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2021年はドルが20%下落する可能性がある?これまでのドル安を振り返る

出典:Getty Images

新型コロナウイルスのワクチンが広く配布され、世界的な貿易や経済成長を助ける場合、「ドルは2021年に最大20%下落する可能性がある」とシティグループが予想しています。

また、ブルームバーグによれば、「ワクチン開発の進展だけでなく、世界経済が正常化しても米金融当局がハト派の姿勢を維持することで、ドル相場は苦しい展開になる」とも続けています。

ワクチンの開発が進められることや、世界経済が回復に向かうと、なぜドルは下落するのでしょうか。

今回はアフターコロナのドル下落について考察していきます。

2000~2010年前半のようなドル安がやってくる可能性

11月16日に発表された同シティグループのストラテジストであるカルビン・シー氏によれば、「ワクチン配布はわれわれが設けた弱気相場のチェックポイント全てに該当し、ドルは2000~2010年の前半と似たような道筋を辿るとみている」と分析しています。

今年に入って、ドルの強弱を測る指数であるドルインデックス(DXY)では、3月の高値から執筆時に掛けて約13%下落しています。

それでは、2000~2010年前半ではどのようなドル相場であったか振り返ってみましょう。

ドルインデックス・チャート(1998~2008年)

出典:traidingview.com

  • 2000年…ITバブル
  • 2001年…エンロン事件、同時多発テロ、グリーンスパンFRB議長金利引き上げ、ITバブル崩壊
  • 2003年…住宅バブルの兆し
  • 2005年…原油価格の高騰
  • 2006年…住宅価格上昇停止
  • 2007年…住宅バブル崩壊
  • 2008年…リーマン・ブラザーズ破綻、リーマン・ショック、世界同時株安

2000年から始まるITバブルの下では、ITの発展で経済成長が永久に続く、全く新しい経済が生まれたとする「ニューエコノミー論」が囁かれました。

この景気の熱狂ぶりを見て、当時のFRBのグリーンスパン議長は「根拠なき熱狂」と呼び、バブルが起きている可能性を示唆していました。

その後、グリーンスパン議長は2001年に金利の引き上げを決定します。

その年のNASDAQにいたっては、3月ピークからの9月までに67%下落を見せており、指数で3分の1以下となっています。

また、この年のエンロン事件からの破綻は記憶に新しいかもしれません。

そして、9月には同時多発テロが世界を震撼させました。

ITバブルの崩壊後、米国が日本ほどの悲惨な経済状態にならなかったのは、対不況・対テロについてFRBが今度は低金利政策をとったことが主要な要因と見られています。

その結果、金融市場は資金がダブつき、今度は住宅バブルの模様を描くようになります。

2000年から2006年の間で米国住宅価格は高騰し、6年で2倍以上(住宅価格指数100から226)まで上り詰めました。

このITバブルが発生して落ち着くまでの間、米国経済は景気は回復しつつも、雇用が拡大しないという「ジョブレス・リカバリー」という現象が発生していました。

また、2004年から2006年の間は金利の引き上げが続き、その後2006年内で住宅価格は上昇を停止し、翌2007年には住宅バブルが崩壊します。

2008年には、リーマンブラザーズの破綻から始まったリーマンショックが発生し、世界同時株安から信用不安に発展し、世界不況へと波及していきました。

こうして、2000年代の金融史を簡単に振り返ってみると、いつでもきっかけは「金利」がキーとなっていることです。

そして、歴代のFRB議長たちはバブルの匂いを嗅ぎつけると、必ず示唆をしてきたことが分かるかのではないでしょうか。

では、新型コロナウイルス感染拡大にある現在の金融市場では、バブルが起こっているのでしょうか。

または、金利の上昇が見込まれているでしょうか。

今年8月にはパウエルFRB議長は「平均インフレターゲット」と呼ばれる、一定期間の平均インフレターゲット率が2.0%程度になることを目指す新政策を採用しました。

一定期間とはいつまでのことかは明確にされなかったものの、インフレ率が2%に達しない期間がしばらく続けば、一時的に2%を超えてもしばらくは金融引き締めをしないというものです。

しかし、日本での金融政策を手本にとってみれば、金融政策だけではインフレ率は押し上げることはできないと米国市場でも見られているような気配は、発表後のドル高がすぐに元の水準にまで戻ってしまった経緯を見ると伺えるかもしれません。

この平均インフレターゲットの政策の下では、今後2~5年以上インフレ率が2%以下の場合、しばらくの間は金融引き締めはされないこととなります。

つまり、近い将来において、市場では金融緩和策は恒久的に実施されるという意味合いの方が高いと考えられるのではないでしょうか。

米国インフレ率推移

出典:TRADING ECONOMICS

景気回復の兆しを嫌がる姿勢も

以上のような金融政策の背景の下では、景気が回復したり、GDPが上昇したりと、景気回復の兆しを嫌がる姿勢もウォール街では見られるようです。

不謹慎かもしれませんが、新型コロナが長引いて、景気低迷している方が金融緩和政策と財政出動が期待できるということでしょう。

金融緩和や財政出動を恒久的に行えば、必然的にドルは下落していく流れになります。

これをFRBがそっと眺めているというわけにはいかないのではないかと筆者は考えます。

FRBが平均インフレターゲットとは違う何かを近いうちに打ち出さない限り、ドルの下落は止まらない可能性があるのではないでしょうか。

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