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アメリカ司法省がマイクロソフトを提訴した結果と影響を解説

出典:Getty Images

2020年10月20日、アメリカ司法省は反トラスト法違反の疑いでグーグル(NASDAQ:GOOGL)(NASDAQ:GOOG)を連邦地裁に提訴しました。

ハイテク産業の反トラスト法違反の訴訟といえば、1998年のマイクロソフト訴訟が有名で、今回のグーグルとの類似点も指摘されています。

そこで今回は、1998年のマイクロソフト訴訟について解説します。

マイクロソフト訴訟の結果や被った影響、反トラスト法が政治とどのように関係しているのかなどを併せて解説します。

1998年のマイクロソフト訴訟

1998年5月にアメリカ司法省は、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)を反トラスト法違反で提訴しました。

マイクロソフトは1990年代後半よりパーソナルコンピューター市場における最大規模のシェアを獲得しておりましたが、その立場を利用して自社のインターネットブラウザ「Internet explorer」をパソコンの標準ブラウザとして搭載するなどの行為が、独占的地位を悪用し消費者の利益を侵害していると判断したのです。

この訴訟は2000年に連邦地裁でマイクロソフトが敗訴するも、2001年6月にアメリカ連邦高裁が判決を差し戻し、同年11月にマイクロソフトとアメリカ司法省の和解路線に切り替わりました。

その後、和解案の修正などを経て2002年に和解が成立した後も、和解案に盛り込まれていた条項に基づき、両者は連邦地裁へ共同報告書を定期的に提出していました。

それも2011年5月に終局判決が満了したことで、12年の月日を経てようやく決着が着きました。

マイクロソフト訴訟の結果と影響

アメリカ司法省は「マイクロソフトがアメリカの企業や消費者を害する行為を繰り返すことを阻止した」と成功をアピールしていますが、訴訟のきっかけとなった「OSとブラウザの抱き合わせ提供の禁止」は見送られているため、マイクロソフトの勝訴と分析することもできます。

一方でマイクロソフトが1998年~2002年の和解までに費やしたリソースは無視できず、結果としてGAFAが台頭するきっかけとなったともいわれています。

というのも、1998年~2002年までの株価とマイクロソフト訴訟の主な出来事を照らし合わせると、訴訟がマイクロソフトに与えた影響は少なくないのが分かります。

  • 1998年5月アメリカ司法省がマイクロソフトを提訴…株価は22ドル(約3,080円)
  • 2000年4月連邦地裁でマイクロソフトが敗訴…株価は38ドル(約3,990円)
  • 2000年6月連邦地裁よりOS部門とアプリケーション部門の分割命令…株価は34ドル(約3,604円)
  • 2001年11月連邦地裁で和解が成立…株価は32ドル(約3,904円)

1998年~2000年のマイクロソフトはWindows95、98が世界的に大ヒットしていたこともあり、株価は上昇傾向にありました。

2年間で最高値57ドルを更新しており、ほかのIT企業と比べても頭一つ抜けていました。

しかし、2000年4月に敗訴すると株価は急落。

折しも2000年上半期はITバブルの崩壊や、翌年は米国同時多発テロもありアメリカ経済全体が軟調となっていきます。

マイクロソフトもスマートフォンやタブレットが普及する2010年代になるまで株価に大きな変動は起きていません。

【米国株決算】マイクロソフト社の最新決算情報と今後の株価の推移

反トラスト法と政治

反トラスト法は日本における独占禁止法にあたり、シャーマン法・クレイトン法・連邦取引委員会法の3つから成り立っています。

この法律は司法長官が大統領に任命され、反トラスト局長までの主要なポストも上院での承認を受けた後に就任するため、執行に関するポストが政治・政権の影響を受けており、その時代の政権の意向が現れます。

事実、マイクロソフト訴訟時のクリントン政権は、急速に発展したハイテク産業は一部の企業が市場を独占する傾向が強く、消費者が不利益を被ると考えていました。

マイクロソフト訴訟ばかりが注目されていますが、インテルやVISA/Mastercardも反トラスト法違反で提訴しています。

その後、2000年の大統領選を経て誕生したブッシュ政権とハイテク産業は密接な関係を築いています。

というのも、ハイテク産業は当時の候補者たちにとって大きな財政減となっており、マイクロソフトは合計すると470万ドル以上の献金をしていました。

大統領選挙中の遊説の際もブッシュ氏は「マイクロソフト訴訟は和解により解決されることが望ましい」と発言をしており、慎重な構えを取っていました。

大統領選後のブッシュ政権は反トラスト法を運用する主要なポストを一新し、マイクロソフトに近しい立場の人物たちが就いております。

結果としてマイクロソフト訴訟は和解という消極的な結果に終わり、ブッシュ政権ではビジネスに対する規制を強化する動きはあまり見られません。

このように反トラスト法は政治的な影響に左右される部分があるのは否定できません。

グーグルを提訴するアメリカ司法省

今回の提訴において、アメリカ司法省は以下の根拠を上げてグーグルは反トラスト法に違反しているとしています。

  • 自社のサービス提供先に自社の検索アプリを初期搭載させる
  • 競合他社サービスの初期搭載を禁じる契約を結んでいる
  • デバイスメーカーに自社サービスを標準サービスとして搭載するように促している
  • 上記の行動・契約によってアメリカ国内のインターネット検索方法を独占している
  • 検索エンジンでのシェアを利用し、インターネット広告でも独占的な立場を築いている

グーグル側は公式ブログにおいて「他の検索エンジンと競争関係にあり、ユーザーはグーグルの検索エンジンを利用しないという選択肢がある」と反論しています。

一方でグーグルが広告収益を独占しているという指摘はあり、世界主要メディアの2019年度広告収益を比較すると、グーグルは1,133億ドルと圧倒的で、2位のFacebookに対して400億ドル以上も上回っています。

今回の提訴において主軸となっているのは「グーグルがAndroid端末に対して検索エンジンをバンドルしていること」と「独占している検索エンジンの広告収入」です。

連邦地裁の判断を1998年のマイクロソフト訴訟と照らし合わせると、OS部門とアプリケーション部門の分割命令か、あるいは検索エンジンと広告の分割が考えられます。

グーグル提訴と大統領選挙の関係

今回のグーグル提訴は、2020年大統領選挙の最中に起きました。

それも投票日まで2週間程度の10月20日というタイミングを考えると、トランプ政権が2期目当選後にハイテク産業の利益独占状態を崩すというアピールという見方ができます。

一方で対立候補のバイデン氏はかねてより富の集中と独占力の拡大はアメリカの国力を損ねると考えを示しており、大統領選挙後は大企業への法人税を引き上げることを検討しています。

そのような人物が大統領選挙後に司法長官や反トラスト法局長を一新し、提訴内容を変更してグーグル側に譲歩をすれば、国民からの信頼を損ねる可能性があります。

まとめ

以上が、1998年のマイクロソフト訴訟の結果と影響に関する解説です。

マイクロソフト訴訟が和解に至るまでに4年かかったことを考えると、アメリカ司法省のグーグル提訴も長期化すると予想されます。

市場はこの展開を織り込み済みなのか、あるいは様子見の段階なのか株価に大きな変動はありません。

しかし、訴訟の展開次第では株価が大きく下落する可能性はあるため、訴訟の動向から目が離せません。

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