The Motley Fool

韓国・芸能事務所上場、一時時価総額1兆円超えの現状

出典:Getty Images

韓国でアイドルグループが所属する事務所が上場し、一時時価総額が1兆円を超え、同国内の電力会社やハイテク企業に匹敵する企業価値になったというニュースをご存知でしょうか。

上場から数日を経て、早くも芳しくない値動きを見せています。

なぜ、これほどまでに企業価値が高騰しているのでしょうか。

韓国を代表するKポップグループ「BTS(防弾少年団)」の人気とはいかなるものか

上場した芸能事務所はKポップを代表する人気グループ「BTS(防弾少年団)」が所属する「ビッグヒットエンターテイメント(以下:ビッグヒット)」です。

BTS(防弾少年団)は2017年以降では世界的に売上を伸ばしており、2017年の米国ビルボード・ミュージック・アワードの「トップソーシャルアーティスト賞」において同国ミュージシャンであるジャスティン・ビーバーを抑えて受賞、日本では初のドーム公演を行い、2019年では米国グラミー賞のプレゼンターとして出席するなど、日本以外にも世界的に活躍しているグループになります。

また、2018年ワールド・ツアーの中、北米公演では全15会場すべてがチケット完売。

ロサンゼルスではステイプルズ・センターを4日間連続使用して8万4,000人を動員し、ニューヨークではシティ・フィールドで4万人動員するという快挙も達成しています。

アジア人アーティストが北米で大反響しているという事実に懐疑的な方もいるかもしれません。

BTSは現地のアジア人に支持されているというわけでもなく、人種や宗教など関係なしに支持されているようです。

アジア人の他にも白人、黒人、ヒスパニック系、ユダヤ系などにルーツを持つ子どもたち、特に女子に人気があるとされています。

これらのファン層は別段、アジアのポップカルチャーや日本のアニメに興味があるわけではないようで、BTSが女子の間で好まれているようです。

また、歌詞が韓国語であるにも関わらず人気であることに対しては、言葉は単なる音のひとつに過ぎず、曲と合っていればそれが「かっこいい」や「かわいい」に繋がるのだそうです。

北米で非英語の歌がヒットしたことはほとんどなく、ビルボード・トップ100において1位を獲得した非英語の歌はこれまでにたった7曲しか存在しません。

かつての北米での英語の歌しか聴かれないという慣習は、昨今の動画配信での視聴という世界的慣習を受けて若い世代では変遷してきているようです。

所属事務所「ビッグヒットエンターテイメント」は時価総額4,000億円で上場

BTS(防弾少年団)が所属する事務所がビッグヒットは、10月15日に時価総額約4000億円で上場しました。

上場前の時点では韓国アナリストの間で「BTSは特に北米市場に強く、安定的な成長を遂げてきた。PER(株価収益率)で30倍~40倍の評価は妥当」と見られていました。

これは時価総額では3,500億~4,600億円に試算される額となります。

今回の上場規模では3年ぶりの大型案件となり、海外投資家の注目も高いものとされてきました。

今年に入ってからは米欧日の17ヶ所で行われる予定だったワールド・ツアーが新型コロナウイルスの影響で延期になり、6月に自社の専用サイトでBTSのライブがスマホやパソコンで視聴できる有料オンライブを開催し、新たな形で成功を果たしました。

このような環境下において、所属するビッグヒットの2020年1-6月期の売上高は、前年同期比47%増の260億円、営業利益は27%増の44億円(円換算)となっています。

新型コロナウイルスの感染拡大の最中でも、アルバム販売やオンライン公演、グッズ販売などの様々分野が収益に寄与しました。

このような華々しいBTSの活躍の中の一方で、ビッグヒットでは課題も残るようです。

ビッグヒットの主な収益はBTSによる依存が大きいというのが特徴であり、ネックともいえそうです。

BTSが同社に貢献する売上高はおよそ9割に相当し、BTSによる依存が非常に高くなっています。

BTSのメンバーは今後、兵役による欠員、またはスキャンダルのリスクなども懸念されており、創業者の房時赫(バン・シヒョク)はIPOで得た資金をBTSの弟分の育成など、事業の多様化に投じる考えのようです。

上場後、時価総額1兆円超えから1,800億円の下落

10月15日上場、取引開始直後のビッグヒットの株価は公募価格13万5千ウォン(約1万2千円)が2.6倍の35万1千ウォン(約3万2千円)の初値を付け、時価総額は一時11兆8,800億ウォン(約1兆900億円)となりました。

時価総額で見た場合、日本の芸能事務所であるエイベックスやアミューズの20倍規模に及ぶことになります。

では、日本のこれらの同業種の企業と比べた場合はどうでしょうか。

今回は時価総額に着目して、株価売上高倍率(PSR)と株価収益率(PER)で比べたいと思います。

ちなみに株価売上高倍率(PSR)、株価収益率(PER)は以下の数式で求めることができます。

  • 株価売上高倍率(PSR) = 時価総額 ÷ 売上高
  • 株価収益率(PER) = 時価総額 ÷ 純利益
企業名 株価売上高倍率(PSR) 株価収益率(PER)
ビッグヒット(韓国) 8.05倍 64.04倍
エイベックス(日本) 0.36倍
アミューズ(日本) 0.86倍 15.68倍

※2020年10月19日時点

上表のようにまとめたところ、ビッグヒットは日本の同業企業と比べて割高であることが分かります。

また、株価売上高倍率(PSR)の観点からすれば、日本企業であるアミューズの年間売上高とほぼ同等であることから、ビッグヒットは時価総額1兆円という点でも割高であると判断できるでしょう。(アミューズ2019年通期売上高552億円、ビッグヒット同540億円)

さて、ビッグヒットのその後の株価は、15日上場後の翌日である16日終値は22.29%安で取引を終えています。

その額は日本円で約1,800億円に及びます。

今回、ここまで高値を付けた要因として、公募時に取得できなかった個人投資家の買いが殺到したためとされています。

個人投資家の応募数は募集枠の1117倍に達しており、上場前から早くも過熱感が漂っていました。

さらに個人投資家を悩ませるのは、今後1ヶ月以内に株式の追加分が市場にあふれることです。

今後1ヶ月以内に市場に保有義務期間を終えて市場に放出される同社株式は約153万株に及び、機関投資家に割り当てられた全公募株式の35.7%、上場後流通可能になった15%に相当する数量となっています。

さらに今後は、株式の希薄化が浸透し、時価総額1兆円を超えた芸能事務所の企業価値は下り坂に位置しているように思われます。

フリーレポート配信

コロナ禍で消費者が一斉にレストランや航空機の利用を敬遠した一方、在宅需要という大きな恩恵を享受し、新産業として伸びた分野もあります。過去1年で既に株価は大幅に上昇してしまいましたが、在宅関連銘柄としても、長期的な成長株としても注目できる3銘柄を取り上げます。

在宅需要で新たな産業が勃興する中、注目のコンスーマー関連3銘柄」はこちらからご覧ください。(メールアドレスの登録が必要です)

また、ツイッターやフェイスブックで最新情報を配信しております。

公式ツイッターアカウント公式フェイスブックアカウントをフォローする。

また、公式LINEアカウントの方では、投資初心者向けの情報を発信しています。
友だち追加

免責事項と開示事項 記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

最新記事