台湾セミコンダクターが2020年も好調。その理由とは?

パソコンやスマートフォンは、販売しているメーカーが全ての部品を一貫して製造している訳ではありません。
PCをはじめとしたデバイスのCPUは、半導体メーカーが作っています。
しかし半導体メーカーの代表だったインテルの株価は2020年現在冴えません。
最先端の半導体開発力ではインテルは市場から遅れをとっていると判断されているからです。
一方で好調なのが、台湾を代表する半導体メーカーの台湾セミコンダクター(NYSE:TSM)です。
半導体受託製造の世界シェア5割以上を台湾セミコンダクターが占めています。
2020年の決算も好調で、見通しも明るく、投資先としても妙味があります。
台湾セミコンダクターは、米国ではADRとして上場しています。
もちろん台湾市場にも上場していますが、ADRで買う方が米国株と同じ感覚で購入することができます。
あなたのiPhoneにも台湾セミコンダクターのチップが入っている
iPhone12が2020年末にリリースされましたが、採用されているCPUを製造しているのが台湾セミコンダクターです。
アップルが自社開発しているCPUの製造を一手に受託製造で引き受けています。
AppleはこれまでインテルのCPUも採用していましたが、台湾セミコンダクターのCPUへの切り替えを発表しています。
Appleからの半導体受注の増加は、台湾セミコンダクターの好決算にもつながりました。
半導体の設計まではできても、実際に大量に製造までできる会社は、それほど多くはありません。
台湾セミコンダクターはAppleの強力なパートナー企業ですが、Apple以外にも半導体設計をするAMDやクアルコム、エヌビディアといったメーカーも顧客に持っています。
IT・ハイテク産業に強い台湾
台湾はハイテク産業に強いことで有名です。
台北から台湾新幹線ですぐに行ける新竹市は、台湾のシリコンバレーと呼ばれているIT産業の集積地帯で、実際に行ってみると台湾のIT・ハイテク産業の底力を感じられます。
台湾の株式市場を俯瞰しても、ITやハイテク関連の銘柄が多く上場されており、台湾自体がIT・ハイテク産業に強いのです。
台湾セミコンダクターの強みは、受託製造に特化していること
台湾セミコンダクターは、分かりやすくいえば下請けに特化したビジネスモデルです。
世界中の企業から製造の工程だけを受託で引きうけます。
CPUの集積回路の設計自体はできても、製造と大量生産は難しいという企業もあります。
半導体の大量生産には多額の設備投資が必要になるので、設計だけはするから、製造は外注したいという企業も出てきます。
台湾セミコンダクターに任せれば、大規模な設備投資や工場を建設する必要はなくなります。
しかも台湾セミコンダクターは自社製品をもっていないからこそ、複数の半導体の設計をする企業から同時に仕事を受注できます。
最先端のIT企業や製造業では、情報流出が問題になることがありますが、台湾セミコンダクターは自社製品を開発せず秘密も遵守することで、世界の半導体製造を引き受けています。
世界最先端の生産ラインを持ち、下請けに特化することで、世界の名だたる複数の企業と取引できるようになっているのです。
台湾セミコンダクターが好調な理由
台湾セミコンダクターの2020年の3Qの決算は好調でした。
決算はNTD(ニュー台湾ドル)ベースでIRから確認できます。
売上高と営業利益の増加率を読み取ってみると、約21%の増収、約39%の営業増益です。
台湾セミコンダクターは、米中の貿易摩擦の影響もあり、苦渋の選択で中国のファーウェイとの取引を停止しました。
しかし、パソコン向け、サーバー向け、ゲーム機向けの半導体需要が好調で、大口顧客との取引がなくなっても業績は揺らぎませんでした。
世界全体のデジタル化が進むことで半導体需要が伸びれば、必然的に台湾セミコンダクターの需要も高まります。
また直近ではAppleからの受注も好調です。
最新のMacBookAirは独自開発CPUの「M1」を搭載しており、インテルのCPUを積んだ従来のマシンを大きく上回る処理速度を実現させ、話題となっています。
その「M1」の製造を受託しているのも台湾セミコンダクターです。
新工場の建設も進み、半導体市場を牽引する存在へ
台湾セミコンダクターは、新工場の建設も進めています。
アメリカのアリゾナ州、台湾の新竹などに生産拠点を増やし、従業員の新規採用も積極的に増やしています。
積極的に事業を拡大するフェーズにあり、今後の決算ガイダンスも強気の姿勢です。
最早、台湾セミコンダクターは世界の半導体関連銘柄を代表する企業と言っても過言ではありません。
受託製造に振りきったことによる強み、半導体需要そのものの増加、大口顧客のAppleからの受注も拡大と追い風が吹いており、新規参入が難しいビジネスモデルであることからも、地位はなかなか揺らがないと考えられます。
対照的に半導体の設計から製造まで手がけるインテルは決算が不調。
半導体関連をテーマにしたETFを買うよりも、成長力と安定性のある個別株投資の方が妙味もありそうです。
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コロナ禍で消費者が一斉にレストランや航空機の利用を敬遠した一方、在宅需要という大きな恩恵を享受し、新産業として伸びた分野もあります。過去1年で既に株価は大幅に上昇してしまいましたが、在宅関連銘柄としても、長期的な成長株としても注目できる3銘柄を取り上げます。
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免責事項と開示事項 記事の作者、田守正彦は、記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。