Growth:49年→「S&P10戦略」内順位No.2

2013年にABTよりスピンオフしたアッビィ(NYSE:ABBV)は、研究開発を基盤としたバイオ医薬品会社であり、主に免疫学・腫瘍学・ウィルス学・神経科学の4大治療領域に事業展開しています。

特にリウマチ薬の「ヒュミラ」は同社の売上げ全体における比率が4割のブロックバスターである一方で、昨年には美容領域に強みのあるアラガンを買収した事で、事業ポートフォリオの多角化を進めています。

その結果、直近の第3Q決算では、売上高が前年同期比52%増かつ、純利益22%増と大幅な増収増益を達成しており、同時に通期の業績ガイダンスの上方修正及び、二桁の増配を発表した事で、昨年の年間騰落率は20%超と米主要株価指数を凌ぐリターンを記録しました。

財務面では、キャッシュフローが最大の強みであり、FCFMの10年間平均値は30%超と抜群に安定しており、同社の研究開発や株主還元政策を支える上で、大きな強みと言えます。

現在、配当性向は50%未満と十分に余裕がある水準であり、連続増配50年の「配当王」への仲間入りに加えて、製薬大手の武田薬品工業と協業で新型コロナウィルス感染症の臨床試験を開始しており、今後の更なる収益・配当の拡大が期待されます。

キンダー・モルガン

  • FCFM (TTM):25.19%→「S&P10戦略」内順位No.4
  • YOC3Y:5.81%→「S&P1010戦略」内順位No.1
  • Dividend Growth:3年→「S&P10戦略」内順位No.8

1936年創業のキンダー・モルガン(NYSE:KMI)は、中流分野のエネルギーインフラを担う企業として、主に北米に総距離83,000マイルのパイプライン及び147か所のターミナル拠点を擁しており、米国内で消費される天然ガスの約4割が同社の流通網を経由しています。

主要セグメントは、天然ガスパイプライン、製品パイプライン、ターミナル、CO2事業の4部門構成であり、天然ガス事業においては、抽出・液化・貯蔵・輸送といった中流分野を一元化して運用管理できるシステムが整備されており、売上げ全体の6割超を稼ぐ主力です。

直近の第3Q決算では、売上高が前年同期比9.2%減、かつ純利益も同8.7%減の減収減益となった一方で、契約型の手数料ビジネスを軸としたフローで稼ぐ事業モデルのため、キャッシュフローの不況下での耐性が強く、現金同等物が同3.4倍に拡大と経営資源は潤沢です。

実際に、昨年末に発表された今年の業績見通しについて、純利益の水準を従来から2.2%増の上方修正に加えて、配当水準の維持かつ、4.5億ドルの自社株買いを実行するなど、外部環境に左右されにくい経営体質と株主還元政策に積極的な姿勢を見せています。

財務的には、直近のフリーキャッシュフロー・マージンが約25%と改善傾向にあり、原油などの資源価格下落時でも財務体質が大きく悪化する事なく、必要最低限の合弁事業への投資や株主政策といった柔軟な企業経営を可能にしている点が強みと言えます。

AT&T

  • FCFM (TTM):16.26%→「S&P10戦略」内順位No.6
  • YOC3Y:5.35%→「S&P10戦略」内順位No.3
  • Dividend Growth:36年→「S&P10戦略」内順位No.4

1983年創業のAT&T(NYSE:T)は、米国の通信メディア大手として、主力の通信セグメント (AT&T Communications)が売上げ約8割を稼ぐ収益源であり、またWarnerMediaによるTV番組のプレミアムコンテンツ (HBO)やDCコミックスやハリーポッターなどの長編映画、また、CNNニュースまで幅広いエンターテインメントを世界中に提供しています。

近年は純利益と時価総額において、ライバル社のベライゾン・コミュニケーションズ (VZ)に後塵を拝していますが、2018年に米メディア大手タイムワーナーを買収するなどコンテンツ分野の強化と事業の多角化を進めています。

特に、米調査会社CBインサイトによると、同社は平均で年30件以上の提携を発表と世界の通信大手12社で最多であり、北米の通信事業者として初のサイバーセキュリティー分野の「グローバル・サイバーセキュリティー・アライアンス」に参加、また昨年にはグーグル・クラウドを活用した法人向けサービスの開発を発表と機動的な経営姿勢を見せています。

直近の第3Q決算では、コロナ禍で映画事業の不振が重しとなり、売上高が前年同期比5%減かつ、純利益が24%減の減収減益となる一方で、携帯電話の契約件数が市場予想の純減に反して、約64万件の純増と第2Qから大幅に回復しています。

また、コロナ禍における財務体質強化を目的に一時的に自社株買いを停止し、顧客対応にあたる従業員のボーナスを2割増やす方針を発表しています。

携帯事業以外の分野では、国内の有料テレビ「HBO」と動画配信サービス「HBOマックス」を合わせた契約者数は3,800万人と従来の年末目標を超える成果となり、収益源の多角化が経営に余裕を持たせています。

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連続増配を継続する銘柄では株価が割高な水準にあることが多いです。ここではやや割高で、配当利回りが高くなくても、増配も含めた今後の成長性を評価できる銘柄を紹介します。

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