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ジム・シモンズのポートフォリオから選ぶ優秀銘柄

米国株式市場では主要3指数が過去最高値を更新する中、世界の上場株式時価総額が100兆ドルを上回った事で、パンデミックから経済正常化を織り込んだ投資家の潤沢な運用資金が、活況なマーケット環境を演出しています。

一方で、コロナショックからいまだ苦戦を強いられている業界があるのも事実で、高報酬でメディアに報じられるヘッジファンドマネージャーの世界もその一つです。

今回はそんなヘッジファンドをテーマにその市場環境ならびに、特にクオンツ運用の資産残高が世界最大の米ルネサンス・テクノロジーズ率いるジム・シモンズ氏のポートフォリオを分析対象に、その構成銘柄をご紹介致します。

まず、業界概況について、2020年上半期末時点で、世界のヘッジファンド運用資産残高は2,300億ドル減と、金融危機以来のマイナス幅となった一方で、7月以降のV字反発で四半期では5年ぶりとなる資産拡大幅により、昨年末の水準を回復しつつあります。

(図①)

地域別では、欧州とアジア太平洋が昨年末から資産流入の傾向にある一方で、ヘッジファンド運用資産残高最大の北米では、年初来500億ドルの資金流出と低迷が続いています。

ヘッジファンド市場のパフォーマンスにおいては、9月(Q3)終了時点で、全体で年初来プラス圏に浮上しており、各国中銀の大規模な金融緩和と財政出動に支えられて、資産別では株式指数が6.9%の上昇と特に市場全体を上回る高リターンを見せています。

(図②)

出所(図①, ②):HFM「Hedge funds in Q3 20」を基に筆者作成

さらに、戦略別に直近1年間の運用資産増加額の上位3社を調べると、株式とクオンツ型ヘッジファンドの資金流入額が大きく、特にクオンツ運用の「ルネサンス・テクノロジーズ」が140億ドルと目を見張る増加額を記録しています。

【戦略別AUM増加ランキングTop3】*2019/1/1~2020/1/1($bn)

Specialism Top 3 Firms AUM Change of HF*(Y/Y) Top 100 HF Ranking Headquarter Top 3 Total AUM Change
Equity HF TCI Fund Management 7.3 17 UK 16.0
Adage Capital Management 4.4 14 US
Hillhouse 4.3 11 HKG
Quant HF Renaissance Technologies 14.0 2 US 15.0
Two Sigma Investments 1.0 5 US
First Quadrant Unchanged 40 US
Mulit-strategy D.E.Shaw Group 6.7 6 US 12.5
Millennium Management 4.6 9 US
Citadel 1.2 15 US
Credit HF Davidson Kempner 3.0 13 US 7.6
Canyon Partners 2.7 23 US
Golden Tree AM 1.9 34 US
Macro HF Graham Capital Management 2.1 32 US 4.5
SPX Capital 1.4 53 Brazil
Pharo Management 1.0 51 UK

出所:HFM「The top 100 hedge fund managers 2020」を基に筆者作成

同社は、ヘッジファンドの運用資産残高において、ブリッジウォーター・アソシエーツに次ぐ二番手であり、またクオンツ運用では世界最大と過去40年間に渡って、数学とコンピューター科学を融合させた投資手法を確立した同分野のパイオニアとされてます。

創業者兼CEOのジム・シモンズ氏は数学者であり、政府機関で暗号解読者として活躍した後に、その知見を活かして同社を起業し、大量の市場データを基に、金融商品の価格変化のパターンを解明する事で、アルゴリズムによる新たな投資モデルを構築に成功しています。

同氏について書かれた「最も賢い億万長者」によると、ルネサンス・テクノロジーズの旗艦ファンドである「メダリオン」はアルゴリズム型ヘッジファンドとして、2018年までの30年間の運用収益率が39.1%と突出したリターンを実現しています。

ファンドマネージャー 旗艦ファンド 運用期間 年平均リターン
Jim Simons Medallion Fund 1988~2018 39.1%
George Solos Quantum Fund 1969~2000 32.0%
Warren Buffett Berkshire Hathaway 1965~2019 20.3%
Ray Dalio Pure Alpha 1991~2018 12.0%

(図④)

同社の直近5年間におけるヘッジファンドのリターンはS&P500をベンチマークとすると、勝率58%と四半期ベースで9回劣後する場面がありましたが、累積リターンでは104%とインデックスに対して約29%の超過収益を獲得しており、その優位性が分かります。

また投資手法については、主にアルゴリズム取引による超短期的な投資を小刻みに繰り返すため、ポートフォリオ全体の保有銘柄数は9月末時点で3,332銘柄と同業者のレイ・ダリオ氏の430銘柄に比べると分散型と言えます。

(図⑤)

一方で、保有割合の大きい中核銘柄においては、特にヘルスケアセクターが多く、トップ10のうち5銘柄は医薬・医療関連が占めており、加えて、今年の第1Q以降は情報技術や生活必需品といった日常生活のインフラを担う業種の比重を高めています。

(図⑥)

