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中国IT企業が米国から香港上場にシフト。注目のアントグループとは?

出典:Getty Images

中国のIT企業は検索エンジンの百度をはじめ、多くの企業が米国にADRとして上場されてきました。

中国のIT企業が米国に上場するメリットは、世界中から資金調達ができることです。

そして米国市場に上場すること自体が、中国や香港に上場するよりも一般的にハードルが高いため、ブランドでもありました。

しかし、米中の関係悪化で、中国IT企業の米国上場が香港・中国上場にシフトする流れが注目されています。

2020年の夏には香港ではハンセンテック指数も生まれ、香港がオールドエコノミー企業からIT企業の集まる市場に変わりつつあります。

中国IT企業の中国上場シフトの象徴として、中国アリババグループのアントグループが香港・上海に上場する計画が注目されています。

世界の金融市場の勢力図が少しずつ変わろうとしているので、投資家として中国の動向は確認しておきたいところです。

米中関係悪化で中国テック企業が香港上場にシフト

中国テック企業の香港上場シフトの背景には、アメリカの中国系企業の上場廃止リスクがあります。

トランプ政権がアメリカに上場しようとしている中国企業を締め出そうとする動きがあるため、中国企業が米国市場上場をためらうのも無理はありません。

米中の国際関係悪化もありますが、米国側の主張としては中国企業の経営の透明性を疑問視しているふしがあります。

例えば、中国の新興カフェチェーンのラッキン・コーヒーの深刻な不正会計が挙げられます。

深刻な粉飾会計は中国企業全体の信用問題になりました。

市場は基本的に会計の透明性が担保されて安心して投資できるものです。

しかし、中国企業の会計が信用できなければ、米国側としても上場に対して厳しい措置をとらざるをえません。

まして外交的に関係が悪化しているのであれば、歩みよりも難しいでしょう。

世界最大の資金調達の可能性。アントグループの中国上場

アントグループの香港市場、上海市場への上場が注目されています。

IPOでアントの調達額は最大350億ドルになるという観測があり、実現すれば2019年のサウジアラムコを超える世界最大の資金調達になります。

アントグループは中国最大のモバイル決済のアリペイの運営母体です。

中国のIT業界を代表するEコマース企業アリババグループの傘下で、アントは金融サービスに特化しています。

アリペイは今や日本でも至るところで見かける決済手段のひとつですから、使ったことがない方でも見たことがある方は多いのではないでしょうか。

世界中でキャッシュレス決済が普及しており、特に中国はキャッシュレス決済が日本よりも進んでいます。

アリペイは中国にとどまらずアジアを中心に世界中で普及しており、既に生活必需サービスの一部となっていると言っても過言ではありません。

意外に香港市場自体は活況?

香港の政情不安だけに注目すると、香港市場は衰退しているのではと考えるかもしれませんが、実は逆に活況の状況になっています。

米国での中国企業の制裁によって、中国の有力企業の香港回帰が進んでいるからです。

投資家の立場から考えると、中国の成長企業に投資をする場合、今までは米国上場のADRに投資をすれば良かったのですが、香港に上場シフトすることにより、香港市場にアクセスしなければ中国の成長企業への投資ができなくなってしまうのです。

投資家が中国のIT企業に投資をするには、香港は避けては通れないという状況になるため、投資資金自体を集める力を香港は持ち続けそうです。

オールドエコノミー銘柄を中心に構成されていたハンセン指数以外に、2020年の夏にはハンセンテック指数も登場し、香港はむしろ注目を集めている状況です。

香港は幸い日本市場からアクセスしやすい市場の一つ

日本人投資家の立場では、香港に中国IT企業が集まったとしても特に問題はありません。

日本の大手ネット証券は、香港株の取引サービスを提供しているからです。

むしろ香港株の取り扱いの方が古く、米国株の方が後からサービスとして普及しはじめた位です。

SBI、楽天、マネックスのようなネット証券だけでなく、内藤証券や東洋証券のように中国株に昔から強い証券会社もあり、日本人が香港市場にアクセスすることは容易です。

ただADRならば米国株投資と同様に米ドル建てで取引できたのが、香港ドル建てで取引しなければならなくなるため不便に感じることはあるかもしれません。

それでも、アントグループが米国ではなく香港で上場されても投資自体は可能です。

香港は国際金融センターではなく、中国の金融センターとして成長する

香港市場が活況なら、香港の国際金融センターとしての地位は盤石なのかといえば、そうでもありません。

香港の政情不安を不安視し、香港脱出する人も増えており、外資系企業の撤退も加速するでしょう。

香港国家安全法が今後、どのように外国企業に適用されるかも不透明です。

むしろ国際金融センターではなく香港は中国の金融センターとして成長するのではないでしょうか。

香港は現在、交通の面でも中国の一部になりつつあります。

香港の九龍半島に西九龍駅という巨大な駅ができました。

西九龍駅には、広州と香港を結ぶ高速鉄道が通っています。

香港と広州は最速で約47分でアクセスできるように既になっているのです。

そして高速鉄道は上海や北京とも繋がっており、香港は中国の地方都市の一部のような感覚で本土から行き来できるようになりました。

さらに香港・マカオ・広州エリアを繋ぐ巨大な橋も繋がりました。

香港とマカオは既にフェリーではなく、高速バスで行き来できてしまいます。

中国共産党は香港・マカオ・広州を一体化させ世界有数のメガロポリスにする計画があり、マカオにもポルトガル語圏の資金を集める人民元建ての証券市場をつくる観測があります。

香港は中国に金融だけでなく、地政学的にも取りこまれていきそうです。

国際金融センターというよりも、香港は中国の有力な金融センター、地方都市として成長していくことになるのではないでしょうか。

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