出所:(図④,⑤,⑥)Hedge Follow「Jim Simons Stocks Portfolio」を基に筆者作成

そこで、今回は、ジム・シモンズ氏率いる「ルネサンス・テクノロジーズ」のポートフォリオより直近の第3Qで保有比率が上昇した上位3銘柄をご紹介致します。

【優秀銘柄】~Jim Simons Stocks Portfolio~

Stock % of Portfolio % Change(Q/Q) FCFM
TTM (%)
Revenue (3-Year Annualized)% Sector
1 PG 0.42% 148.23% 20.88 2.93 Consumer Staples
2 BIDU 0.74% 45.79% 18.70 15.04 Communication Services
3 REGN 0.60% 20.48% 17.12 17.39 Health Care
4 MO 0.35% 20.17% 39.63 0.79 Consumer Staples
5 PDD 0.86% 4.71% 52.18 290.84 Consumer Discretionary
6 VOD 0.53% 3.27% 21.48 -1.9 Communication Services
7 UTHR 0.37% -0.48% 46.85 -3.23 Health Care
8 NVO 1.95% -2.05% 35.21 2.97 Health Care
9 MNST 1.00% -3.28% 24.77 11.27 Consumer Staples
10 NTES 0.54% -4.99% 26.61 15.77 Communication Services

出所:

Revenue Growth:Financials(morinigstar.com)

FCFM (TTM):Key Ratio(morinigstar.com)

*いずれも2020/12/20時点のデータを参照

*FCFMは具体的に「フリーキャッシュフロー÷売上高」であり、配当原資となる現金をいかに効率よく稼いでるかを見る財務指標の一つです。

% Change (Q/Q):Top 50 Renaissance Technologies Holdings(Hedge Follow)

P&G

1837年に創業のP&G(NYSE:PG)は、世界最大級の消費財メーカーとして、その主要ブランドは36種類にも及び、美容・化粧品からヘルスケアやホームケアといった全5部門から構成されるセグメントを基盤とした生活必需品を世界180ヵ国以上に提供しています。

地域別では、米国外の売上げ構成比が50%を超えており、欧米とアジア太平洋地域でそれぞれ約2割とバランスの取れたポジショニングに加えて、5つの売上げ部門のうち4つが前年比で増収と、分散された事業ポートフォリオが多種多様な巣ごもり生活の需要に応えています。

直近の7-9期の業績では、コロナウイルスの拡散防止グッズなどの家庭用掃除用品の販売が好調で、売上高が前年同期比9%増かつ純利益が同19%増と四半期で過去最高益を達成し、更に通期の売上高予測を前期比1~3%増から3~4%増に上方修正と経営環境は良好です。

同社の株主還元に対するコミットメント意識は高く、連続増配年数は64年と「配当貴族」「配当王」共に採用されており、また直近5年間における累積株主リターンはS&P500の凌ぐ79%増と長期保有のメリットを享受するのに相応しい銘柄と言えます。

財務面では、フリーキャッシュフロー・マージンならびに営業利益率がともに20%を超えており、かつD/Eレシオが1未満と収益基盤は強固であり、また2020年4月に増配を発表したものの、配当性向は約57%と今後も連続増配記録の継続が期待されます。

バイドゥ

2020年創業20周年を迎えたバイドゥ(NASDAQ:BIDU)は、中国インターネット検索最大手として、「単純と信頼性」を企業理念に個人、ビジネス顧客向けに検索事業を中心とした多様なプラットフォームを提供すると同時に、自動運転開発の企業連合である「アポロ計画」を主導しています。

同社は中国政府が掲げる「次世代AI発展計画」において、自動運転分野のAIプラットフォーマーに指定されており、中国の北京市などで自動運転のタクシーやバスの試験運行を実施するだけでなく、今後は自社ブランドのEV生産を検討中と報じられています。

また、米中摩擦の長期化を見据えた中国政府の意向として、中国IT「BATH」による国内ハイテク供給網整備を米国IT「GAFA」への対抗軸にする動きが見られ、その一角を担う同社は遺伝子などのバイオデータを解析し、分子標的薬や早期診断技術の開発する新会社「百図生科」を設立した事で、生命科学分野にも領域を拡大しつつあります。

事業セグメントでは、主力のオンラインマーケティングが売上げ全体の7割超を稼いでおり、また会員数が1億人兆のエンターテイメント事業「iQIYI」では、ライセンス映画などのオリジナルコンテンツを提供するオンラインビデオプラットフォームを手掛けています。

第3Q決算では、売上高が前年同期比1%の微増に留まる一方で、売上原価の2割超カットが寄与して、営業利益は同161%の大幅増益を達成しており、2020年12月にUBS証券の投資判断の引上げをきっかけに、株価は一時200ドルをつけて年初来高値更新と上昇基調にあります。

リジェネロン

1988年創業のリジェネロン(NASDAQ:BIDU)はバイオ医薬品会社として、これまで7分野に渡りFDA承認の治療法開発に成功しており、現在9分野において臨床試験を最終段階まで進めています。

医療分野のパイプラインとして主に眼疾患、循環器疾患、がん、炎症性疾患があり、加えて、仏製薬大手のサノフィ社と共同でモノクローナル抗体薬の開発やまた、新型コロナ抗体治療薬の治験も第二相まで進めています。

そして、新型コロナウイルス感染症の治療で本命とされる「抗体医薬」において、米トランプ大統領の感染治療に投与された同社の抗体カクテル治療薬「REGN-COV2」に対して、米食品医薬品局(FDA)が2020年11月末に、2例目となる緊急使用許可を承認しています。

財務面では2012年度に黒字転換して以来8年間でROEの平均値は約31%と安定しており、一方で、D/Eレシオにおいては過去10年間で総じて1未満を維持しており、その筋肉質な経営体質に強みがあると言えます。

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2021年に株価が倍になるようなポテンシャルの高い成長株を4つご紹介します。これらは、短期的なリスクは高いものの長期的に大きなリターンを目指す個人投資家向けの成長株です。こちらからメルアドを登録していただき、レポートをご覧ください。

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